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第1話 1人の冒険者

【ガギンッッ!!】


 鉄と鉄がぶつかり合う。ギギギッと鉄が擦れる音と共に、ミシッと私の剣が根元から悲鳴を上げる。


「グギェァァ! ゴガァッ!」 


 目の前の相手。


 緑色の肌皮に、山羊のような黄色い目、絵本に出てくる悪い魔女のような、尖った高い鼻。


 冒険者界隈でもメジャーな魔物、そう、ゴブリンであった。



「ギェァァ! ガアッァァ!」

 

 そして、眼前のこのゴブリンは、怒鳴るように唾を撒き散らしながら、錆びついたロングソードを私に押し付けてくる。


 私も負けじと、剣を目一杯握りしめる。

 


 この2、3秒ほどの僅かな鍔迫り合いが、そして、相手のこれでもかという程の殺気が、ゴリゴリと私の精神と体力を削る。

 

 「ゼァッ、、、ハァ」


 それは相手も同じだったようだ、目の前のゴブリンもまた、疲労から吐息をこぼす。


 だんだんと、押し込む力も弱くなってきた。


 (このまま、押し切ろう。)


私がそう思って一歩、踏み込もうとした。そのとき、、、


 「ニタッァ」


 眼前の敵が、急に、厭らしく口角を上げた。

 まるで、策がはまったことを喜ぶような、そんな表情。



(嫌な予感がする。)



 咄嗟に、先ほど踏み込もうとして上げた片足を、後ろに下ろし体を離す。


【スピッ ジッ】


 すると、先ほどのまで、私の頭があったであろう所を、風切り音をたてて、一本の矢が横切る。

 鏃が、私の被った兜の、面当てを掠めていった。


 驚きと共に、さらに私は4、5歩ほど後ずさった。


 心臓が、一際大きく脈打ち、冷や汗が背中を濡らす。

 もし、そのまま踏み込んでいれば、どうなったのだろうか?


「はぁ──っ」


 避けられた、安堵でため息がこぼれる。


 貫通、とまでは行かなくとも、あの矢が当たって、姿勢を崩したら目の前のゴブリンに斬りかかられるであろうし、そうでなくとも頭に当たれば後遺症もあり得る。



 「ガァァ? グギェアッ!!」



 すると、目の前のゴブリンが、苛立ち気に地団駄を踏み、茂みの方へ何やら叱りつける。


 (元々、この作戦で私を倒そうとしていたのかも、、、。)


 なにやら喋って、ゴブリンが私から目を背けた。


 その瞬間に、一気に駆ける。


 そのまま、上段に剣を振り上げて、叩き下ろした。


「ゲベァッ」


 肉を潰し、骨を砕いた感触が、剣越しに腕に伝わる。


 断末魔のような悲鳴を上げると、胸から腰まで引き裂かれたゴブリンが、血を吹き出させながら地面に倒れ伏した。



 まだ終わりじゃない。今度は、先程矢が飛んできた方の茂みに目を向ける。


 すると、背の高い草むらの奥で、緑色の何かが、怯えたように黄色い目を丸くした。


 (矢が飛んでくるとまずい。)


 私は、相手の視線を遮るように、大きめの木を背にしゃがみこみ、矢の射線から外れる。


 相手は弓を持っている。それに先ほどの攻撃からも、精度は、低くは無い。


 だが、私に遠距離武器は無い、よって近ずかないと倒せない。


しばし、思案すると、身をかがめ数歩ほど歩く。


 (さすがに死体を弄るのに抵抗はあるが、、、やむを得ない。)


 そして、斬り倒した死体に目を向けると、少し躊躇ってから、腰蓑を掴み、持ち上げる。


 「すまんが、盾になってくれ。」


 心の中で軽く拝みつつ、自分の体の前に掲げる。


 (これを盾に矢を防ぎつつ、突撃する。という、ゲスいが、我ながら冴えた?戦法だと思う。)


 と、突撃しようとしたところでドスッとゴブリンの死体に矢が生えた。


 (どうやら相手は、仲間の死体にもかかわらず、躊躇いなく矢を撃ち込める奴のようだ。)


 だが、この通り、矢は貫通せず私の体までは届かないようだ。


 (なら、このまま突っ切る!)


 「らぁぁぁっっ!!」


 大声を出しながら、剣をかまえ走り込む。



「ゴヒャァッ!? グッヌガァ!」


 相手のゴブリンは近ずいてきた私に、ビビりながらも、弓を引き絞ると、私の頭を狙って矢を放った。


 【ドスッ】


 しかし、矢は私に当たらず、ゴブリンシールドの頭部に刺さるのみ。



 そして、私は剣を振りかぶると、頭目掛けて斜めに振り下ろした。


 【ミ"シャッ!】


 周りの草と共に、パッカリ割れた、頭を揺らす。


 そして急に、まるで、糸の切れた人形のようにパタリと倒れた。


 「はぁっ、疲れたっっ。」


 今度は疲労で、つい声が出る。


 周囲を慎重に見回すが、特に怪しい影は無い。恐らくこれで依頼完了だろう。



 ちなみに、私の受けた依頼は、



[最近2体ほどの、ゴブリンらしき足跡を見かけた。畑の作物が荒らした後に森に帰って行くので、見つけて討伐して欲しい。]




 という農家からの依頼で、ゴブリン2体という簡単なものである。

 まさに、初心者向けの依頼であった。



 そして、ぴしゅっと、2回ほど剣に着いた血液を払うと、ギクシャクしながら鞘に入れる。



(やはり、抜剣は出来ても納剣には手こずるなぁ、二、三回ぐらいこれで手を切ったことがある、、、)

 

 あぁ、この仕事、辛い。返り血で服も鎧も真っ赤だし、スプラッタは何回目かなのに、やっぱり滅入るし、死の危険と隣り合わせだし、、、。


 未だに慣れない自分に、また、重めのため息を着いた。



 「はぁ〜、にしても私は、何故こんな事をやっているのだろうか、、、?」




───────────────────


何故、こんな事になったのか、順を追って考える。


 元々私は、23歳サラリーマン。男。

広告会社で働いていた。


 営業だったが、私の社内成績は意外と良く、上司も真面目で優しい人で社内の雰囲気も、まぁ、普通に良かった。

 

 もっとも、私の担当の後輩が「タメ口、舐めプ、何かあったら、すぐハラスメント連呼」の面白い人であったことは、頭痛の種ではあったけれども。

 

 まあ、ここまで言ってなんだが、結局、私の今までの人生など、この現象には何の意味ないだろう。



 原因はきっと、この日、



  《私が"死んだ"》からだろう。


………………

………


これは、私がまだここに来る前の話しだ。




 ある日、私が通勤するために、歩道を歩いていた時。

 私の10メートルほど前にいた、小学生低学年くらいの子供が、横断歩道の上で転けた。


 かわいそうなことに、膝を擦りむいたのだろう、少年はその場に座って、泣き出した。


 (道路でうずくまるのは危ないな、声くらいはかけるか?)


 そう、私が思案した時。




【ギッ イイィィッッ!!】



 ブレーキ音が響き、荷台を詰んだトラックが、グラグラとバランスを崩しながら、走り込んで来た。


 唐突のことで、周りの人は、みな呆然としている。


 しかし、先程から、トラックは一切止まる気配がなく、もはやスピードを上げているようにも思えた。


すると、


「えっ 暴走トラックっ? あれ 

これって子供にぶつかる、、、!?」


 

 隣の通行人、高校生の男子から、不意に声が漏れた。


 その通りであった。


そう、トラックの進行方向には、その少年の姿があったのだから。


 それに気がついた通行人たちが、我に返えると、必死で少年に声をかけ出す、が泣き叫ぶ彼の耳には入らない。


 そうしている間も、トラックはぐんぐんと近ずき、もう避けられない。


 

 それを見て私は、


「あの子が死んでしまう!例え死んでも、俺が突き飛ばして助けるっ!」







 、、、そんな、異世界アニメの転生者のようなことは到底考えなかった。


 そもそもだ、私は、人のために命をかけられるような、そんな善人ではなかった。

 それに、人助けのために、危険へ飛び込む度胸も、なかった。



、、、あと、こんなでは、幻滅されるかもしれないが、


その時の私に、頭に浮かんだのは、


(あのトラックが、滑ってでもして、こっちに来たらやばい、早く逃げよう!)



 など、その少年の事など微塵も考えていない醜いものだった。



 私が踵を返そうとした、その時、隣にいた高校生が飛びたしたのだ。


 そのまま、道路におどり出ると、

少年を突き飛ばしたではないか。まるで、アニメの主人公のように、颯爽と。



 そしてやはり、このすぐに


青年の体が、血を吹いて、宙を舞った。










   、、、《私の首と一緒に。》




 

 、、、不思議に思った人もいるだろう、なぜ2人とも轢かれているのか?と。



 説明しよう。

青年とぶつかる寸前で大型トラックは横転、勢いに乗って荷台のコンテナも弾け飛んだ。


 その結果、青年は、減速しきれなかった、トラック本体に普通に轢かれた。


 そして私は、勢いをつけて飛んできた、トラックのコンテナが、頭にあたり、首を翔ばされたのだ。

 


 その結果。私の最後の景色は、随分と高いところから見た自分の胴体だった。


 もっとも、幽霊としてではなく、

"生首"として、だったが、、、。

────────────────────────

ブックマーク、評価、コメントよろしくお願いします。嬉しくて、作者の投稿頻度が上がります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 息遣いや重厚感が伝わってくる様なバトル描写、 さっぱりとした文面なのに鮮明にイメージできる状況描写と、気づけば作品内の世界に引き込まれてしまっていました。 [気になる点] 続きがとっても気…
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