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The World of Frontline ~ある人たらし転移者の受難と因果~  作者: takoyaki
第一章:転移・旅立ち編
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プロローグ:ある何でもない冬の日に

「…暇だぁ」



 思わずといった風に三上式隆(しきたか)はつぶやいた。



「…もう掃除も3回やりましたね」



 カウンターに頬杖を突きながら、後輩の桐井英也(ひでや)が投げやりに返す。


 喫茶『探し人』。駅から少し歩いた路地にひっそりと居を構える店だ。

 カウンター席が7つに4人掛けのテーブル席が2つある、いわゆる【知る人ぞ知る店】というヤツで、訪れる人々はほとんどが常連客である。

 その常連客もほとんどがいい年した社会人で、平日の日中はあまり混むことはない。現在時刻は18時過ぎで、本来なら客足も増えるはずなのだが…



「やっぱ年末近いと繁忙期で忙しいんかなぁ」


「他の飲食店って年末年始は自給上がるみたいっすよ」


「混んで忙しくなるのもなんかなぁって思ってあんま周りに言ってないけど、そろそろ仲いいやつくらいにはこの店の存在を開示しても良いかもしれんのぅヒデヤくん?」


「どういうキャラ付けの話し方なんすか」


「こんな時は下世話な話でもしようや」


「…誰のです?」


「言わんでもわかるだろ?」


「だぁからアイツとはなんもないって言ってるじゃないすかぁ!」


「えー?しょっちゅう迎えに来てくれてるあの可愛い子がぁ?」


「そーゆーのじゃないんすよマジで!なんつーか、言葉にしづらいんすけど…ともかく恋仲とかじゃあないっす!」


「けどお前のためにわざわざ車の免許取ったって言ってたし」



 無くても困らんこのご時世にだぜ、と式隆は付け加える。



「ええ子やでホンマ。俺にもあんな子……いねぇわ。つらいよ慰めて」


「自分で話し始めといてダメージ受けないでもらえます!?」


「良い子だよね彼女。確かにあんまり付き合ってるって雰囲気じゃなかったけど」



 やいのやいのとどうでもいい会話を繰り広げていると、カウンターの奥から店長が出てきて口をはさむ。

 白髪が似合う、どう頑張っても壮年にしか見えないダンディである。定年間近と聞いたときには式隆は思わずひっくり返った。



「ぐぬぅ店長まで…」


「式隆くん、明日実家に帰るんだよね?今日は店こんなだし上がっちゃっていいよ。私と英也くんで手は足りるからね」


「マジすか?正直助かります」



 式隆は控室に引っ込み、手早く着替えて店を出る準備を整えた。



「じゃあヒデヤ、また年明けに。良い年末を!」


「うっす、お疲れ様です。先輩も良い年末を」


「店長も!」


「うん」



 そうして店を出ようとすると、「式隆くん」と店長に声をかけられた。



「なんですか?」


「気を付けてね。頑張って」


「? はい」



 何に対する言葉だろう。年明け少ししたらある内定者懇親会かな?でも店長に話したっけ?いやそもそもそれはこっちに戻ってからの話だしわざわざ今言う必要は……などと考えつつ、駅までの道を歩いていると、何かが頬に当たる。



「おっ? 雪だ」



 周りでも「雪だ」「積もるかね」と人々が声を上げる。式隆は空を見上げ、雪が舞う中で光る満月一歩手前みたいな形をした月を見やり、つぶやく。



「なかなか風流じゃないの」



 速度を落とし、その様子を撮ろうとスマホを掲げた。



 その時だった。



 踏み出した足が、空を切る。

 落ちる、と認識した瞬間に周囲が暗闇に包まれた。


 なにがどうなっているのかがまるで分からない。

 落ちているのか、浮いているのか、はたまた動いていないのか。


 そこに追い打ちをかけるように、突如として全身を信じられないほどの激痛が襲った。まるで身体を引き裂かれるような痛みだ。叫んでいるような気がするが、実際はどうなのだろう。

 ただでさえ曖昧だった意識が、さらにぐちゃぐちゃに攪拌されていく。


 そうして、激痛に耐えかねて、意識を落とす直前に。



 ごめんなさい、と。



 誰かの声を聴いた気がした。










こんにちは。初投稿です。

気ままに続けます。完結までは書きますよ。


なんとか(面白く)なれーッ!!

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