コント【先輩後輩】
タカシ先輩→先
後輩の田中①→後①
後輩の山本②→後②
舞台は居酒屋、会社の先輩と後輩が飲みにきている。
先&後①&後②「「お疲れ様でーす」」
三人がビールの入ったジョッキで乾杯する。
先「2人が入社してきて1カ月だけど、会社には慣れた?」
後①「はい、皆さん優しい人ばっかりですし、特にタカシ先輩が困った時に助けてくれるので。な」
後②「そうです。助かっています。こうやってタカシ先輩は、飲み会にも誘ってくださいますし」
先「おいおい、本人を目の前にしてやめてくれよ。それに飲み会の場で敬語はやめろっていつも言ってるだろ」
後①「でも、お世話になっている先輩ですし」
先「いいのいいの。俺ってあんまり上下関係が厳しいの苦手だし。先輩っていっても歳は1つしか変わらないだろ。飲み会の場では無礼講でいいよ」
後②「そうですか……じゃあお言葉に甘えるか?」
後①「そうだな」
頼んでいた卵焼きが運ばれてくる。
後①「お、上手そうな卵焼き」
後②「田中は卵料理好きだもんな」
先「へーそうなんだ」
後①「あ、タカシ。醤油取ってよ」
先「え?」
後①「え?じゃなくて、タカシの目の前に醤油のボトルがあるだろ」
先「あ……いや、醤油?」
後①「そうだよ。卵焼きには醤油だろ」
先「あー……醤油を卵焼きにかけたいから……それは分かるよ。でも、引っかかっているのは醤油の使い道じゃなくて……」
後②「そうだぞ田中。そっちじゃないだろ」
先「おぉさすが山本。分かってくれるか」
後②「もちろんですよ。タカシは卵焼きにはソース派ですよね」
先「そっちでもねーよ」
後②「え? じゃあタカシはマヨネーズ派?」
先「違うから。一旦卵焼きは置いて。置いてからよーく考えてみて、おかしなところがあるから」
後①「あーそっか。すいません気づかずに」
先「ほ、やっと気づいてくれたか」
後①「さっきからタカシのジョッキ空だったな。おかわりで?」
先「おぉ気が利くな、じゃあ同じので。じゃねーよ。同じのじゃねーよ。ジョッキでもねーよ。そういうとこだけ気をつかうな。別のところだから」
後②「どうしたんですか? ちょっと今日おかしいですよ。タカシ」
先「お前もな。1回休憩しよう。無礼講休憩、もうお腹いっぱいだわ」
後①「大丈夫ですか? タカシ先輩、お冷もらいましょうか?」
先「切り替え凄いな。いつもこんな? 怖くなってきた」
後②「先輩が無礼講って言ったから少しふざけただけですよ」
先「おぉそうだよな。よかったよかった。冗談だよな。じゃあまた無礼講でいいかな?」
後①&②「いいともー」
先「そういえば2人って彼女とかいるの?」
後①「いますよ。確か山本もいるよな、学生時代からの彼女が」
後②「はい。今同棲中です」
先「マジか、羨ましいな」
後①「え? タカシは寂しく1人なの?」
後②「バカ、寂しくは可哀そうだろ。絶対タカシはモテないんだから、寂しいのは当たり前」
後①「それもそうだな。すいませんタカシ。失礼なこと言って」
先「あーうん……いいんだけど……いいんだけどさ、2人ともちょっといいかな?」
後②「はい、どうしました?」
先「さっきからさ……タカシって変じゃない?」
後①「あ、やっぱりそうですか……すいません、僕もずっと思っていました。でも、無礼講だとしても言っていいのか迷って」
先「いいよいいよ。言ってよかったのに」
後②「じゃあ遠慮なく。タカシってクソみたいで変な名前だなって思ってた。つけた奴の顔が見てみたいなって僕達」
後①「そうそう。俺が親だったら絶対にタカシなんて名前にしないのにって……あれ? どうしたタカシ?」
先「ふざけるな。変ってそっちかい。それに急に口悪、強引な角度で口悪いな。そして謝れ、俺の親父とお袋に。よく知らんけど、きっと画数とか文字の並びとか調べて一生懸命考えてくれたわ」
後②「そんな急に怒らないで下さいよ。タカシが無礼講って言ったじゃないですか?」
先「無礼講にも限界があるわ。もういい帰る」
怒ったタカシは席から立ち上がる。
後①「先輩……ちょっと待ってください」
先「今さら先輩って呼んでも遅いわ」
後②「僕達楽しみにしていたんです。先輩と楽しく飲めるのを。だから……無礼講って言われて、つい調子にのって」
後①「純粋に楽しかったんです」
先「お前達……そんなに思ってくれてたのか。俺も悪かったな。気分直しに次の店行くか?」
後②「はい。どこまでも付いて行きます」
後①「あ、店員さーん。おあいそで。お会計はタカシが払うんで。え? 領収書の宛名? あーじゃあタカシでお願いします」
先「いや、ただの金づる? そのための先輩扱い?」
後②「タカシ、早く払ってよ。外でタクシー待ってるから」
後①「タカシが来ないと、誰がタクシー代を払うんだよ」
先「もう知らん」
怒ったタカシは帰っていく。
後①「どうする? タカシ帰ったけど」
後②「しょうがない。次はヒロシ先輩でいいか」
そう言ってスマホを取り出して電話をかけ始める。