加護と書いてクラスと読む
現在、13時52分。
……うん、1時間近く名前を何にするか悩んでいたようだ。
早めにインしようとしててよかった。これ、ぎりぎりにインしようとしてたら絶対遅刻してた。
《リップ…よい名前ですね》
散々悩んでつけた名前は「リップ」。
キャラクター名はIDと紐づけて管理するので他人とかぶると使用できない、ということはないようだ。
ちなみに名前の由来は本名の颯真の「颯」から「立」+「風」=「りっぷう」=リップ、というわけだ。
うん、安直で悪かったね。
最初は「リフ」にしようかと思ったけど、どうもハゲたおっさんな感じがするのでやめました。
《では、次に貴方に与えるべき神々の加護を決めましょう》
白いドレスの女性は、テーブルにカードを1枚ずつ並べて行く。
横4列、縦3列で全部で12枚。
《加護は全部で12種。しかし全ての事象に表と裏があるように加護にもまた表の力と裏の力があります。この中より2つを選び、貴方自身の加護としてください》
……雰囲気はいいんだけど、説明としてはわかりづらい。
目の前の女性には失礼かな、と思いつつ、右手にあるウィンドウの説明の方を見てしまう。
〈キャラクター作成(2-1) あなたの持つ加護を決定します。加護によって能力値及び取得できる祝福が決定されます〉
なるほど。加護と書いてクラスと読む。
いわゆる普通のRPGで言う所の職業のことらしい。
祝福、というのがアビリティ、となっているからクラスごとの特殊能力のことなのだろう。
〈加護は表と裏で能力が変わります。加護の内容はカードを手にすることで確認することができます〉
なるほど。
表と裏で能力が変わるということは12×2=24種類ある、ということかな?
ちょっと1枚ずつじっくり見て行くことにしようか。
◇◆◇◆◇◆
【マスターアームズ】
武器を扱う能力に長けた加護。
あらゆる武器をまるで自分の腕のように扱い戦うことができる。
表:剣、槍、斧と言った近接用の武器を扱う能力を得る。
裏:弓、投擲武器、銃と言った遠距離用の武器を扱う能力を得る。
これはいわゆる「戦士」枠だね。オーソドックスで分かりやすい感じか。
【キリングハンズ】
己の肉体を武器として戦うための加護。
鍛え上げられた拳と脚は生半可な武器を超える威力となり、その技は敵を打ち砕く。
表:パンチ、キックと言った打撃攻撃を得意とする。
裏:投げ技や関節技、「気」を使った特殊な技を得意とする。
これは「格闘家」かな。「気」はちょっと興味があるけれど、どんなだろう?
【グレートウォール】
盾の扱いと防御力に長けた加護。
戦い最前線に立ち、盾を掲げて決して倒れぬ姿はとても頼もしいだろう。
表:敵の攻撃を引き付け、味方を護る技を使う。
裏:己自身の防御力と耐久力を高める技を使う。
これはいわゆる「タンク」という奴だね。
旧世代ゲームだとタンクは重要だったけど、VRゲームってあんまりタンクという役割は重視されないらしいと聞いたんだけどな。
【ナイトステップ】
気配探知や探索、隠密に長けた加護。
いち早く危険を察知し味方を目となり耳となる。一方で己の気配を消し、不意を打つ独特の戦闘法も身に着けることができる。
表:危険感知と探索力に優れ、閉ざされた鍵を開けたり罠を解除したりもできる。
裏:隠密能力に優れ、気配を消して敵に近づき不意を打つような戦闘法を習得できる。
これは「シーフ」だね。ゲーム内容がどんな感じかわからないけど、ダンジョン探索とかもあるなら割と重要なクラスじゃないだろうか。
【スペルキャスター】
叡知と魔力を持って魔術と魔法を扱う加護。
効果を自由に操り汎用性に富む「魔術」と爆発的な威力を発揮する「魔法」を使うことができる。
表:知識に基づく魔術を使用することができるようになる。
裏:己の中の魔力を解放する魔法を使用することができるようになる。
これはいわゆる「魔法使い」なんだけど、表と裏の違いがいまいちわかりづらい。
表は色々なことができる、裏は攻撃力が高い……という感じかな?
【ホーリーオーダー】
祈りの力で癒しと強化をもたらす加護。
神々に祈りを捧げその力を借りることで傷を癒し、加護と祝福を強化することができる。
時には神の力を顕現させ、敵を攻撃することも可能。
表:癒しの力に特化した能力を持つ。
裏:味方の強化や聖なる力での攻撃を得意とする能力を持つ。
これは「神官」……いわゆる「ヒーラー」だね。
回復と支援職は僕も好きなので、これはちょっと興味があるところ。
【ソウルシェアー】
魂を分かち合う自らの友と一緒に戦う加護。
それは契約による召喚であったり、交友による調教であったりするが、そうして得た貴方だけの仲間と共に戦うことができるようになる。
表:契約による召喚の力を得る。
裏:動物や魔物を従えて共に戦うことができるようになる。
あー……名前だとわかりにくかったけど、これ、「サモナー」「テイマー」か。
VRMMOだとこの手のペットを連れ歩ける職はすごい人気だと聞くけど。
【クラフトワーカー】
素材を集めてアイテムを作り出すことのできる加護。
武器、防具、装飾品から薬品や魔力の込められた品まであらゆるものを作り出す技術を有することできるようになる。反面、戦闘力においては他の加護より劣ってしまう。
表:アイテムの生産能力を得る。
裏:アイテムの生産に必要な様々な素材を収集する能力を得る。
これはいわゆる生産系のクラスかな。VRじゃなくてもMMORPGなら生産は必ずあると言っていい要素だしね。「カオス・ラグナロク」では生産要素はこの加護に全部まとめられているみたいだ。
【ビーストフォーク】
獣の力を内に秘めたる「獣人」であることを示す加護。
体の一部が獣であるか、完全な獣に変身する能力を持っている。獣の力により人を超える感覚や身体能力を得ることができる。
表:体の一部が動物となる。
裏:動物に変身する能力を得る。
ケモミミ!ケモミミ!!尻尾!!!
このクラスにしたらケモミミキャラが作れるようだ。
【ネイチャースピリッツ】
自然より生まれし「妖精」と「精霊」であることを示す加護。
耳が尖っていたり背中に羽が生えているなど特徴的な見た目の者が多い。自然物を活用する能力と属性への親和性を得ることができる。
表:自然物を活用する能力を持つ「妖精」となる。
裏:属性への親和性を持つ「精霊」となる。
自然物を活用する……というのはいまいちよくわからないが、エルフやドワーフ、フェアリーと言った見た目になれるようだ。
【ノスフェラトゥ】
不死の命を持つ「アンデッド」であることを示す加護。
太陽光への脆弱性や通常の方法では治癒を行えないなどの弱点を持つが代わりに強力な再生能力や通常攻撃や状態異常に対する耐性を持っている。
表:血を操る力と魅了の魔力を持つ「吸血種」となる。
裏:頑強な肉体と毒・麻痺を持つ「生ける死体」となる。
ヴァンパイアとゾンビ……?
また独特な感じだな。説明を読むだけだと詳しいことはわからないけど癖が強そうなのはわかる。
【セレスティアル】
神々の従者とその堕落した者である「天使」と「悪魔」であることを示す加護。
背中に光と闇の翼を持ち、空を飛ぶことができる。その他にも天使ならば光、悪魔ならば闇の力を扱うことが可能になる。
表:光の翼と光にまつわる力を持つ「天使」となる。
裏:闇の翼と闇にまつわる力を持つ「悪魔」となる。
自分の力で空を飛べる、というのは結構楽しそうな感じがする。
光と闇の力、というのもかっこよさげだ。
これは人気高そうなクラスだな……。
◇◆◇◆◇◆
一通り見ていったけど、思ったより種類多いな。
ただ、オーソドックスなファンタジーRPGの職業と種族だし、何とかイメージはできる。
〈キャラクター作成(2-2) 加護の中から2つを選んでください。この時、同じ加護を選ぶことはできません〉
〈ただし、同じ加護の表と裏を選択することは可能です。この時は真なる加護という状態となり、専用の祝福が取得できるようになります〉
〈加護のうち【ビーストフォーク】【ネイチャースピリッツ】【ノスフェラトゥ】【セレスティアル】は同時に1つしか取得できません。真なる加護を選択することはできます〉
結局、色々なクラスを組み合わせて自分だけのスタイルを作れ、ということか。
例えば【マスターアームズ】表+【ホーリーオーダー】表、で、いわゆる回復しながら戦える神官戦士、みたいな感じとか。ただし、【ビーストフォーク】表+【セレスティアル】裏、みたいなのはできない、と。
さて。
どういうキャラクターで遊ぶか。
好みで言うなら種族は人間より亜人が好きなので、種族を変える加護を選びたい。RPGを遊ぶ時は種族は人間より亜人を選ぶしね。
ケモミミでもエルフでも天使でもどれもよさそうではある。ヴァンパイアとゾンビは…それはそれで面白そうでもある。
一方でどういう能力のキャラで、戦士系か魔法使い系かあるいは生産系か……でやろうかと考えると、運動神経はまったくないので体を動かすようなクラスはためらわれる。システムによる補助がしっかりしているらしいけど、不安はあるし、そもそもバリバリ戦うのはあんまり好みではない。
好みなら支援系・回復系なんだけど、見知らぬ他人とパーティ組むのも……VRゲームでなくてもきちんと役割をこなして動けないと白い目で見られそう、と不安になって心労溜まるのに、VRゲームだと余計にストレスになりそうだしな……。
そう考えるとある程度ソロで遊べるクラスがいいか。
ただ、真なる加護と専用の祝福か。
専用という言葉には惹かれる物はあるんだよね。
うーん、さっそく悩ましいな……。