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酔ってるときの記憶って捏造されるって本当ですか?

体質的に酔っぱらう前に気持ち悪くなるので、私の書く酔っ払いはファンタジー酔っ払いになっています。

「ゴミを分けてくれて、クソありがとうございました!」


 ドンッ!!


 ギャンブル3兄弟(別に兄弟ではない)が土下座をした後、後ろを向いて右手を突き上げた。

 腕にはストーンランクの証、バツ印。ギャンブル3兄弟(パチ、スロ、ウマの3人組)は単純に無能だからストーンランクなので、首に爆弾は取り付けられていない。

 ギルドの地下に作られたストーンランク専用の待機所はほぼ酒場と化しており、今日も昼間から酔っ払い(この場合は個人を差さない)が集まっていた。


「死ねやぉ!」


 待機所に入るなり、誇張しすぎたモノマネをされた酔っ払いがギャンブル3兄弟(抜群のコンビネーションというほどでもない)に斬りかかる。

 底辺の世界にもカーストは厳然として存在する。

 揚げ足は取るもの。弱みを握れば相手より強くなった気になる。どこへ行こうとマウント合戦からは逃れられないのだ。


「ンン~ッ!!」


 奥の方ではおしゃべりが猿ぐつわをかまされ床に放り投げられている。

 格付けの終わった敗者には誰も目をくれない。

 おしゃべりの上に座っているサディストは放置プレイ(する側)もイける口だ。


「おめぇら3人もいてそんなもんかよぉ!おらぁ!」

「俺らが負ける確率は1/300だったはずなのに!?」

「目押しする隙がない!?」

「差せ!差せ!うおー!」


 人数が勝っているギャンブル3兄弟(全員自分が長男だと思っている)だが、ちゃんとした剣を持って素面ならシルバー相当の腕を持つ酔っ払いの方が優勢だ。


「なんで剣を持ってる!?卑怯だぞ!」

「金はどうした!」

「お前に貸してくれる金融ギルドなんてないだろ!」


 疑問の声を上げるギャンブル3兄弟(勝つ以上に負けている)に対し、酔っ払いは余裕の表情を浮かべる。

 お前たちと自分とでは天と地ほどの差がある、と言わんばかりの嘲りの表情にギャラリーも苛立った。


「おめぇら、金を貸してくれる彼女もいねぇのか?」


「………………………………何…………だと……」


 振り向きアングルで愕然とした表情。

 上がっていたボルテージが一気に下がる。

 ここは地獄の最下層コキュートス。風すらも凍る氷圏。

 これまでの罵り合い、殴り合いはすべてお遊び、茶番だった。

 ここからは正真正銘の地獄、倒れたものは立ち上がらさせられ、また殴り倒される人力修羅道が始まろうとしていた。


「お前に彼女ができるなんて嘘だ!俺にいないのにお前にいるわけないだろ!」

「真実を信じられないゴミは哀れだなぁ!俺に彼女がいないならこの剣はなんだ?金を貸してくれるとこがねぇのはおめぇらが言ったとおりだぜぇ!」

「本当に彼女なのか!?内臓とか売られてるんじゃないのか?」

「下衆の勘ぐりしかできないのかぁ?おめぇらをボコせるくらいにはピンシャンしてるぜぇ!」

「ちくしょう!依頼の時とは段違いに強い!ちゃんとやれ!」

「おめぇらに合わせてるんだよ!ハンデだ!」

「モンスターにハンデつけるな!殺すぞ!」

「やれるもんならやってみろやぁ!」


 戦いのボルテージ。

 その場の誰もがこの戦いは血を見ずには終わらないことを予感した。


 先制するのは酔っ払い。

 ギャンブル3兄弟はバランスがいいパーティーだが、近接一点突破の酔っ払いを止められるほどの防御力はない。

 3人をひとまとめに斬るべく横薙ぎの一撃。

 盾士のウマがなんとか逸らす。

 逸らされた剣がすべるように戻ってくる。ウマと酔っ払いの技量差では1秒も稼ぐことはできない。

 万能手のパチが突撃。弓士のスロが援護する態勢。

 酔っ払いがここで跳躍。


「馬鹿が!」


 スロの狙いすました一矢。

 逃げ場のない空中では避けられない。


「馬鹿はおめぇだぁ!」


 しかし、酔っ払いは剣で矢を弾いた。

 そのまま勢いと体重を乗せ、パチに上段斬り。


「くぅっ!実力差がありすぎる!」


 あわやパチが斬られるかというところで、待機所に突入してくる黒服の集団。

 瞬く間にギャンブル3兄弟と酔っ払いを組み伏せた。


「なんだおめぇら!」

「我々は傭兵ギルドのゴールドランクSPだ。依頼を受けてお前たちを取り押さえに来た」

「誰の依頼でぃ!」

「それは行政ギルドからだよ」


黒服たちの後ろから声を出したのは赤い服に目立つ緑のリボンをした、美少女と形容してもよい女だった。

しかし、その腕にはバツ印、加えて首には小型爆弾が取り付けられている。


「いや、依頼主は君だろう?デスソース」

「その名前嫌いなんだよね。プチトマトとかもっと可愛い名前にしてほしかったよね」

「てめぇデスソース、謹慎食らってたんじゃねぇのかよぉ!」

「それはもう解けたよ。だからこうして外を歩いてるんだろ?」

「なんだってこんなことを!」

「酔っ払い君邪魔だよ。……あ、いたいたおしゃべり君遊びに行こうぜ」


言いながら、サディストをどけ、おしゃべりの猿ぐつわを外す。


「おい、卑デスソース。私様をどけるとはどういう了見だい?」

「助かったぜ~、デスソース!こんな暴力を旨とするような女に踏まれてたら俺もサディストになっちまうところだった。見てくれ、俺のプルプルの唇がこんなにガサガサになっちまった。しかもさらに火で炙られて、ってあっつ!」

「私様の話を遮るな、卑おしゃべり」

「まあまあ、いいじゃないかサディスト。今日はボクが先約だ。それに椅子にされてたら助けるのがパートナーってものだろう?」

「私様の許可なく結婚したのか」

「いつ、俺とこの女が結婚したんだよ。顔はいいけど危険すぎるだろ。こいつの嘘で3人死んでるんだぞ。正直お前ら爆弾組とは付き合いたくね~よ。付き合うならお前らゴミ以外の金持ってるね~ちゃんと付き合うわ」

「そう言うのを絵空事とか絵に描いた餅と言うのだぞ」

「言えてるね。しかし、ボクら爆弾組は本当は忠義を証明するために自分から爆弾をつけているんだ。勘違いしないで欲しいな」

「すぐわかる嘘をつくなよ!いや、それでいいのか?嘘つくのはやめられないんなら、せめてわかる嘘がいいな。そのままのお前でいてくれデスソース」

「ボクほど嘘をつかない正直な人間はいないと思うけど」

「嘘しかつかない者が何を言っているのか、卑デスソース。結局何をしに来た?どうせ謹慎が明ける前に出てきたのだろう?」

「謹慎は明けてるよ。いや、本当に。ボクは今日金を回収しに来たんだよ」

「金~?今お前から金なんて借りてないぜ」

「酔っ払い君から受け取ってないのかい?」


 その場の視線が押さえつけられた酔っ払いに集まる。


「あぁ!?おめぇからそんな金預かってねぇよ!」

「いやいや、預けたはずだよ。昨日の夜、たまたま会った時におしゃべり君に渡してくれるように言って渡したはずだ。君はなんだかありがとうとか言っていたし、念を押しても分かったと言っていたから信用したのだけれど」

「あぁ……?」


 少し考え込んでいた酔っ払いだったが、ハッとした顔になり、赤くなった後に青くなった。


「デスソースおめぇ、もしかして昨日の夜はいつもの恰好じゃなかったのか……?」

「そうだね、昨日の夜は仕事だったからスーツだったね」

「俺が会ったのはスーツ姿の女じゃなかったが、やっぱりあれがてめぇだったてぇのか!?」

「昨日の夜は出歩いてないけど、それがボクだね」

「なんだよ、彼女ってのは嘘だったんじゃねえか」


 周囲のゴミは酔っ払いから興味を失った。

 格付けの終わった敗者には誰も目をくれない。

 勘違い男には罵倒さえもったいないのだ。


「おい、誰か俺を見ろぉ!」


 人の世は栄枯盛衰。

 椅子だったおしゃべりが女と街へ行き、彼女持ちと思われた酔っ払いが地に伏す。


「じゃあ行こうかおしゃべり君、今日は仕事を手伝ってくれる約束だろう?」

「約束はしてないけどいいぜ。今日の俺は気分がいいんだ。酔っ払いの顔見たか?底辺にふさわしい顔だったよな~。ああいうのを……」


死ねって書きたいだけだから、書いた後はおまけです。

今後は、今後はですね。オチも頑張ってつけていきたいと考えているところであります。

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