表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/238

ウルバン 剣とかいろいろやりたいひと~おいで~


 さあ、今日も学園に行こう!


 魔銃クールブロンをとりあえず袋で覆って、ひもで縛る。こうすれば剣を持っているように見えないこともない。魔銃なんて目立つしね。


 今日はウルバン先生の武器を扱う授業だ。魔銃なんて持って行っても教えてくれることはないと思うけど、剣とか槍とか……純粋に重くて扱えそうにないんだよなぁ。そういえば先生は「剣聖」って言われていたらしいけど、剣が得意なのかな。


「こっちも用意できたぞ」


 ニーナが制服に袖を通して振り返った。彼女は拳が武器みたいなものだから何にも持たなくてもいいって感じかな。いやいいのかな? よく考えたら何か持って行った方がいいんじゃない?


「ニーナもなにか武器とか持っていったら」

「いや、何もない」

「家にあるものなら鍋の蓋とか木の棒とかしかないけど」

「意味不明なものを勧めるな!!」


 ニーナに冗談を言っているとモニカも用意ができたみたいだ。結局、2人とも泊まった。ラナとあたしと2人でやっぱり寝るときは狭かった。そのラナは今朝早くに出ていった。朝に蹴飛ばされて「変なことするんじゃないよ」って言われたのを覚えている。


 そういえばモニカも何も持ってない。


「モニカはあれでしょ、なんか大きい奴、この前持ってた」

「ええ、マオ様。あのハルバードですね。昨日のうちに依頼をして持ってきてくれるようにしました」


 もしかしたら蝶の魔法でほかの魔族と連絡をとったのかな、いやお父さんのギリアムさんかもしれない。でもあんな大きな斧みたいな武器、すごく目立つよなぁ。昨日モニカはあたし以上に目立つとか言ってけど、気にしなくていいのに。


「とりあえず行こう!」


 家には鍵をかけて、戸締りをして3人で学園に向かう。



 校門を超えて今日の授業の場所まで向かった。朝の登校の時間ってさ、こうニーナやモニカとおしゃべりして歩くのって結構楽しい。だいたいどうでもいいこと話している気がする。例えば昨日のご飯の話とか。


「お前、食事のことばかりだな」


 ニーナにそう言われたとき少し恥ずかしくなった。それで話題を変えようと思ったんだ。


「そういえばミラはどうしたんだろ。最近見ないけど」

「別に学園のどこかにいるか、冒険者ギルドから依頼を受けているんじゃないのか?」


 そっか。学生でも条件付きでギルドから依頼を受けていいんだった。そもそもミラとの出会いはあたしの村に魔物退治に来てくれたことじゃん。……あ、でも本当にどこかに行っているのかわからないのか、話したいなぁ。なんにも言ってくれないのは寂しく感じる。


「マオ様」

「ん? なーに?」


 モニカは真剣な顔で言う。


「今から授業の場所である訓練場が近づいてきますが……その前にお使いを頼んだ魔族がいます。どうか驚かれないでください」

「驚くって言われても」


 魔族は王都では結構風当たりが厳しいから言ってくれたのかな。うん、わかったよ。


 ああ、あれだ。ドーム状の屋根を持った石造りの建物が見えてきた。あれが「訓練場」だ。その名前の通り、生徒が武器や戦闘の訓練をするために使うんだって。


 その入り口に大きな武器を携えた少女が立っている。青い軍服に身を包み、髪の色は茶髪で先っぽが金髪に。耳は長く目は紅い。彼女はあたしたちを見つけるとにこりと笑顔を作った。


 足が止まった。


 フェリシアだ。


 その瞬間わざわざモニカが話をした理由が分かった。確かにあの日もモニカとフェリシアは知り合いのようだった。ここにいるということは彼女は魔族の自治領の所属なのかもしれない。『暁の夜明け』とは違うのかも。


 工房でイオスに同行を求められてそして仮面の男とともに攻撃してきた魔族の少女。モニカは足を止めずに彼女の近づいていく。


「ああ、やっと来ましたかモニカさん。それにそこにいるのは忌々しいマオさんではないですか。ごきげんよう」


 彼女は手に銀色のハルバードを携えている。それは太陽にキラキラと光っていた。長い柄に大きな斧と先端に槍をつけたそれをモニカに渡す。あたしの袖をニーナが引っ張って「あの魔族知り合いか?」と耳打ちしてくる。うん。そうだね。


「待ってましたよ。これでお使いは終了ですね。ギリアム様に頼まれたから持ってきましたが、今後はこのようなことはないようお願いしますね。モニカさん」

「……」


 モニカはフェリシアをじっと見つめている。フェリシアはふっ笑って「それでは」と言ってあたしたちの横を通り過ぎようとする。


「待ってください」


 モニカが言った。振り返る。


「マオ様に謝ってください」

「はあ?」


 フェリシアが一度あたしを見る、うっすごく冷たい目だ。彼女は肩をすくめた。


「ああ、そういうことですか。私にオトモダチに謝ってもらいたくてわざわざご指名をいただいたんですね。はいはい。マオさん」

「え?」

「どーも、すみませんでした。これでいいですか?」


 ドンっと音がした。モニカの体からすさまじい魔力があふれる。彼女の右足を足元の石畳を踏みつけひびが広がった。


「いいわけ……いいわけないじゃないですか! どんな理由かはわかりませんが、あの仮面の男のような手練れと私の友達を襲撃するなんて許されるわけがない……!」

「はあー?」


 フェリシアはモニカを見ない。


「お門違いですね。私も好きでマオさんを襲撃したわけではありません。その辺の苦情はむしろイオスとかいうあの緑の髪のギルドマスターに言うべきでしょう? そもそも私はあの仮面の男についてよく知っているわけでもないですからね」


 イオス……そう、あいつには聞かないといけないことが多くある。でも仮面の男が近くにいるならそう簡単に近づいたら危険だ。どうしようかなとは考えていた。


「もういいですか? それに結局は私はそこのオトモダチさんに不覚を取ったのですからいいでしょう」

「……」


 モニカのハルバードを握る手に力がこもっているのを感じた。まずい、そう思った次の瞬間にはモニカ駆け寄った。


「モニカ、こんなところでだめだよ。ありがと、気にしてくれたんだよね」

「マオ様……」


 魔力が治まっていく。あたしはハルバードを握るモニカの手をにぎって、にぎにぎして力を抜くようにいう。それからフェリシアにも言う。


「あのさ、魔銃預かってんだけど、どうすればいいの?」

「ああ。そんなものどうでもいいですね。もともと必要なかったので。捨てるなりしてください」

「それはもったいないなぁ」

「…………」


 フェリシアは両手を組んで見下すように顎を引く。それでいう。


「どうでもいいですが、忠告してあげましょう。魔族と人間は違います。そこにいるモニカさんと仲良くしたいのは勝手ですが、私にもなれなれしく話しかけるのはやめてください。オトモダチごっこには興味がありませんので、それにモニカさん」

「……」

「そこにいるお優しいお友達は人間ですよ? 私たちをあの寒い場所に追いやったね。そしてあなたの母親の……」

「やめて!!」


 モニカは叫んだ。前に飛び出そうとした彼女をあたしはとっさに抱き着いて止めた。フェリシアはそれを冷たく笑った。


「ま、いいでしょう。それではこれで。ああ、貴方は力の勇者の子孫でしたっけ? お連れがあれでは大変ですね」

「……」


 ニーナに嫌味を言ってフェリシアは歩いていく。その足を引っかける男がぬっと出てきた。


「きゃっ!?」


 その場に転ぶフェリシア。転ばせた男はけらけらと笑っている。短く切った白髪交じりの髪。背は高くてすらっとした体形。腰には細身の剣を吊っている。そんな彼をあたしたちはぽかーんと眺めていた。


「な。なにをするんですか!? いきなり現れて!」


 鼻を抑えながらフェリシアが顔を真っ赤にして立ち上がる。男は言った。


「いやー、ごめんごめん」


 結構歳をとっているとおもうけど、口調は若い。細い目のその人は言った。


「とてもクールな君を転ばせたらどんなかわいい反応をするかって気になって」

「……!?」

 

 フェリシアは彼を睨みつける。油断していたとは思うけど、フェリシアを転ばせたその瞬間にいきなり現れたように見えた。あれは……そういう「技術」なのかもしれない。剣の勇者も独特の敵への接近の方法を使っていた。


「まあ、そう怒らないでくれよ魔族のお嬢さん。僕はウルバン。ここのマスターの一人だ。よかったら君も僕の講義を受けてみるといいよ」


 ウルバン先生はそう言ってにやりと笑った。彼はフェリシアの首根っこを抑えるようにしてはははと言いながら訓練場に入っていった。


「はなせ! 貴様! 気安く触るなぁ!」


 連行されていくフェリシアをあたしたちは見送る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ