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モニカの決意

更新おそくなってすみません。がんばります!


「それじゃあ全員揃ったわね」


 ラナが両手を組んで全員を見回した。


 ギルドの端っこにある円卓を囲んであたしとミラ、ニーナ、モニカが座っている。円卓の上にはラナが広げた王都の地図とさっき受付でもらった「Fランク依頼書」が置いてある。


 依頼内容はいつも通り「手紙の配送」だとか「犬の散歩」だとか直接的には命の危険がない……どころか頑張れば誰でもできそうなことばかりだ。でもとにかく時間がないし、数が多い。


「ラナ……そ、そろそろ、依頼を受け始めないとまずいんじゃないかな」


 あたしは気が逸る。昨日のこともあるし、ギルドでのさっきのこともある。なんだかプレッシャーを感じるよ。失敗するわけにはいかないって気持ちが強いし。あと失敗して村に帰るなんて絶対ヤダ。


 ラナはあたしの顔をすごい顔で見てきた。か、顔に「何言ってんだこいつ」って書いてあるよ。


「あんたねぇ。言ったでしょ? ちゃんと計画をたてろって」


 ラナが地図を指でなぞっていく。ある一点で指先が光、地図に赤い点が浮かぶ。簡単な魔力の目印だ。それをラナがいくつもつけていく。


「今日の依頼書に書いてる場所はこういう風になってんの」


 点はバラバラの位置にある。依頼自体は簡単でも移動を考えるとちゃんと考えないと難しいかもしれない。


「それに依頼内容よ」


 ラナが言う。


「時間のかかるものもあるし、かからないのもある。一応マオの試験だから依頼を受けるときだけはあんたがいて、そのあとに誰がやるか仕事を振り分けていく必要があるわ」


 場所とそれに依頼の質を考えないといけない。例えば前にやった草むしりに仕事をニーナに任せたらたぶん結構時間がかかるから、「あたしとラナ」でやった方が早いとかそういうことを全部考えないといけない。


「わかっているよ」


 正直頭が痛くなりそうだけど、あたしの手元には依頼書がある。さっき全部目を通した。だから、あたしには考えはある。


 ちょっと難しい顔をしていたあたしの横に金髪がふわりと揺れる。ニーナがみんなに話す。


「実際こいつの言う通りさっさと始めないといけないことはあるだろう。はっきりいえば時間もないし迷っている時間もない」


 ニーナ……。


「それに依頼を受けて終わったとどうやってそれを知らせればいい? 1人少なくとも数件の依頼を担当しないといけないから、問題だと思う。それに……」


 ラナが怪訝な顔をする。


「まだなんかあるの?」

「いや、これは別に気にするべきことではないのかもしれませんが」


 ニーナはラナに1人に話すときだけ敬語だ。


「あなたとミラとモニカは学園の授業とかないのですか? こいつのテストばかりにかまけてていいのかと」


 そういえば、そうだ。最近いろんなことがあって当たり前に手伝ってもらっているけど、3人は学園に在籍しているんだった。でも、ラナは右手を横に振った。


「気にしないでいいわよ、そんなの。ちゃんと考えてるから……ん? ニーナ」

「う、やはりニーナ呼びか……はい」

「細かいこと気にしなくていいっていうか、学園の授業はあんたが考えているような感じとは違うと思うわ。ま、入ってみればわかるし。この馬鹿を入らせないといけないし。だから、むしろニーナの言う終わったことを知らせる方法のほうが重要ね」


 ラナは腕組をして考えてる。


「……あ、あの」


 モニカが手を挙げる。


「も、もしも使えるのならですが。私たちの魔法にこういうものがあります」


 モニカが両手を祈るように合わせて。短く呪文を唱える。モニカの両手が開かれる同時にふわりと光る蝶々が数匹飛んだ。それはあたしの周りをひらひらと舞う。ちょっとかわいい。


「これは、魔力に意思をのせて飛ばす魔法だね。あたしの時代にもあったよ」

「時代……ですか?」

「マオ!」


 モニカが首を傾げたとき。ミラが叫んで。あたしがはっとする。


「い、いや言い間違えたよ。故郷の近くで見たことがあるっていいたかったんだってば。あはは」


 ラナがあたしをじっと見たけど、おもわずは目をそらしてしまった。ニーナは蝶を目で追いかけてる。


「そうですか……。それでもご存じなら話は早いですね……。この蝶は一匹ずつ簡単な伝言載せて伸ばすことができます。相手の前ではじけて魔力の文字になって消えるということで……使い捨てですが。魔法としては簡単です。こう手の甲に私が魔力で紋章を書かせてもらえれば使役も容易です」


青い蝶がモニカの周りを飛ぶ。そしてぱっと消えて、空中で文字になった。


『シチューおいしかったです』 


 そしてすぐに消える。


「このような感じです。それと離れたところにいるそれぞれが通信するためですが、それぞれ紋章を手に刻んで蝶を使役する必要があります。同じ術者が刻んだ紋章の間で蝶は行き来できますし、その紋章を通せば、蝶は何度でも生み出せますが……飛んでいける距離はそこまでありません。街中くらいでしょう」


モニカが腕をめくって自分の手の甲を見せる。そこにはぼんやりと青い紋章が浮かんでいた。


なんだかその表情は暗い。


「ただ――話の通り私が簡易的とは言えみなさんの手に魔術を施さないといけません。……断ってくれてもかまいません。魔族として怪しい動きをするとみられるのは当然で」


 言いそうなったモニカの前にミラが右手を差し出した。モニカは目をぱちくりさせて、銀髪のあたしの親友を見る。


「時間がないよ」


 その横からラナも手を出して。


「今更、疑っても仕方ないでしょ」


 あたしもあわてて手を出す。


「お願い! モニカ!」


 それからニーナが少し躊躇したみたいだったけど、


「ん……」


 手を出してくれた。ありがと。


 モニカは一度目を閉じてから、開いた。なんだか瞳に強い光をたたえているように見えた。


「わかりました」


☆☆


「それじゃあ。エトワールズの初依頼にいくわよ!」


 ラナが手を挙げる。手の甲に黄色の紋章がある。そして蝶がそばにいる。


「「おー」」


 ミラとあたしも合わせて拳を上げる。それぞれ青と緑の紋章。なんでかあたしは頭に蝶がとまっている。


「……お、おー」


 ニーナは桃色の紋章。「私の色はどうなんだ」ってさっき言ってた。かわいいからいいじゃん。


 ラナがずんずんと速足で歩きだした。それにあたし達も追いつこうとして呼び止められる。


「あの、マオ様」

「ん? なに、モニカ」

「依頼書を貸してもらえませんか? 少しでいいんです」

「……いいけど、はい」


 ポーチから出した紙の束をモニカに渡す。モニカはそれを手で繰って、数枚の紙を取り出す。それを胸の前に出して言う。


「この依頼は……私にさせてください」


 あたしは、それをみて正直即答できなかった。一瞬息をのんだ。Fランクの依頼だから、難しいってわけじゃない。……それはあたしがやるつもりだったものだ。


『魔族に破壊された市街の復旧作業』


 依頼書にはそれが書かれている。依頼主はあの親方だ。たぶん資材運びとかそんなものだ。前はラナと一緒にやったことがある。


「も、モニカ」

「お願いします」

「………………」


 モニカの赤い目があたしを見る。あたしは――


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