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遊びに行こう!②


 市場を回って、歴史的建造物ってのをいろいろと回って午後になった。


 小さな貯水池がある。その周辺は自由に歩き回れるようになっていた。芝生もある『公園』っていうらしい。王族が開放しているん……だってさ、なんでそんなことをしているのかな?


 子供が遊んでいるのも見えた。ふぁー。あくびがでる時にあわてて口元を隠す。はしたないしね。……というかいろんな人がいる。なんか絵を描いている人もいるし……露店を出している人もいる。

 

 そうやってあたりを見回しているとラナがまた説明してくれた。彼女は手に持った冊子を読んで話す。


「ここは結構昔に王都が大火にあった後にできたらしいわね。……けっこう悲惨な事件だったみたいだけど……同じことがあっても王都の人たちが逃げ込めるように作られたらしいわ。時代が全然違うから魔族とか人間とかの話じゃないみたいね」


 意外と重たい歴史があった……。でも火事はほんと怖いよね。ラナはぱたんと冊子を閉じていった。


「まあ、今は憩いの場らしいけどね。……ねえマオ」

「なに?」

「ここね……出る……らしいわよ」


 にやってラナが笑う。出るって……何が?


「夜になると昔死んだ人の声が聞こえるって……その声を聞いた人は夢の中に死者が出てくるって。やけどにただれた人に取り囲まれて……『つぎはお前だ』って言われるって」

「へえ」

「へえ、って……あんたその手の話は平気な方なの?」

「まあね」

「なんだ、つまんね」


 ラナがふいって歩いていく。まあ、もしも死者に意思があるならあたしを生かしておくわけないからね。……やめとこ。気を取り直してさっきから気になることを聞こう。モニカがさっきからフードをかぶっていることだ。もしかして気を遣ってない?


「ねえ。モニカ」

「はひ!?」


 びくってモニカがした! あたしがびっくりする。


「い、いえ、何でもありませんマオ様。どうしましたか」

「…………もしかしてモニカって幽霊とか苦手?」

「…………いえ、全く信じてませんが?」

「……今度Fランクの依頼でさ、幽霊屋敷に入って掃除をしてほしいって依頼があるんだけど、モニカもやってくれたりする?」

「……………………」


 すごい目が泳いでる。というか汗がすごい。悩んでくれている気がするけど……なんだろこれ、楽しい。


 いつの間にかラナがモニカの後ろに来ている。にやぁってしながら手を肩にとんと乗せる。


「ひやぁ!?」


 モニカが素っ頓狂な声を出して振り返った。ラナがにやにやしている。


「何するんですかラナさん!」

「なにって肩に手を乗せただけよ。何か悪いの?」

「悪くは……ありませんけど」


 そろーりそろりって感じでミラがモニカの後ろによって行く。あたしは両手で口を抑える。ミラと一度目が合う。あたしは笑いこらえる。


 ミラがモニカの後ろから「つぎはおまえだ」って低い声で言った。


「!!!???!!??!?」


 モニカがびくって背筋を伸ばす。あたしは笑ってしまう。モニカは少し涙目で振り返った。その時フードが取れてワインレッドの髪が露になる。


「皆さん、い、いじわるはやめてください!」


 ミラとあたしとラナは笑ってしまう。モニカはもぉってほっぺたを少し赤くして怒った。ごめんごめん。


「こ、こういうからかいはよくありません。ニーナさんを見習ってください!」


 ニーナは両手を組んで黙ってみんなを見ていた。モニカの言葉で彼女に視線が集まる。


「あ、ああ、いや。幽霊か……そういえば私も昔から霊感があるって言われることがあってな。一人で武術の訓練をしていると、夕暮れ時だったが昔の騎士の鎧を着たやつが歩いていくのを見たな。首がなくてな……よく見ると小脇に抱えていた。流石に怖くなって逃げたが……」


 モニカが立ち尽くしている。


「やめてください」


 もう一度本気の声音で言った。


「本物な話は今言うことじゃありません」


 それでもニーナは「でもそれ以外に」って続けようとしてモニカが「いいです! ほんとうにいいです!!」 って拒否している。


 思いがけない成り行きにあたしは面白くて笑ってしまうけど、これ以上は悪いよね。あたしはニーナにも話をやめるように言おうと思った時に――後ろから聞こえた。


「なんでこんなところに魔族がいるんだ!」


 男の声だった。あたしが振り向くと2人のおじさんがモニカを見て、ひとりは指さしながら何か言っている。ラナ達もはっとした顔をしている。


「魔族がいたら子供が怖がるだろうが!」

「……」


 ……モニカがおじさん達に向き直って、少し頭を下げそうになるのが分かった。だからその前に体が動いた。おじさん達の前にあたしは行く。


「おじさん!」

「な、なんだ……お前はこんなところに魔族を連れてきて何を考えているんだ」

 

 あたしは両手を組んで胸を張って言う。


「別にどこに行ってもいいじゃん」

「そんなわけないだろうが。最近魔族はいろんなところで危険な事件を起こしている。こいつだって何を考えているか……」

「おじさん!」


 あたしは前にいた方のおじさんを指さす。


「な、なんだ」


 指を立てたままあたしはその指をモニカの顔の前に動かす。


「モニカはかわいいでしょ!」

「は?」

「な? えっ? マオ様?」


 あたしはつづける。一歩、おじさんに踏み込む。


「モニカはかわいいでしょ!」

「は? なにいってんだおまえ」

「かわいいでしょ!」

「……ま、まぞくが」

「美人でしょ!」

「……か、顔はいいかもしれないが」

「ほら!」

「ほらって……なんだよ」


 あたしは両手を組んでいってやる。


「おじさん。モニカのこと全然知らないでしょ。魔族がどーのとかいうけど、モニカは優しいし、魔法も使えるし、料理もできるって知ってた!? あと、子供にも好かれてるよ。それにすごく頼りになるし……あ、それと幽霊も怖がってるのも知ってる?」

「し、知るわけないだろ」

「じゃあ。なんでいきなり声をかけたの? 知りもしないのにあたしの友達を馬鹿にするのはやめろ! 何を考えているかわからないって……当たり前だよ! おじさんがモニカを知らないのにいきなりわけわかんないことを言ってたら、この子が何考えているかなんて永久にわかるわけないじゃん!」


 あたしは前に出る。おじさん達が後ろに下がる。おじさんたちはそのまま「な、なんだこの頭のおかしいのは」って言って速足でどこかに行った。あたしはべっとその背中に舌を出した。


「……マオ様」


 あたしはその声に振り返った。次の瞬間にあたしのほっぺたをモニカの両手がつかんだ


「な、なんですか今のは~!」

「い、いたひぃ」

「私のことを……みょ、妙に褒めて……あの人たちと一緒に困惑しました」

「そ、そんなこといっても」


 あたしはモニカの手から逃れる。


「でも、モニカはかわいいじゃん」

「う、うー。ま、マオ様」


 モニカは顔を赤くしてうなる。それからあたしを捕まえようと手を伸ばしてきた。あたしはニーナの後ろに隠れる。


「ニーナ!」

「お、おい。なんで私の後ろに」

「助けて」

「助けてって……」


 モニカがニーナの前に来る。あたしはニーナの背に隠れる。


「マオ様ぁ」

「待て、モニカ。落ち着け。お前はかわいいし美人だろう」

「ニーナさん! やめてください!」

「……わかる。褒められると嬉しいが恥ずかしいものだからな。だから落ち着け」

「う」


 モニカは顔を赤くする。そのいい方なら照れ隠しししているみたいに聞こえるね。モニカはニーナに掴みかかった。それをニーナがよける。あたしも逃げる。


 これ、なんか久々な気がする。村でよく遊んだ追いかけっこ。あたしは公園に走り出す。ニーナの手を引いて。


「モニカ! こっちこっち」

「……マオ様」


 顔を赤くしたままモニカが追ってくる。へへ、捕まらないよ!


 

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