ルール説明
今日2回目の更新です。お気を付けください。
今日は……なんだっけ。
ここどこだっけ?
そうだ、ラナとあたしの家だ。
みんながいる。
大きなピザがテーブルにあった。そうだ……それをみんなで切り分けて食べる日だった。
ラナが切ってくれて、ニーナとモニカがおいしそうに食べている。あたしの皿……きょろきょろして探していると椅子に座っているミラがいた。両手でピザをもっておいしそうに食べている。
「あ、マオ」
こっちを見てあたしににっこりと笑ってくれる。
なんだかほっとする。みんなでいると心が休まる気がするよね。あたしはミラの横に座る。何を話そうかなって思ってそれで、
――川のせせらぎに目を覚ます。
目をあけると目の前には空が広がっている。鳥の声が聞こえてくる。起き上がって周りを見る。ラナが焚火の前でこくりこくりとしている、交代で焚火の番をしたんだ。ニーナとモニカはまだ寝ている。あたしを除けば3人だけ。
あたしは頭を抱えて少しの間そのまま上着に顔をうずめる。
………悩んでても仕方ない。そう思った。よし、起きよう。あたしは立ち上がった。いてて。背中が痛い。野宿ってこんな感じかぁ。体を伸ばしてみる。そうしていると森の方からクロコ先生がやってきた。腰にはなんか籠みたいなのを吊っている。
「おお、おはよう」
「おはよう……ございます」
あたしはぺこりとそういう。クロコ先生は「なんかちゃんと挨拶できるとは意外だな」となんか失礼なことを言う。
「今日の昼にみんな集まる前に言っておこうと思ってな。寝ている子らも起きてからでいいんだがな。パーティーでの模擬戦のルールを言っておこう」
「ルール」
「そりゃそうだろ。何も取り決めずにバトルってのはあり得ない。ちなみに向こうの連中にはチカサナが説明をすることしている」
クロコ先生は大きくあくびをする。
「眠たいな」
「眠らなかったの?」
「お前のせいだぞ」
え? な、なんで。
「リリスの阿保を連れてきただろ」
「ああ~」
意味がわかった。
「あいつは頭と顔がいいだけだからな……。人のテントに入り込んでくるし、俺を蹴飛ばして外に出そうとするし……食料は漁られた後だし……。だめだ。ヴォルグといいなんで俺の周りはあんなのばかりなんだ。チカサナもお前あれが変人なの知ってんだろ?」
心底疲れたような顔で肩を落とす先生……。
「それはそうとマオに聞いてみたいことがあったんだが」
「なにさ?」
「お前のことは学園長から授業を頼まれたんだが、なんでそうなったんだ? 普通は生徒自身で誰の授業を受けるか決めるものだろ」
「それは」
あたしはかいつまんで話した。流石にミラの家からの圧力という話はしてない。
「なるほどな。貴族のどっかから言われたってことか。それで変人揃いの先生に認められて実力を示せと……たしかにゲオルグは性格くそだし。ポーラは怖いもんな……いや待て。なんでそこに俺が入ってんの?」
「さ、さあ」
「な、納得がいかねぇ。リリスと同列? それに親父と……?」
クロコ先生は頭を抱えてぶつぶつ言っている。確かにほかの先生に比べたらまともに見える。
……しばらくしたらみんなが起きた。クロコ先生が持ってきた籠の中には魚が入っていた。先生は手早く火を熾して魚を串に刺して焼く。朝ごはんを思いがけず作ってくれた。
焚火を囲んで話す。塩の振ってある焼き魚……皮がぱりぱり。おいしい。ラナ達も食べている。
「まあ、慌てて食べるなよ。どうせ昼まで時間はあるからな。お前ら今日は川の近くに野宿してたみたいだが本当の冒険の時は気をつけろよ」
「なんで?」
あたしはもぐもぐしながら聞いてしまった。ちょっと行儀が悪いかも。
「簡単だ。魔物は夜行性の奴もいるから夜に水を飲みに来ることもある。まあ俺がたまに見回りに来てたが火を消さないように交代してたのはよかったな」
見に来てくれたんだ。やっぱりいい人なんじゃないかな? なんでこの先生が変人扱いなんだろう。
「まあ。本題だ。パーティー戦での戦いは3日目の朝から。開始の合図は俺とチカサナでするからフライングはない。その点は安心してくれ。基本的に相手を全滅させるか……もしくは正午までに残ったやつが多いパーティーを勝利とする。簡単だろ」
クロコ先生は自分でも魚を食べる。
「それで禁止事項だが。基本的に無理な追撃は禁止。武器はすべて『刃引き加護』を行ったものだけ。あとは炎の魔法も禁止だ。これは山火事になるかもしれないからな。ああ、ガルガンティアの術式は流石に許可するが……火事を起こすなよ。起きたら全面中止。あとは――」
掌にいくつかの宝石のようなものを乗せてクロコ先生があたしたちにさしだす。綺麗な石。赤。青。緑。黄色。紫の色がついている。
「これは生命石というものだ。ラナは上級生だから知っていると思うけどな。お前の着ているフェリックスの制服は特殊な素材でできていて魔力を通すだけで防御力が格段に上がる……のは全員知っていると思うが。首元にこの生命石を固定できる場所がある。ほらマオ。つけて見ろ」
あたしに緑の石をくれる。首元、首元。確かにくぼみがある。ぱちりとちょうど留められた。それで制服がほのかに光る。
「この石には俺とチカサナの魔力が入っている。それだけじゃない、こいつには防御魔法が組み込まれている。だから魔法も含めてお前らの受けるダメージはこの石が肩代わりしてくれる。一定以上のダメージを受けたら割れる。割れたらそいつはリタイアだ。リタイアした奴に攻撃は禁止な。それの魔力は始まる前にもう一度付与する」
あととクロコ先生が続ける。
「その石をつけていれば俺たちもお前らがどこにいるのか何となくわかる。あとで遭難なんてならんように石が割れても持っていろ。……ふー。まあ、こんなところだな。質問はあるか?」
きれいに説明してくれたからあまりないけど、ラナが手を挙げた。
「場所はこの山全体なんですか」
「基本そうだが……あまり遠くに行かれると困る。そうだ。これはあとで話そうと思ったんだが、キャンプ地を2つに分ける。俺のグループとチカサナのグループだな。やることは変わらないが、お前の相手のパーティーは別の場所に行く。戦う前に顔を合わせるのは何となく気まずいだろ」
……そっか。会えないのか。残念な気持ちとどこか安堵したような気がして、ちょっと自分が嫌だった。クロコ先生は言う。
「まあ、時間はあるから質問があれば適宜行ってくれ。あとチカサナに便宜を図ってこうなったが、本来は俺の授業だからな。昼からは山の中に入って色々するぞ」
「「「いろいろ?」」」
あたしとラナとモニカの声が重なった。ニーナは魚を食べてる。クロコ先生は両手を組んだ。
「山はいいぞぉ。都会のわけのわからん人間関係もないし。山菜はとれるし……空気はきれいだしな……それに……」
そのまますごい勢いで話し始める。鳥の話とか木の話とか魔物の話とか、早口でどんどん話題が移っていくから頭がくらくらする。モニカがすごいへえ、そうなんですね、すごいですね、って困った顔で相槌を打ってる。あたしにたまに助けを求めるように目で訴えるけど、ど、どうしようもないよ。
「なあマオ。山っていいよな」
すごいキラキラした目で聞いてくるからあたしは言った。
「は、はい」
この人のやばいところの一部がみえた気がする。
……い、いやそんなこと気にしてもしかたない。残りの時間はみんなで特訓と作戦を考えよう。も、もちろんクロコ先生に授業も。




