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パーティーに彼女を入れよう


「いたた」


 ラナがほっぺたを抑えている。なんかよくわからないけど昨日帰ってきたときぼろぼろだった。ニーナを追っていってそれから何があったのかよくわからない。だって教えてくれないから。


「何があったの?」


 ってきくとラナはじっとあたしを見る。なんか観察をしているように。


「教えない」


 そう言ってニヤッと笑う。き、気になる。本当になにがあったんだろう。たぶんニーナとのことなんだとおもうけど。


 朝のパンを齧りながらあたしは釈然としない。ラナもおいしそうにパンを食べて、あっためたミルクを飲む。昨日もモニカが泊まったから一緒にご飯を食べている。


 ラナはパンを食べ終わると立ち上がって大きく伸びをする。背が高いし痩せているからスタイル良いよねってまあそんなことは良いんだけどさ。


 ラナの白いシャツが伸びて胸元のリボンが揺れる。


「さーて、それじゃあ」


 って言ってあたしの頭を両手でつかんで思いっきり力を入れる。


「い、いてててて!???」

「あんたはさぁ。家に帰れって言っただけでまたなーに面倒ごと作ってんの???」


 いたーい。いたい。ぐりぐりされるの結構効く! き、昨日のミラとのことを話した時は「ふーん」って感じだったのに……。朝に持ってくるのは反則だよ!



「ま、待ってくださいラナ様! マオ様だけじゃなくて私も悪いんです」

「ふーん」

「ふぁ、ふぁあ」


 ラナがあたしから手を離してモニカの頬っぺたを両側から引っ張る。


「そーよねー。なんであんたもついてんのに、ミラスティアとやりあうことになるのかしら?」

「ご、ごめんなさいぃ」


 そのあと二人をいっぱい怒った後にラナがどすんと椅子に座った。足を組んでリボンを緩める。


「で? 5対5でのパーティー戦だったっけ?」

「は、はい。そうです」


 あたしは自然と敬語になってしまった。ラナははあとため息をつく。


「あんたとモニカと私と……あとはニーナが出てくれるかな。一人足りないけどどうすんの?」

「ラナも出てくれるの?」

「は? 何? 出なくていいの?」

「い、いえ、うれしいです」

「よし」


 ラナは頷く。


「まあ、正直言ってあいつめちゃくちゃ強いわよ。4人でかかってもぼこぼこにされるかもしれないし。一人でもどうしようもないのにほかに誰か連れてくるんでしょ? どうすんの?」

「う……それはこれから考えるよ」

「マオ様、私も頑張ります」

「ありがとうモニカ……」


 でも確かにどうしよう。直接的な戦闘力ならどう考えてもミラがはるかに上だ。流石に聖剣を使うとは思わないけど、聖剣がなくてもすごく強いってロイの時にわかっている。


 でも絶対に負けたくないって思う。なんでだろう、ミラに負けたくない。剣の勇者の子孫だから……? いやそんなこと気にならないはずだけど、自分でもなんでかはわからない。


 ラナがまだ湯気を立てているミルクを飲む。 


「あんたたちがなんで喧嘩したのかはさっぱりわからないけど、マオの状況はミラスティアがいないと始まらないんだから……それはあんたもわかってんでしょ?」

「うん」

「正直言ってとっととあんたが悪いと思ってなくても謝ってきたら早いと思うんだけど」

「それは……やだな」


 ミラはもしかしたら許してくれるかもしれないけど、それは結局なんだか違う気がする。


「でしょうね。話を聞いてたらわかったけど、あんたミラスティアのことになると少し違うわね」

「それ、モニカにも同じようなことを言われた」

「……マオ様。自分のことは分からないものですよ」


 な、なにそれ? 


 やっぱり今日は釈然としない。



『今日の授業は中止でーす! 今度皆さんにちゃんと連絡します チカサナ』


 学校に行くと学園の入り口にすごい目立つ形で張り紙があった。す、すごいわかりやすいけどさ。でもすこしほっとした気もする……。


「……とりあえず私はニーナのところに行ってくるわ」

「うん、お願い」


 ラナと別れてモニカと考える。


「マオ様。そういえばあと一人ってどうしましょうか?」

「それはさ。あたしに考えがあるんだよね」

「! 流石マオ様」


 うーん。モニカがぱっと笑顔になったんだけど、正直言ってこの先どんな顔をするのかすごい怖い。まあ、とりあえず授業も休みになったし。考えていたことを先にやってしまおう。


 あたしは訓練場の方に足を運ぶ。モニカもついてくる。


「マオ様、誰と会うんですか?」

「え? い、いいじゃん。わかってからのお楽しみだよ。あたしに任せておいてよ」


 あ、いたいた、ウルバン先生だ。


 相変わらずお年寄りなのに若く見える。


「おお、マオ君。昨日は楽しかったね」

「……」


 そばで剣を杖代わりにして立っているのは黒髪に髪の先が金髪になっている魔族の女の子。要するにフェリシアだ。なんかすごい疲れた顔をしている。前もそうだったけどフェリックスの制服を着ている。


「マオ様?」


 すごく冷たい声が後ろからしたけど、き、気にしてられない。


「ウルバン先生!」

「ん?」


 あたしはウルバン先生にこれからのチカサナの授業の事情を話した。モニカがにこにことすごい圧力をかけてくるし、フェリシアは睨んでくるし。なんかきつい。ウルバン先生はあたしの話を聞き終わっていった。


「なるほど、つまりフェリシアをそれに参加させたいということだね」

「ふん、バカじゃないんですか?」


 ウルバン先生が何か言う前にフェリシアが言った。


「そもそも私は何度も言いますがあなたのことが嫌いですし。そこにいるお友達のモニカさんもあまり乗り気ではないようですよ?」


 ふんと顔を背けるフェリシア。でも、正直ミラに勝つには戦力が欲しい。あたしの知り合いでちゃんと戦えるのはあとはフェリシアくらいしかいない。……いや知り合い自体が少ないんだけどさ、アルフレートとかどう考えても味方にはならないよ。


「そうですよマオ様。フェリシアなんて信用できませんよ」

「モニカ……」


 その言葉にフェリシアも言う。


「ほら、オトモダチもそう言ってますし、あきらめて帰ってください。ただでさえくだらない剣術なんてさせられているんですからね。昨日だってもうほんと……」


 フェリシアは言葉に詰まっている。昨日はほんと死にかけてたもんね。


 でも仕方ないかもしれない。あと一人どうすればいいだろう。そんなことを思っているとウルバン先生がぽんと手を叩いた。


「そうだ。僕が若いころね。剣の修業のために山にこもった時のことなんだけど」


 いきなり何の話?


「寒い冬だったなぁ。滝の前で上半身裸で剣を構えて流れ落ちてくる木の葉や木の枝を切るってやってたんだよね。数日やると結構反射的に剣が使えるようになるんだ。滝ってずっと流れてくるから、いつ何かが落ちてくるかわからないからね」


 あたしは困惑した。なんの話をしているのかわからない。


「う、ウルバン先生、どうしたのさ。なんの話をしているの?」

「え? 何の話って修行の話だよ。……ね。フェリシア」


 びくってフェリシアが下がった。


「なぜ私を呼ぶんですか? 今の頭のおかしい話をしてなんのつもりですか」

「君はマオ君に協力しなさい。マオ君に味方しなかったり、もしくは負けたらさっき言ったことが君の新しい修行だ」

「…………!?」


 フェリシアが無言で絶望した顔をしている。嫌だって言いそうで口をパクパクさせているけど、嫌って言ったらさっきの話をさせられるんだろうか。


「ウルバン先生そ、そんな無理やり」

「いいんだよマオ君。僕はこの子の師匠だからね。これも修行の一環だよ。ね、フェリシア」

「……地獄に落ちろ、くそ人間」

「ほら、マオ君。フェリシアもいいって言っている」


 全然言ってないよね!? 


「マオ様。本当にこんな不良仲間にしていいんですか?」

「モニカって意外と辛辣なところあるよね……」


 でも、フェリシアは強いからってこともあったんだけど……ずっと前から思っていたんだ。何かちゃんと話す機会がないかなって……流石にここまで強制的になるとは思わなかったけどさ。


 と、とりあえずフェリシアに手を差し伸べる。握手を求めたつもりなんだけどさ。じっとフェリシアはあたしの手を見てから言う。


「死ね」


 これは……結構、難しいんじゃないだろうか……。



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