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潜入をしよう!


 ミラに会いたい!


 いろいろとくよくよ考えてたらそう思った。イオスのこともあるし、ミラとは会って話さないといけないのは間違いない。


「よし!」

「っ…!? マオ様? ど、どうしたんですかいきなり」

「ああ、ごめんごめん。考え事をしていたらミラに相談したくなってさ。ミラを探そうかなって」

「こんな夜にですか? ミラ様……そういえばここ数日全然お見かけしませんね。……あの方は貴族ですから……貴族街に住んでおられるのでは?」

「貴族……」


 そういえばそうだ。ミラが偉そうにすることがないから気にしてなかった。貴族街かぁ。そういえば全然行ったことがないや。確か王都の東側で王城もあるってことだ。


「行ってみようかな」

「えええ? マオ様。ミラ様の家ご存じなのですか?」

「いや全然。でもさ有名なんじゃないかな。モニカは帰ってていいよ。はい鍵」


 家の鍵をモニカに渡そうとするとむうって感じの顔をモニカがしている。


「マオ様一人で行かせたら何が起こるかわかりません……私も行きます」


 さ、流石に街中では何も起こさないよ……多分。


「そっか。じゃあとりあえずいこー!」


 何となくぐっと右手を握って空に突き上げてみる。



 貴族街の方に向かう。そういっても初めてだからよくわからない。東の方に行っていたら着くのかなって思った。


「マオ様こっちです」


 実はモニカは行ったことがあるらしい。あたしは彼女の後ろをついていく。あまり遅くなってもラナが心配するかもしれないからさ、少し小走り。夜の街の中を二人で走っていく。


 大きな橋があった。石造りのしっかりした橋だ。貴族街とあたしたちが住んでいる街の境だって。橋にはてっぺんが光っている柱が一定の間隔で立ててある。


「ああ、あれは街灯ですね。魔石をはめ込んで夜でも道を照らすためのものだそうです」


 へえ。そうなんだ。篝火とは違うんだね。でも魔石を使っているってことは結構お金がかかっているんじゃないかな。


 そんなことを思いながら橋を渡り切ると空気が変わった気がした。


 大きなお屋敷が立ち並んでいる。街灯が夜なのに道を明るく照らしている。人通りは少ない。意外と静かだ。


「道を歩いている人にミラの家を聞こうと思ったんだけどな……」

「マオ様って貴族とかに道を聞きそうで怖いですね」


 え? 聞くだけじゃん。あたしがきょとんとしているとモニカが困った顔をする。


「冗談ですよ?」

「何が?」

「え?」

「え?」


 二人で首をかしげる。


「と、とりあえずマオ様少し歩いてみましょう」


 しばらく歩くとなんだか周りの立っている建物が大きくなっていく気がする。見上げるとお城があった。白い大きなお城。人間の王の住む場所かぁ。用事なんてないしこれからもいくことないだろうけど。星空の下にあるお城って結構きれいかもね。


 おっ、人がいる。黒いコートを着た男性だった。赤い髪をしている若い男。なんだかもの思いにふけっているように空を見上げながらゆっくり歩いてる。


 ……いやあれ。アルフレートじゃん。あたしは手を上げて言った。


「こんばんは」

「……き、君ら。な、なんでここに!?」


 アルフレートに挨拶をするとすごいびっくりしてのけぞった。な、なんで? その反応は不自然じゃん!


「なんでって言われても……あ、そうかアルフレートも貴族だったよね」

「そんな風に言われると愉快ではないな」

「……どういえばいいのさ。ま、いいや。ミラ……えっとたしかアイスバーグの家ってこの辺りにあるの?」

「……ミラスティアさんに会いに行くのか? やめておくといい、こんな夜に行っても迷惑だろう」

「そうかもね。だから場所だけ知りたいんだ。またくればいいし」

「……この道をまっすぐ行けばいい。大きな屋敷だからすぐにわかる」


 アルフレートはぶっきらぼうに、でも答えてくれた。あんまりあたしのことを良く思っていないのは分かっているんだけどなぁ。それでも助かったよ!


「そっか! ありがと!」


 あたしはそう笑いかけるとアルフレートは顔をそむけた。怒っているのか少し顔が赤くなっている気がする……。うーん嫌われてるなぁ。あんな感じのことがあったから仕方ないけど。


 モニカはアルフレートをじぃーとみている。そのあとあたしのこともじっと見てくる。


「何? モニカ」

「あ、いえ。なんでも」


 モニカが目を背ける。なんで!? アルフレートがそっぽ向くのはわかるけどモニカがそんな態度を取るのはよくわからない。何かをごまかしているような気がする。


 とりあえずアルフレートの横を通って走る。おっきい屋敷がミラの家。すごくわかりやすい説明だ。そう思って走っていくと。


 でかい。


 おっきな屋敷があった。フェリックス学園の校舎全部くらいの大きさがある。綺麗な装飾の施された鉄の門扉。その向こうに広い庭も見える。入り口には門番……さんかな人が立っている。


「ここかなぁ」

「多分ここですね」


 モニカとあたしは並んで大きさに圧倒された。流石は剣の勇者の子孫っていえばいいのかな。うーん。よく考えずに来たけどここからどうしよう。とりあえず場所は分かったんだから、今日は帰ってもいいかな。


 !


 二階のバルコニーに人影が見えた。綺麗な銀髪。……多分ミラだ。あたしは「おーい」と言おうとしてモニカに後ろから口を押えられた。


「だめですよマオ様。貴族街で大声をだしたら衛兵がやってくることもありますよ」

「んん」


 難しいなぁ……でもどうしようもないかもしれない。


「マオ様。場所もわかりましたし、今日はこれで帰りましょう」

「そうだね」


 そう思った時に物陰から人ができてた。くすんだ金髪のくせ毛をしたフェリックスの制服を着た女の子だ。あたしを見て「きしし」と笑う。その腰には大きなダガーを吊っている。


「マオさんですね。イオス同志のメッセンジャーのキリカといいます。以後お見知りおきを」

「イオス……?」


 あたしはそれを聞いて身構えた。キリカは「きしし」と笑う。どことなく猫っぽい。


「そんなに警戒しないでくださいよ。私は仮面の人とかフェリシアちゃんとは違いますよ。きしし」


 仮面と聞いてモニカもハッとした。キリカはそれをちらっと見て腰のダガーを鞘ごと外す。それを軽く投げてきた。モニカはあわててキャッチする。


「これで丸腰ですよ、きしし。何度も言う通り警戒しないでいいですよ。私はメッセンジャーですから。マオさん……イオス同志からの依頼を受けるなら私にぜひ言ってくださいね。ちゃーんとお伝えしますから」

「イオスの同志ってことは」


 この子も『暁の夜明け』? あたしは聞こうとして口を紡ぐ。モニカがいるからだった。


「マオ様。この人は……?」

「初対面だよ……」


 それだけ答える。


 キリカは言った。


「私たちも急いでいるからですね。マオさんが困ったことがあれば手伝っていいって言われているんですよ。さて、とりあえずマオさんはこの屋敷」


 キリカが指さすのはミラの家。


「ここに住んでいるミラスティア・フォン・アイスバーグと会いたいってことですよね。きしし。もちろん会いに行けますよ。どうぞこちらへ」


 会える!? で、でも怪しい。ついて言ったらまたトラブルに巻き込まれそうだ。モニカもあたしの裾を引っ張ってくる。


「マオ様……」


 キリカは「はーやーくー」とせかしてくる。あたしは少し考える。ミラに会いたい。それは本当だ。……冷静に考えてみればイオスが今あたしに危害をくわえるとは確かに思えない。


 ……ええい! どうにでもなれ。


「モニカ……先に帰っていて」

「マオ様!?」


 ごめんモニカ。あたしが前に進もうとするとぐいっと引っ張られた。モニカが引っ張ってくる。すこしむすっとしている。


「……わかりました。よくわかりませんがここまで来たからには最後まで一緒です。……でもですねマオ様。すぐ私を帰そうとするのはだめです!」

「ご、ごめん」


 勢いに押されて謝ってしまった。キリカは「仲のいいことでぇ」とか言っている。


 そうやってキリカについていく。ミラの屋敷の塀に沿って歩いていく。ふとあるところでキリカは止まった。彼女はきょろきょろあたりを見回した。それからいきなり、


「ていっ」


 塀を蹴飛ばす。するとがらっと蹴っ飛ばした場所が崩れた。人一人入れるくぐれる程度の大きさな穴が開いた。な、な、なにしてんの!? キリカは振り返った。


「さあ、ここから侵入しましょう。きしし」


 そしてポケットから仮面を取り出す。


 彼女は顔の上半分だけを隠すことのできるそれを被ってニヤッと笑った。



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