プロローグ①
「わたしと…付き合ってほしいの!!」
鼻先が触れ合いそうなほどに間近にある彼女の顔。俺は彼女の瞳にすうっと吸い寄せられる。ぱっちりと可愛らしい彼女の瞳。俺の顔を食い入るように見つめる彼女の大きな瞳は、まるで反応を一時たりとも見逃すまいと言わんばかりだった。
西日が射しこむ二人きりの部室で女子からの突然の告白。まさに恋に飢える世の男子が夢に描く展開だ。しかも相手は学校一可愛い女の子とまで噂される石黒花音ときた。聞いた話では一部男子による彼女のファンクラブが存在するとかしないとか。ふわりとした黒髪ボブヘアとぱっちりした綺麗な瞳、そして、あどけなさの残る可愛らしい顔立ち。その上誰に対しても優しくて気さくな性格で、面倒見もいい。彼女とはクラスでも部活でも一緒だけど、こういう場面で改めて顔を合わせると否が応でも異性として意識してしまう。普段は友達として接しているはずの彼女を前に、俺の心臓の鼓動は激しさを増す。そんな高嶺の花が自ら告白してきた。普通の男なら誰であっても二つ返事でイエスと答えるだろう。
「花音さん…。」
俺は揺れる心を鎮めるようにごくりと唾を飲み込む。そして、意を決して答える。
「悪いけど…。付き合うことは、できない。」
申し訳なさでいっぱいで、俺は彼女から目を逸らす。
「…。」
彼女はやりきれなさそうに押し黙る。でも愕然としている感じではなさそうだ。なんだかんだで一年近い付き合いだ。俺の答えを最初から予想していたのかもしれない。
「普通の男なら迷わずイエスと答えるだろう。」それは確かにそうだ。現に俺だって彼女の魅力にときめいていた一人なんだから。でも、だからこそ俺の答えはノー以外に有り得なかった。なぜなら俺は「普通の男」じゃないからだ。
人よりも格段に白い肌、色素の全くない髪、血のように赤い瞳。そう。俺はアルビノだった。




