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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #26
96/155

Part 26-1 Stratagem 謀略

Heckettstown, NJ. 18:55


午後6:55 ニュージャージー州 ハッケツタウン



 陽が落ちてすでに三時間が経とうとしていた。



 道の流れはスムーズだったが、はるかに迂回したせいで到着予定がこれほどずれ込んでしまうとはとアハメド・バーハム少佐は苛ついていた。



 夕刻前にフィラデルフィアを抜け国道を北へ走っている最中だった。かなり先に検問を見つけ即座に車を路肩に寄せた。



 ターンでもしたら目立ち直ぐにパトロールカーが来るのは分かりきっていた。



 車の持ち主である縛られた中年の男をトランクに残し、彼はハサム・サイド中尉とフィラス・アブゥド少尉を引き連れ来た道を一マイルほど歩き戻ると一人が路肩に立ちヒッチハイクのふりをして四台目の車を奪った。



 車は煉瓦色の無駄に大きなピックアップトラックだったので運転していた持ち主を縛り口をガムテープでふさぎ荷台に転がし防水シートを掛けた。



 毎回のように持ち主を殺さず拘束したのは他の者に助け出され警察へ通報されればせっかく足にと奪った車をまた乗り換えなければならなくなるという事情もあったし、いざという時に逃げ延びる為の人質となるからだった。



 車を換えアブゥド少尉がハンドルを握りターンさせニューヨークの西の州ペンシルベニアを大きく迂回しニューヨーク州の北部に入った時にはすでに七時にかかりかけていた。



 雪が降り続けていたが、走れなくなるほどには積もっていなかった。途中、一度もパトロールカーや検問には出合わなかったがそれでも深夜から一日中神経を張りつめているせいで、三人は眼に見えて疲弊していた。



 ハンドルを握りながらフィラス・アブゥド少尉はどの時点で大佐を含め皆を射殺するのか思いあぐねいていた。



 早々とバーハム少佐とサイド中尉を殺してしまうと、サローム大佐を仕損じてしまう。だが自分らが大佐にまた会うという保証はなかった。それに殺さなくても自分らを捜しているアメリカのなにがしかの当局に拘束される様に仕向けるという方法もあった。



 少なくとも数年仲間としてすごしてきた連中だった。偽りであっても幾らかの情は自分の中にあるとアブゥド少尉は思い、殺すなら苦しませずにとピックアップトラックを運転しながら考え続けていた。



 ふと彼は状況をモサド側に報せれば動いてくれるかもしれないと考えた。一旦いったん考えが浮かぶと彼はそれに固執し始めた。



 だがどうやって連絡を取る?



 少佐や中尉と離れる時間はまずない。用をたすと車から離れたとしても、携帯電話を使う目立たぬ距離をおけば時間を数分も使えない事は眼に見えていた。状況を説明し指示を受ける為には最低二、三分は必要だと思った。



 ある事を思いつきアブゥド少尉は眼を大きく見開いた。これならいけるかもしれない。







 彼は右手をハンドルから離すとジャンパーのポケットに入れプリペイド式の携帯電話をマナーモードにセットすると次々と数字のボタンを押し込み始めた。











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