Part 25-4 SEALs LCDR シールズ少佐
1585 Broadway Bld. Midtown Manhattan, NYC 19:50
午後7:50 ニューヨーク市 マンハッタン ミッドタウン 1585ブロードウェイ・ビル
「シールズの将校!」
フローラ・サンドランはビルの腰の高さの縁に立ち近くのビルすべてを頭に叩き込んでいた最中に思わず声に出し眉根を寄せた。だがその声をヘッドギアの首に回すベルトに装着された骨振動マイクが拾いその場にいる五人に送信してしまった事に気がつかずにいた。
「フローラ、どうしました? シールズの将校が何か?」
そう声を掛けながら飛翔装置を背負ったスージー・モネットが近寄ってきた。
「あれの所属していた部隊が分かったわ!」
フローラは無線通話をドク個人に切り替えそう言いながら遥か下に見える道路を行き交う車を見下ろし拳を握りしめていた。
「あれ? 新任チーフの事ですか? 彼女がシールズの将校だとどうして?」
ドクに聞かれフローラはわずかに彼女の方へ顔を振り向けるとはっきりと言い切った。
「自分からアンにシールズの少佐だったと告げたのよ」
「フローラ、盗聴器を仕込んだんですか? でも──変ですよ。新任はどう見ても二十代中ですよ。そんな若さでは少佐にはなれないでしょう」
ドクの声には非難の色はなかった。
「十六歳の時にはもう少佐と呼ばれてたと──」
フローラは言いながらそんなわけがと混乱しかかった。
「矛盾してます。その年齢では少佐どころか、軍にさえ採用されはしないでしょう」
ドクにだめ押しをされ確かにそうなのだとフローラは今一度思い、だから何か──あの簡単に私をねじ伏せた女にはきっと何かあると思っていたのだと納得した。
だけどヘラルドはなぜあいつの素性を私に隠したのだろうと彼女が考えている最中に、輸送機の機外アンテナを介しまだ続く貨物室の音声がやけに騒がしいと思った。
その直後だった。マリーの声がケイスにパティを筐体から出すようにと叫んでいるようにと聞こえた。フローラはその時点でパティの精神リンクが機能していない事に気がつきドクに完全に驚いた顔を振り向けた。
何らかのインシデントが発生しているとフローラは思ったが、マリーにではなく、“もう貴女の副官ではない”と言い切ったルナのコードを早口で告げ自動で無線が繋がり呼び出しコールが相手に伝わるのを待った。
『なんでしょうか、フローラ?』
ルナの返信は素早かった。
「チーフらの様子が変よ! パティの精神アクセスも機能してない!」
ほんのわずかな間がありルナが即断し落ち着いた声で連絡してきた。
『確認します。マリーが指揮続行を出来ない場合、フローラ、貴女がチーフに復帰して下さい』
「分かったわ」
フローラが返事を言い切る前に通信が切れかすかなホワイトノイズが聞こえた直後無線システムが待機に入った。フローラは指揮権が戻る事よりも、初めてパトリシアの身を按じた。少女と知り合い早六年──こんなトラブルは初めてだった。




