Part 25-1 Dive 降下
In the Sky, Long Island Sd 19:30
午後7:30 ロング・アイランド湾上空
貨物室隔壁の表示灯が赤から緑に変わると同時に短いブザーが鳴った。
隔壁に近い右側の席に座っていたクルー・チーフの曹長がベルトを外し立ち上がると壁に下がっていたヘッドセットを取りコクピットからの指示を受けた。
短い連絡の最中彼は腕時計のベルゼを回し降下タイミングを分かる様にし、通話を終わりヘッドセットを戻し振り向くと直前までざわついていた四十名ほどのシールズ兵が皆、まったく音も立てずに彼の方を見ていた。
「大佐、あと十分でDZ(:降下地点)です。DoW-NE・VoW-65ft.(:北東の風、風速18.6m/s)」
曹長は斜向かいに座っているマイク・ガーランド大佐にそう告げると大佐は横のドール・ジョージア中佐に振り向き降下方法の変更を相談した。
「穏やかでないな。HAHO(:高高度降下高高度開傘)だとかなり流される可能性がある」
「そうですねボス。風向きと風速から十分にHALO(:高高度降下低高度開傘)でもいけると思います」
「よし、HALOに変更する」
大佐からそう告げられジョージア中佐は頷くと皆に振り向き大声で指示した。
「降下方法変更! HALO! 開傘高度二千百フィート(:約600m)! 降下準備!」
その直後、全員が一斉に立ち上がると自動開傘の高度設定を変更し各々がヘッドギアを被りそこからゴーグルの前に四眼の暗視装置を下ろし酸素マスクを装着し始めた。
「先鋒はローレンス大尉が行きます。ボスは?」
ジョージア中佐に聞かれマイクは自らのパラシュート・ハーネスとバックルを点検しながら答えた。
「二番手をうけ負う。他の連中に示しがつかんからな」
そうやって貴方はいつだって前線に出たがるとジョージア中佐は苦笑いして左手首のGPSモニターをチェックすると胸のハーネスに装着した電子気圧高度計自動開傘装置の高度を二千百フィートに設定しテストボタンを押し込み与圧されたカーゴルームの地上より二割方高い高度が表示されるのを確認すると酸素マスクを着ける前に大佐に尋ねた。
「ローラさんは、何かつかめたとお思いになりますか?」
「わからん。進展があってくれればそれにより我々の作戦を変えなければならないだろう。降下して半時間以内に連絡がなければ、こちらから問い合わせてみる」
マイクがそう言いマスクで口を被ったのでジョージア中佐も従った。全員を見渡していたクルー・チーフは大佐が彼の方へ右腕を上げ握りしめた拳の親指を立てたので、ヘッドセットを壁から取り操縦室へ減圧を依頼し、直後酸素レギュレターに繋がったマスクを顎の下から引き上げた。
急激に下がり始めた貨物室の空気は同時に気温も下がりうっすらとした靄が広がったがそれも数秒でかき消えた。
降下五分前になり、クルー・チーフは何も告げず貨物室の薄暗い照明灯を赤に切り替えた。その時点で各員はマスクの酸素量を点検しアサルトライフルの安全装着が掛かっている事を再度確認した。
わずかに間をおいて二度目のブザーが鳴り操縦室からの指示ランプが赤から緑に変わったので軍曹はヘッドセットに耳を集中させ、副機長が二分前だと告げたのと同時に自分の腕時計のベルゼのゼロタイミングを今一度確認し、後部貨物扉のダウンボタンを押し込みゆっくりとランプが下がり始めた。
外は上下すら判別出来ない様な漆黒の闇で急激に渦巻く空気がたてる風の金切り声が中に押し寄せた。二列に並んだ四十一名の男達の肩越しに見える地獄の様な闇を見つめながらクルー・チーフの軍曹は彼らが一人も死なない事を願い時間が到達した瞬間に腕を振り上げた。
それを見た瞬間に男達の最後尾にいたジョージア中佐は前にいる二名の肩を両手で叩いた。
それは素早い連鎖となり前へ前へと伝わると最前列の左側に立っていたローレンス大尉は緩やかなランプへ駆け出して闇の中へ飛び出した。
そのヘルメットの後部に付いた赤外線ストロボの明滅を見ながらマイク・ガーランド大佐もコンマ数秒差で闇に飛び込み次々に男達の流れは暗闇に続いた。




