Part 2-1 Hidden Person 潜伏者
Weals, W.Va. 00:05
午前0:05 ウェスト・バージニア州ウィールズ
アメリカ合衆国ワシントン、その南西に数百マイルの長きに渡り連なるアパラチア山脈がある。その山々の西、ウェスト・バージニア州の山麓から数十マイルの所にウィールズという小さな町があった。
“幸福”という名からはほど遠い何の産業もない寂れたその町は人口わずか7千人余り。この小さな町のただ一つ2百ヤードほどの短い目抜通りには深夜になり人通りがなかった。
前日の夕刻から降りだした雪が4インチ(:約10㎝)積もっており通りに残されていた住人らの足跡はすべて被われ青白い地面が広がっていた。
そんな通りの中ほどに近い一角に1軒の自動車修理店があった。ドアのカーテンは閉じられ、通りに面した2つの窓にはブラインドがしっかり下ろされ従業員は不在だった。
そのブラインドがわずかに上下に広がり人の目が覗いた。だがそれもつかの間だった。ブラインドが閉じると窓に動きはなくなった。
部屋の中ではモスグリーンのセーターを着た男が窓から離れると近くのドアへ顔を向けた。そこには壁の前床に片膝をついてドアへ細工をしている別な男がいた。セーターを着た男はその細工をしている男へ声をかけ白い空気が顔の前に広がった。
"حسام ، كم من الوقت سيستغرق؟"
(:ハサム、あとどれくらい掛かる?)
声をかけられた男は振り向きもせずにドアに四個目のスプレー缶ほどの四角い粘土の様な塊を押し付けながら答えた。
"خمس دقائق للذهاب ، الرائد"
(:あと五分です、少佐)
窓の傍から尋ねた男は腕時計を見ると事務所の裏口のドアに同じ様な細工をしている別な男へ声を掛けた。
"فيلاس ، ماذا عنك؟"
(:フィラス、お前は?)
裏口のドア前にしゃがみ込み細工をしている男も振り向きもせずに答えた。
"يمكن تحضير هذا في 3 دقائق"
(:こちらは3分で用意できます)
窓の傍から問いかけたセーター姿の男はアハメド・バーハム──元イラク共和国親衛隊少佐だった。通りに面したドアに細工をしているのがハサム・サイド元中尉。裏口のドアに細工をしているのがフィラス・アブゥド元少尉だった。
三人はアメリカ軍が侵攻した戦争で瓦解したイラク軍の中枢兵士だった。だが所属する軍が無くなっても彼らは階級で呼び合っていた。
三人が中東から遠く離れたアメリカの片田舎の自動車修理店の事務所に潜伏してすでに二週間になろうとしていた。修理店はイスラム教原理主義者の一つの集団シャーリア派がアメリカ国内に有するアジトの一つだった。
الرائد ، هل ستذهب إلى نيويورك في المساء؟
(:少佐、やはり夕刻までにニューヨーク入りを果たすのですか?)
サイド中尉が手を休める事なく上官に尋ねた。
أوه ، لأن هيئة الأركان العامة جاءت في اليوم السابق وأخبرتني أن أكون مستعدا
(:ああ、参謀が前日入りして備えよと言ってきたからな)
لكن العقيد أخبرنا أن نغادر هنا بعد ظهر اليوم قبل مغادرته أمس. ماذا يقول مكتب الاستخبارات؟
(:しかし、大佐は昨日発たれる前に今日の午後にここを発てとおっしゃられたじゃないですか。情報局は何と?)
アブゥド少尉が部屋の反対側から少佐に意見を述べた。
الناس في مكتب الاستخبارات بعيدون ولا يعرفون الوضع الفعلي. النشطاء الذين يأتون إلى هنا يمررون أوامرهم وتقاريرنا فقط. العقيد في نيويورك هو الأكثر وعيا بالوضع الحالي ، لكن العملية نفسها يقودها موظفو فصيل الشريعة ، لذلك يجب تنفيذ الأوامر بدقة
(:情報局の連中は遠方にいて実情は把握出来てない。こちらに来てる工作員もあちらの命令とこちらの報告を中継ぎしてるに過ぎない。現状を一番認識されているのはNYにいる大佐だが、この作戦自体シャーリア派の参謀が采配を振るっているから、命令は厳格に実行しなければならん)
バーハム少佐はテーブルまで歩くとその上に置かれたAK-47自動小銃を黒のコンバットバッグにつめながらそう話した。
كيف تفسر ذلك لأنصار الشريعة؟ ألن يكون الأمر مربكا عندما نذهب في الصباح؟ أم أنهم يتلقون بالفعل تعليمات من هيئة الأركان العامة؟
(:シャーリア派の支援者らにはどう説明するんですか。朝になり我々がいなくなると混乱するのでは? それとも彼らももう参謀から指示を受けているのでしょうか?)
エグレリア中尉がドアに張り付けた粘土状の物の奥に小指の爪ほどの鉄球を次々に埋め込みながら少佐に問うた。
لا يهمنا. إنهم يأتون فقط لتوصيل البقالة والمال والأسلحة وأشياء أخرى. السبب في أن هيئة الأركان العامة لا تبلغ بعضها البعض بكل شيء هو منع العدو من تسريب خططه. كل ما علينا فعله هو التقاط جهاز التحكم عن بعد للتفجير والوصول إلى هدفنا في الوقت المحدد. حتى ذلك الحين ، سيتلقى أوامر من هيئة الأركان العامة ، ولكن طالما أنه يدخل المدينة ، فسوف يتحرك تحت إشراف العقيد
(:そんな事は我々には関係ない。あいつらは食料品や──金や武器など物を届けに来ているに過ぎない。参謀がそれぞれに何もかもを知らせないのは敵に計画が漏れない様にするためだ。我々は途中起爆リモコンを受け取り指定された時間に目標にたどり着けばいいだけだ。それまでは参謀の命令を受けはするが、都市入りさえすればすべて大佐の指示下に動く)
バーハム少佐はテーブルにあった弾倉も全てバックにつめ終わるとファスナーを閉じてもう1度腕時計を見た。現在時0014時、後五分足らずでここを後にする。向かいの連中は慌てふためくだろう。それとも寝ているか? と考え少佐はブラインドを閉じた窓の方へ視線を振り向けた。
通りを隔てて自動車修理店の斜め向かいにあるパン屋の2階の窓にもカーテンが閉じられていた。だがその中央がわずかに開いていた。
その隙間には暗い輝きを抱くビデオカメラのレンズが上下に2つあった。仄暗い部屋にはダークスーツを着た2人の男がパイプ椅子に座っていた。男らは皆スーツの上に濃紺のウインドブレーカーを着ていた。
「連中、こんな夜更けに何を始めたんだ?」
男は呟きじっとモニター画面を見ながらもう一つのモニターを監視する仲間に尋ねた。だが問い掛けた男の見る画面は普通の映像ではなかった。画面の中のあらゆるものが青から緑、緑から赤や白へと寒色系や暖色系の色合いで染まっていた。
通常画像をモニターで見ているもう1人の男が答えた。
「表には変化はないが、主任を起こそう」
そう言って椅子から立ち上がった男は部屋の出入口横の壁際で寝袋に入って仮眠をとる男に声をかけた。
「主任、主任──」
彼は直ぐに目覚め返事をした。
「どうした?」
「連中に動きが」
反射的に寝袋のファスナーを下ろし起き上がりかけ主任と呼ばれた男が尋ねた。
「何時だ?」
「零時10分を回りました」
主任と呼ばれた男は緊急時に備え上衣も着たままだった。その2人の会話に部屋の隅で同じ様に寝ていた別な男も目覚め起き出した。
主任と呼ばれた男は即座に2台のモニターが置かれた窓傍のテーブルの方へ移動し画像を覗き込み超高感度サーモグラフ・ビデオカメラの映像を監視している部下に話しかけた。
「ドアの前にしゃがみこんで何をしてるんだ」
通り越しに冷えきった事務所の外壁を映し出すその画像は輪郭が不鮮明だが白色の人が3人表示されていた。通りに面したドアの裏にしゃがみこむ1人はやや鮮明に映っており、その奥に1人立っている人影があった。さらにはそれよりは通りから離れた場所にもう1人しゃがんでいる人の姿があった。
「分かりません。連中、四時間も動きなしだったのが、起き出して3人ともここ20分ほど動き回っています」
サーモ画像を見ている男が説明した。
「あいつら店仕舞いをするのかもしれんな」
腕組みをしモニターを見つめる主任と言われている男が指摘した。男はFBIウェスト・バージニア支局の捜査主任ビル・バクストンだった。彼ら連邦捜査局捜査官達はパン屋の店主から店の2階を借り上げて12日が過ぎていた。
中東から偽造パスポートでアメリカ国内の様々な空港から入国した男らがFBIの眼に止まったのは2週間前だった。当初、4人は各地の別々の支局の追跡班にマークされていた。
偽造パスポートを使用し中東から入国したので国際的な麻薬組織の運び屋だと思われていた。だが不法入国者4人を別々に見張っていた追跡班が12日前にこのウィールという小さな町に集まる事となり捜査はウェスト・バージニア捜査局の手に引き継がれた。
何らかの麻薬組織と繋がりがあると思われていた中東の男らがいきなり田舎町で何を始めたのか。
「いつも訪ねて来ていた男女は来ていませんし、動きはないのでは」
事務所を根城にする4人を日頃から訪ねて来た者達は数人いた。いずれも中東人の様な膚の色、もしくは容姿をしていた。訪ねて来た者達は食事や荷物の持ち込みこそしたが、事務所からは何も持ち出していなかった。
「やはり麻薬関連ではなくテロの準備に来たのではないでしょうか?」
サーモグラフィではなく通常カメラのモニターの監視に戻ったもう1人の部下が尋ねるとバクストン主任は言い切った。
「入国してどこにも寄らず、ここに集まり1人を除き今まで目だった動きがなかった以上、連中がテロ目的で潜伏している可能性が高くなった。麻薬ディーラーや運び屋じゃない」
バクストンが部下達に意見を示した直後彼の携帯電話がバイブレータを鳴らしだした。バクストンはセリー(/Celly:携帯電話の俗称)を取りだしその液晶画面を確めると通話した。
「バクストンだ」
彼は15秒ほど報告を受けていた。
「NYでこんな夜更けにか──その単独行動を続ける男の近辺に近づいた尾行者にも用心しろ」
主任は通話を切ると携帯を上着に戻し部下達に報告されてきた情報を共有し始めた。
「昨日早朝、事務所を後にした男がNYにいる。うちの者以外に数人の尾行者がいるらしい」
「どこの局でしょうか? OGA(/Other Guy Agency:CIAの俗称)の連中でしょうか? あいつらが尾行を露呈させるなんて。それにNYとはまた遠いですね。テロの準備でここに潜伏しているにしても離れ過ぎてやしませんかね」
バクストンの前でモニターを見ながら部下が彼に意見を述べた。だが9.11同時多発テロの実行犯らもD.C.やNYから離れた州で準備していた。
「分からんが、確かにOGAかもしらん。何にしてもこの4人がどこに繋がりがあるか、じき分かるだろう」
「主任、ちょっと──」
サーモグラフ・モニターの前に陣取っている部下がバクストンに呼びかけた。それに応じて彼はサーモ画像を覗き込んだ。
「連中を急に確認出来なくなりました」
バクストンが熱線映像の画面を見つめると先ほどまで映っていた人形のハレーションが3つ共に無くなっていた。
「裏口ドアをモニターしていた記録を五分前から呼び出せ」
バクストンがそう指示すると部下が小型のコンソールを操り始めた。通常カメラのモニターが裏口に切り替わり、それが巻き戻され始めると画面右下に映し出された秒までの時間表示が高速で逆算し出した。わずか10秒足らずで5分間の時間を遡ったドア外の映像を見つめてバクストンは唸った。ドアは1度も開きはしなかった。
「何かがおかしい」
言い切った彼は監視していた3人をどうするか選択を迫られた。このまま監視を続けるか、身柄拘束に打ってでるか。だが四人には偽造パスポートによる不法入国という入管法でしか問えない罪でしか検挙できなくなり、結果法執行による国外への強制送還だけになってしまう。
「サーモの方に変化は?」
「ありません。熱線を全く捉えられなくなって間もなく4分が経過」
バクストンは腕組みをし通常とサーモの両画面を交互に見つめた。彼に嫌な予感がささやき続け10秒足らずで決断に至った。
「連中を拘束しよう」
突如下された主任の命令に部下達はパイプ椅子から立ち上がり背後のテーブルから濃紺のキャップを取りかぶると部屋の隅へ次々に移動した。そこにある洋服掛けに吊るされたMP5SD5短機関銃に各人が手を伸ばし各々がコッキングレバーを引き右指を放した。弾く様な金属音が響き合いそれぞれの銃に初弾が装填されると1人の部下がドアを開き暗かった部屋に出口の庇に下がった電灯の光が射し込んだ。外に出てゆく彼らのウインドブレーカーの背には白文字でFBIと大きく表示されていた。
部下達が外階段を駆け降りるとバクストンは最後に階段を降った。彼は足を繰り出しながら応援を呼ぶべきか苦慮した。見張っていた3人が武装抵抗を見せればこちらは4人しかいない。制圧は難しくなる。彼は表通りに建物を回り込みながらセリーを取り出すと本部長へ連絡を入れ事態を説明した。支部からヘリで6人を至急支援に出すと言われバクストンはセリーを戻しながら強行制圧する気持ちを固めた。
彼が自動車修理店の事務所前に辿り着くと、部下の1人が短機関銃をスリングで肩に下げ、ドアの鍵を解錠しようとピッキングツールを使っていた。
その後にもう1人が中腰で銃を構え、ドアの左右に部下1人と主任が待ち構えた。バクストンはドア傍の壁に寄り添うように地面に片膝をついてしゃがみ込みMP5の銃握とトリガーガード先の短いバレルガードを握り締めていた。寒さの中にも関わらず彼は額にうっすらと汗を滲ませていた。
ドアのロックがカチリと微かな音を漏らし、鍵を解錠していた部下はすぐ様道具をブレーカーのポケットに仕舞うと短機関銃を右手で構え左手をドアノブに掛け主任の方を見た。
4人がバレルガードの先端に付けたフラッシュライトを灯した瞬間、バクストンが1度頷くとドアの前にいる部下がノブをゆっくりと回した。そのわずかな間にバクストンの脳裏に嫌な感触が走った。だが彼は“強行”の言葉に固執しそして彼の目前でドアが指の厚みほどに引き開けられた。
バクストンは刹那何が起きたか理解出来なかった。目の前に火焔が広がり凄まじい衝撃と共にドアが無くなると同時に部下二人が吹き飛ばされた。
ドアの正面にいた2人だけでなく衝撃に左右のバクストンと反対にいた部下もなぎ倒された。地面に叩きつけられた瞬間にバクストンはトラップの1文字を思い出したが、帽子を吹き飛ばされ雪の中に投げ出された彼は柔らかい雪の下の地面に強かに後頭部を打ちつけた。バクストンは合成爆薬が爆発した時特有のすえた臭いを感じながら意識を失った。
酷い頭痛と腹部の痛みと共に彼は気を取り戻した。徐々に耳に戻って来たのは近付く緊急車両が出す鋭い断続的な警報音だった。
痛みに抗いながらも瞼をわずかに開くと青や赤色のフラッシュが網膜に飛び込んで来て彼は途端に眼を閉じた。
瞼の裏を駆け回る光の残視に目眩を感じながら、傍に緊急車輌が停まっているんだとぼんやりした頭で意識した。
そうだ。部下達は──2人は即死だっただろう。1人は何とか助かってくれたか? 彼は殉職した部下達の名を思い出そうとしたが、朦朧とする意識の中に埋もれてしまった。
痛む腹に右腕を動かし指先でまさぐると左最下部の肋骨の下に折れた角材が突き刺さっていた。吹き飛んだドアの枠材かと考えが浮かび直ぐ様それが監視対象の3人の顔にすり変わった。
あの爆発で狭い事務所にいればひとたまりもない。こんな場所で無駄死にするような事はしないだろう。どうやって抜け出した? 誰かの呼び掛けに彼はわずかに瞼を開き視線を向けると2人の救急隊員が覗き込むのを眼にしてビル・バクストンはまた意識を失った。
爆発の起きた自動車修理店から100ヤードほど離れた通りの中ほどにある駐車場前にあるマンホールの蓋が突然動いた。出来た隙間から黒い革手袋を着けた指が出てくるとそれが蓋をさらに動かした。完全に開き切るとすぐに2つの黒のコンバットバッグが暗がりの道に放り出された。
直後それを追うように1人の男が這い上がって来た。ハサム・サイド中尉は自分達の居た事務所へ振り向くと屋根から白煙が上がっているのがわずかな炎に浮かび上がっていた。
共同坑を通って来るときに彼は爆発の衝撃を微かに感じた。
監視者らはやはり直ぐに踏み込んで来たのだろうと思いながら彼は目を細めホールから出てくる少佐に手を貸した。彼ら3人のイラク軍共和国親衛隊の元軍人達はそれぞれが1度事務所の方へ顔を回らし追っ手のいないことを確認した。そして男らは慌てる素振りもなくマンホールの蓋を閉じるとバッグをつかみ上げ雪跡を蹴散らしながら駐車場へ向かって歩き出した。
駐車場にはポツンと1台の茶色い車が駐車していた。その中古のフォード・ハッチバック車に彼らが近付くのは初めてだった。だが支援者から耳にしていた車がそれだと少佐は確信するとジャンパーのポケットからキーを取りだしフィラス・アブゥド少尉にそれを無言で渡した。その時だった彼らの渡ってきた道を一台の消防車が電子サイレンを鳴らしながら駆け抜けて行った。3人とも振り向きもしなかった。
彼らは車に乗り込むとアブゥド少尉が直ぐにエンジンを掛けた。重く回るセルモーターに冷えたエンジンはなかなか掛からず初め幾分機嫌悪くアイドルしていた。
水温計の針がわずかに動くと少尉は車を駐車場からゆっくりと出した。車は古いのにタイアは新品のスタッドレスだった。それでもスリップ気味になんとか出入り口を出るときブアメディンド少佐は曇った助手席の窓ガラスを手で拭き視界を確保した。
通りには他に車はおらず、尾行が無いことを確認すると彼はプリペイドの携帯電話を上着から取り出した。そしてボタンを素早く押し込んでゆくとそれを耳に押し当てた。深夜だというのに直ぐに繋がり相手が出た。
العقيد سالومي ، هذا برهام. لقد تلقيت تعليمات من ضابط الأركان ، ومن الآن فصاعدًا سأهدف إلى نيويورك من ويل. نظرًا لأنه يتجاوز واشنطن ، لا يمكن الوصول بحلول غروب الشمس حتى لو كان في عجلة من أمرك. سأتصل بك مرة أخرى عندما أقترب من المدينة. أي تعليمات؟
(:サローム大佐、バーハムです。参謀から指示がありこれよりウィールからNYを目指します。ワシントンを迂回するので急いでも日没までに到着は出来ません。都市に近付いたら再度連絡をします。何かご指示は?)
大佐から追加の指示は現状なしと告げられ、道中気をつけるように言われるとアハメドは大佐が通話を切るのを待ち終了ボタンを押し、この後の行程を考え始めた。
支援者が用意してくれたこの車も万が一の追跡をまく為に捨てる手筈だった。代わりの足は既に決まっていた。奪い取る車など数え切れないほどそこら辺を走っている。検問や尾行をかい潜り起爆リモコンが渡される場所へ北上しなければならない。
まず目指すはニューヨークの西にあるペンシルベニア州。東海岸や首都を避け一旦内陸を迂回する予定だった。雪のちらつき出した中、テロリスト達の車はごとごとと田舎道を北へ向かった。