Part 24-4 Thoughtfulness 心遣い
Paine Webber Bld. Midtown Manhattan, NYC 19:35
午後7:35 ニューヨーク市 マンハッタン ミッドタウン ペイネ・ウェーバー・ビル
ルナ達が下ろされたメットライフ・ビルからそのまま四ブロックの西にタイムズ・スクウェアがある。
そのすぐ近くの1585ブロードウェイ・ビルにフローラ・サンドランは下り立ち、離れて行く戦術対地攻撃輸送機のランプを見送り彼女は振り向いた。
スージー・モネットとポーラ・ケース、デイビッド・ムーアにアニー・クロウ、それにリー・クムの六人で四人のテロリストのうち一人から核爆弾のリモートコントローラーである赤い携帯電話を奪わなくてはならなかった。
輸送機が十分に離れるとフローラはヘッドギアのフェイスカバーを引き上げ皆に声を掛けた。
「皆、集まって」
即座に五人の指揮下の者達がそれぞれフェイスガードを引き上げながら集まって来た。
「あなた達が、新任のマリーをどうとらえて受け止めているのか、それは構わない。ボス(ヘラルド)が決めた事に私は歯向かいたくないから」
フローラはそう言い皆を見回した。
「ただ、危険を押してまで身を守るなと私は命じない。もしもの時はテロリストを撃ち殺してでもコントローラーを奪い取る。それが指揮官で“あった”私が最後に命じる唯一の指示です」
皆の瞳を見ればすでにマリア・ガーランドへとシフトしているのが分かりきっていた。それほどにあの女は数時間で皆の心をわしづかみにしてしまったのだ。ただ、皆があから様に反論して来ないのがせめてもの救いだとフローラは思った。
「みんな──生きて帰りましょう。準備に掛かる!」
各々が離れ火器や爆薬を準備し始めた傍らチーム唯一のドクターであるスージー・モネットだけが残りフローラへ話し掛けた。
「チーフ、貴女がM・Gを受け入れきらないのは純粋な戦術上の立場の相違ではないのですね」
まだチーフと呼んでくれるスージーから視線を逸らしフローラは屋上に吹き付ける雪の渦を見つめながら答えた。
「言わないでドク。私は、まだあの女を肯定してはいないだけだから」
「“だと”しておきましょう。でも安定剤でよろしければ処方しますよ」
フローラは心の内を隠しきれないチームの古参に苦笑いを浮かべた。
「私の特効薬は、あの女──“得体の知れない”マリア・ガーランドが取り返しのつかない失態をやらかし、私に“すがる”事だけだわ」
本意の一部でも旧友に話す事で幾らかは心が楽になり、フローラはドクがそう仕向けたのだと気がついて彼女へ視線を向けた。
「いけませんね、チーフ。そうやって貴女はまた自分から袋小路に身をおく。逃げ道はいつも用意しておくものです。それは恥ずかしい事ではないのですから」
「ありがとう、スージー。貴女からの手向けとならないようにするわ」
言い切りフローラは大腿部のホルスターからP90を引き抜くと勢いよくチャージング・ハンドルを引き離しチェンバー(:薬室)に高速弾を装填し右手の短機関銃を見つめた。
もしも、あの女が混戦のフィールドに同じくして立つなら、私はあいつの頭をどさくさに紛れ撃ち抜くかもしれない。その確信に触れながら、フローラ・サンドランは打ち消す様に武器をホルスターに戻した。




