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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
★Chapter 1
8/155

Part 1-6 Snap Judgement 即断

CIA HQ McLean, Va. 15:30 Nov.15th

11月15日午後3:30 バージニア州マクリーン中央情報局本部



 受話器を置いたままハンズフリーで話を聞きながら彼女はウクライナの情勢不安定要因のリポートに目を通していた。



 書類には再三職員を派遣して工作を行う是非を詠ってある。それでいて合衆国が手を下したリスクにわずかしか触れていない事が気になりながら、パメラ・ランディはスピーカーから聞こえる外事監視課のフランク・エフロンの話に少し興味をもちだした。



『──によって今朝、戦略原潜から搬出はんしゅつされた弾道ミサイルの最新型SS-N-32 Bulava(/ブラヴァ)の弾頭搬送を監視していたんだ』



「フランク、その輸送プランは軍上層部以外に誰が関わっているの?」



『我が国との交渉に関わったイーゴリ・セルネゲネフ外務大臣クラスより上の者なら誰でも情報へ介入できる。だが余剰弾頭の解体指示はフレチネフ大統領が出し軍部上層部の者、末端なら現場で解体にあたった作業者、輸送にあたる要員も含まれる』



 パメラはすぐにセルネゲネフというその政治局員を思いだした。



 ハンガリーからWP(:ワルシャワ条約機構)創設前の1950年にロシアへ移り住み共産党へ入党するなり父親の財力にものをいわせ短期間に頭角をあらわした男だ。父親はウクライナで武器商人として莫大な財を築いていたはず。



 共産党での地位と財がありながら危険な博打に打ってでるとは考えにくい愛国者だと彼女は思った。だが裏で父親の生業を今も引き継いでいるのなら解体廃棄される核弾頭の一つや二つ欲しても不思議ではない。



「襲撃が間違いないと断を下せる素因は?」



『搬送経路で車列が停車後再出発したさいに確認できた死体の数が7体。どう考えても事故じゃない』



 その声の感じからフランクが答えを急いでいるのがパメラにはわかった。だが奪われたのは核弾頭1つや2つではない。事態は大変な状態なのだ。判断を誤れば取り返しのつかない結果へと終結する。



 搬送していたのは軍人、当然軍服を着ていたはずだわと彼女は考え、襲撃されてその警護兵なり運転兵たちの死体を隠しもしなかったという事はその略奪した核弾頭をどこへどのように──迅速じんそく──に運ぶかは入念に練られ騒ぎになるのもいとわないということとパメラは判断した。



 外務省ルートを通じてロシア国内へ手をまわしても後手にまわるのは目に見えていた。ましてや我が国の軍事偵察衛星の軌道を推し測れる情報を与えるべきではないが──。



「よく聞きなさいフランク。オフレコではないからメモを取ってかまわない。用意は?」



 短い返事が聞こえ生唾を呑む音まで伝わってきた。



「今から伝える国もしくは国を跨ぐすべての武器商人をマーク。エストニア、ラトビア、ベラルーシ、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、モンゴル」



『そんなにか?』



「ええ、そうよ。ただし、最後の5つの国に運び込まれるとは地理的に考えにくいわ。ロシアとの関係がこじれ国境警備を重点化している中国もなし。それに核弾頭などといった大商おおあきないをやれる既存きぞんの闇商人カルテルはそれほどない。10もないはずよ。さらに────」



『まだあるのか、パメラ?』



「ええ、もっとも考えられるケースはカスピ海を介しイランへ運び込まれるとは考えられない?」



『冗談じゃないぞ。そんな事になったら奪回は不可能になる』



「カスピ海を渡る怪しい貨物船は大使館を通じアゼルバイジャンに依頼して臨検してもらいましょう。弾頭の大きさと量から小型の船舶は使えない。ただし、もしもの場合に備え24/7(/Twenty-four Seven:二十四時間で日を欠かさず続ける意)で対戦車ミサイルを6発装備できる無人機(UAV)をカスピ海上空に2機以上待機させ、先に伝えた7カ国へもUAVもしくはNATO軍の攻撃機を緊急手配できるように。でも原則として武器商人が核弾頭を扱うと断定できた時点で、できうる限り特殊作戦部隊(SOF)強襲(DA)を行い核弾頭を奪回させましょう」



『ダメなら核弾頭を空爆するのか? 起爆したら大変な事になるぞ』



「心配いらないわ。ブラヴァの分離弾頭は外因的要因での起爆は数100万分の1だからミサイルが直撃してもバラバラになるだけだと、上司に助言しなさい。ロシアの外に出してはダメだと念押ししなさい。回収は不可能になりいずれ第3国で数発が使われてしまうと恫喝どうかつしてかまわない。上の連中に危機感を持たせるの。それだけの量を強奪されたのよ。最悪、我が国が破壊しないとどこかの国で近いうちに何百万人もの市民が犠牲になるわ。あなたはその事を一生後悔したいの?」



 一瞬の沈黙がありアナリストは受け入れた。



『分かった。ありがとうパメラ』



「いいえ、ミュンヘンの件では貴方に世話になったから構わないわ。それよりも進捗を知らせて。とても気になる事案だから」



 旧知の仲である男が通話を切るとパメラは自分も電話機のボタンに手を伸ばし通話を切りその指を外線ボタンの上にさ迷わせながらじっと見つめた。



「我が国に関わってくる可能性が万分の一でもあるのなら──」



 そうつぶやいたパメラ・ランディは外線ボタンを軽く押し続いて空で覚えている通称N.S.A.──国家安全保障局の代表番号を打ち込み呼び出しが鳴るともう一度(つぶや)いた。







「──義務を果たさなくては」











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