Part 21-1 Patrisia パトリシア
St. Mary Hospital Midtown NYC, NY 19:25
7:25 ニューヨーク州 ニューヨーク市 ミッドタウン 聖マリア病院
銃口を向けられて、シリウス・ランディは落としかけた男が何を根拠に正反対へ考えを振ったのか知らなくてはと考え、急場凌ぎの笑顔を浮かべた。
「あらっ、ニコル。何なの? 何を言ってるの?」
顔色一つ変えずにニコル・アルタウスは冷やかな目つきで女の額を狙い続けた。
「シリウス、君は明るい廊下からこの暗がりに入って来ながら、手元も見ずにアサルトライフルのセーフティを掛けた。それも共産圏の“もの”をだ」
指摘され彼女はニコルという男が侮れないと内心警戒を強め演技を続けた。
「なんだ。そんな事で変に勘ぐってるの? 私、日頃から仕事のストレス発散にレンジに通ってるのよ。毎回違う色んな銃を使わせてもらってるから、指が覚えてたのね」
これで考え直してくれればとシリウスは思いながら、さらに畳み込む為の言い分けを瞬時に半ダースほど思い浮かべた。だが彼の二つ目の指摘に困窮した。
「なぜ額にマズルを向けられ顔色一つ変えない?」
シリウスはなら小娘の様にきゃーきゃー騒ぎ立てれば信じてくれるのかと考えプライドが許さなかった。認め下すのは代案を使うだけだ。
「だって、あなたが私を撃つなんて全然思ってもいないわ」
そう言って彼女は撃てるものなら素手で微笑む私を撃ってごらんなさいと内心思いニコルに笑顔をみせた。その直後彼が眉根を寄せ視線を逸らした。それを眼にし“しめた”とシリウスは思った。
「君の事は保留にする。核爆弾テロが片付いたら精査するぞ」
そう言ってニコルはスーツの内側にピストレーゼを戻し腰のホルスターに差し入れその手で胸の内ポケットからセリー(/Celly:携帯電話の俗語)を取り出した。シリウスはどうするのかと見ていると、ニコルは彼女から視線を外さずにセリーを操作しどこかに繋ぎシリウスはニコルが何を言い出すのかじっと待った。
「──作戦中だがパティへ繋いで欲しい──パティ、ミュウ・エンメ・サロームを見つけた。場所はミッドタウンにある聖マリア病院の集中治療室。だが意識を失っている。いつもの様にスキャン出来るだろうか?」
パティ? 女の子?
いいや成人した女性かも知れないと彼女は思いながら、スキャン? MRIの? とシリウスは医療用磁気共鳴断層撮影機を想像し、それならそのパティとう女がここに来て勝手に医療行為をやるのだろうかとわけが分からなくなった。
「──ああ、そうだ。核爆弾の場所が分かったら、サブチーフと私に──頼んだよ」
「どうするのニコル? 病院の人が警察を呼んだらたぶん私もあなたもこいつらに怪我を負わせているから署に連れて行かれて爆弾探しなんてやってられなくなるわよ」
シリウスは微笑むのを止めて真剣な面持ちで彼に尋ねた。
「大丈夫だ。今、調べている」
調べるも何も肝心の女の子が意識を失ったままここにいるじゃないかとシリウスが思った直後、眠ったままのミュウがぼそりと呟いた。
「あなた──誰? ──パトリシア?」
シリウスは眼を丸くして少女の顔を見下ろした。




