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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #14
55/155

Part 14-2 Interrogation 尋問

Safe House of CIA Midtown Manhattan, NYC 12:30


午後0:30 ニューヨーク市 マンハッタン ミッドタウン CIA工作拠点



 多量の水を頭から浴びせられマホバ・シンジャール中尉は混乱しながら眼を覚ました。だが目の前の周囲は霞がかった様に不鮮明で、酷く息も吸い辛かった。



 沢山の微かな明かりから彼は自分が麻布の袋の様なものを被せられている事を理解した。はっきりと意識が戻り掛かると、とたんに彼は左腰と右太ももに激痛を感じ、自分が車の中で撃たれた事を思い出した。その時いきなり頭を左に引っ張られ耳元でささやかれた。



「お休みのところを起こしてしまったかしら? 英語分かる? アラビア語の方がよろしい? それともペルシャ語?」



 女の声を反芻はんすうしながらシンジャール中尉は自分が何かに座らされ、その背もたれ越しに後ろ手にされている事に気が付いた。足を動かそうともしたが、両方共に自由が利かなかった。ここは警察なのか? 彼がそう思った矢先に今度は逆側に頭を引っ張られ怒鳴られた。



"I say, Do you speak sligtly English !?"(:英語が分かるのかと訊いているの!)





"Shit, You're bitch !"(:ふんっ、くそあま!)





 シンジャール中尉は口汚く英語で罵った。その途端に首が横に折れるのではないかというぐらいに頭を押さえ込まれ彼はうめいた。



"I Understood. Then we will speak English."(:分かったわ。じゃあ、英語でいきましょう)




 また静かに囁かれたが彼はこの手荒い女が警察官だとは思えなかった。



「私が聞きたい事が分かるかしら?」



 女が尋ねながら頭を押さえつけていた手が離されシンジャール中尉は頭を戻した。



「分かるわけないだろ。このくそったれが!」



 言った瞬間、彼は布越しに頬へ何か平たいものを押し当てられそこへ意識が集まった。それはひんやりとしている指の太さほどの幅をした平たい何かの様な気がした。



「チェチェン・スタイル──御存知?」



 チェチェン? グルジアの北の何処かに確かそんな地名がとシンジャール中尉は思い出したが女に併せるつもりは毛頭なく彼は黙っていた。



「まず、片耳を切り落とす。そうして──」



 女がその平たいものを左耳にあてがい擦り動かした。



「残りの一つを切り落とす」



 言いながら女は左耳に押し当ていたものを後頭部を走らせ右耳に押し当てた。



「まだ死なせない。あなたは強情を貫く」



 そう女が耳元で囁くと布越しにその平たいものを頬の上を滑らせ鼻の横に押し当てた。



「だから鼻も失う。それでもあなたは忠誠を守ろうと口を閉じてる」



 女がその平たいものを小鼻をかする様に上唇に滑らせた。シンジャール中尉は最早その押し当てられているものが刃物以外の何物でもないと確信して生唾を呑み込んだ。



「だから、あなたはもう、どんな女の柔肌も唇で味わえない」



 女はそう言いながら切っ先を立てその尖った先端を口角から頬へ滑らせ右頬で円を描き始めた。



歯茎はぐきのすぐ上に“これ”を差し込まれ頬の下で泳がせたら初めてあなたは後悔し始めるの」



 この女は警察官なんかじゃない!

 本気で生きたまま生皮を剥ぐつもりだ!


 シンジャール中尉はくくりつけられた両手両足を強ばらせ頬の上で走っている刃から逃れようとした。



「だけど私は満足しない。右頬を切り開いたら次に──」



 刃物の先が鼻の下を滑り左頬へ移動してゆく。



「左にも新しい口を作ってあげるの」



 いきなり麻布の袋を剥ぎ取られモハメドは顔に向けられた照明に眼を細め混乱した。その明かりが突然消され見下ろす女を仰ぎ見た。女がいくつぐらいで、眼や髪の色はといった些細な事は意識の隅にも浮かび上がらなかった。女は唇で微笑んでいるのにその双眼は凍りつきそうな輝きを放っている。彼のその視界に細身のナイフが現れ、それでも彼は女の眼から視線を外せなかった。



"Ruis ! Hold him down !"(:ルイス! こいつを押さえつけなさい!)









 マホバ・シンジャールは行き着く先を受け入れられずに息を吸い込みながら悲鳴をあげた。











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