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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #11
43/155

Part 11-3 Regret 後悔

Midtown Manhattan, NYC 17:45

午後5:45 ニューヨーク市 マンハッタン・ミッドタウン



 混乱、恐怖、波打つ様に押し寄せる幾つもの苦痛──ミュウ・エンメ・サロームは自分がどこにいてどうなっているのか理解出来ずにいた。



 私はどうなっているの────?



 混沌とした意識の中で一瞬心が集中した。



 傍に誰かいる。誰なの? 何をしているの?



 彼女は無意識に日頃抑制していた力を解放し、潜り込めた相手は懸命に救急処置を意識していた。



 ストレッチャーのベルトが胸部を圧迫し過ぎて器官挿入の邪魔になる。この揺れでベルトを弛めても大丈夫か?



 器管挿入? ストレッチャー?



 ミュウはどれが相手の意識なのか、何が自分の思考なのか判別出来ずにいた。



 意識の混濁は続き、呼び掛けには反応がない。光による瞳孔収縮がなく、頭骨内に出血による圧迫の可能性がある。その事を救急救命室(E R)に連絡しなければ。急がないと車両の救命処置だけでは限界だ。



 反応? 車両? 頭骨? 出血?



 ミュウは段々と触れている意識が恐ろしくなり、それを手放した。その途端に不安が膨れ上がり、彼女は最も頼りにしている肉親を意識した。



 ヤコブ──父はバクダッドで起きた爆弾テロに巻き込まれ即死だった。



 ユリア──母は私をお腹に宿していた頃、勤めていた研究所が漏らした放射線に被曝し、早産で出産した後に急速な癌で命を落とした。



 私を、私を育ててくれたイズゥ叔父さん!



 ミュウは凄まじい思念が何を引き起こすかまったく予想していなかった。9百万余りの人々を一瞬で識別すると昼に軽く触れた思考を1発で見つけ出した。その叔父はとても困惑していた。



 撃ち損じた。追跡者らの中に魔女(サーヒラ)がいる。あれは間違いなく魔女(サーヒラ)だ。気を失ったわけではない。それなのに、確実に敵を照準(エイム)していたのに、右腕があれに操られ狙いが外れた。



 イズゥ叔父さんが誰かを殺そうとした?



 何をやってるの?



 サーヒラ────魔女?



 このままでは魔女(サーヒラ)に邪魔され続ける。灼熱の壷を起爆出来なくなる。他の3人にも魔女(サーヒラ)の手は伸びているのだろうか?



 叔父さんが混乱してる。



 何があったの? 何に巻き込まれたの?



 灼熱の壺? 起爆?



 NY全てを核の焔で焼きつくす目前にとんでもないものに眼をつけられた。ミュウを巻き込んだ事が無駄になる。全てが無駄に────。





 私を巻き込んだ!?





 核の焔!?







 NYを焼きつくす!?







 わたしがはこんだのは(・・・・・・)────かくばくだん!







 つながりあった幾つもの意識が導いた深淵の奈落。ミュウはとんでもない事をしてしまったと嵐の様な感情に激しく揺さぶられた。その刹那、激情に彼女と叔父を結ぶ異空間の糸が弾け切れた。



 どうしよう!?



 私はなんという事をしてしまったのだろう。知らなかったからと許される事ではない。イズゥ叔父さんはどうして私にあんな事をさせたの!?



 どうしよう!?



 この身体中を襲っている激痛は、私が犯した大罪に対する天の懲罰。この胸の苦しみに張り裂けそう。私は────わたしなんか──生きてる資格なんて────無い!!!





 セント・マリア・ホスピタルの緊急外来通路をストレッチャーで運ばれるミュウ・エンメ・サロームは激しい全身痙攣にみまわれた直後、心臓が鼓動を刻む事を止めた。











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