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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #3
16/155

Part 3-4 קמטים בין הגבות 眉間の皺(しわ)

19:05, 21 בנובמבר, מערב אסיה, מערב ישראל, מחוז ירושלים, מטה המוסד

11月21日午後7:05西アジア西部イスラエル エルサレム地区モサド本部



"Albay Holloy! naber. Yeğeninin doğum günü hediyesini beğenmedin mi?"

(:ホロゥイ大佐! どうした。姪の誕生日プレゼントが気に入らなかったか)



 カーキ色の軍服を着たスルムス・ワウリンカは声を小さくして受話器の通話口を引寄せた。



"──Oh evet. Fazla mesai yapıyorum. Sana hizmet etmek için beynim yıkandı. Albayın aksine, birbirini izleyen nesillerimiz uzun zaman önce insanları insan olarak düşünmediler. Aniden beni aradığında ne oldu? ──Bunun acil bir mesele olduğunu düşünmüyorum. Lütfen dur. eve gidemem."

(:──ああ、そうだ。残業してるんだ。サービスしろって洗脳されてるんだ。大佐のとこと違ってうちの歴代は昔から人を人と思ってないからな。急に電話してくるとは何があった?──火急な話しじゃないだろうな。やめてくれよ。帰れなくなる)



 言い終ると短い間彼は耳を傾けた。



"Yanan bir kavanoz mu? biraz bekle..."

(:灼熱の壷だと。ちょっと待て──)



 スルムスは電話を保留にすると席から腰を上げ隣のブースでパソコンを操作しているムーア・カサスベに声をかけた。





מור, חפש את הסיר הבוער.

(:ムーア、灼熱の壷を検索してくれ)





סולמס. שמעתי על זה. איך הגעת לנושא?

(:スルムス。それ聞いたことあります。話題に登った経緯は?)



 立ち上がったムーアはブースの仕切り越しにセミロングの栗毛を揺らし身を乗り出さんばかりに上官に食いついた。



נראה כי כוחות ארה"ב וטורקים לא הצליחו לתפוס את ראש הנפץ הגרעיני של ה-SS-N-32 שדלף מרוסיה לפני חמישה ימים. זה מארגון הביון הלאומי הטורקי.

(:ロシアから流出したSS-N-32の分離弾頭を5日前にアメリカ軍とトルコ軍が奪還しそびれたらしい。MIT(:トルコ国家情報機構)からだ)



הכד הבוער היה בדיווח אליו פנה מרגל החוץ שלנו.

(:うちの外務部の潜入資産が連絡してきた報告書の中にありました)



איך קוראים לבחור הזה?

(:そいつの名は?)



 ムーアは一瞬、間をおいて名と最後の経歴を思い出した。



פיראס עבד - סגן שני של המשמר הרפובליקאי העיראקי

(:フィラス・アブゥド──イラク共和国親衛隊(:Irqi Republican Guard)少尉)



 部下が話した所属と階級にスルムスの脳内に電撃が走り、彼は眉間にしわを寄せ再び受話器を取ると保留を解除してホロゥイ大佐との会話を再開した。



"Albay, bilgi için teşekkürler. Burning Pot, Irak Cumhuriyet Muhafızlarını içeriyor. Opera Operasyonundan bu yana en kötü felaket olabilir. bir şey biliyorsan bana ulaş."

(:大佐、情報を感謝する。灼熱のつぼにイラクの共和国親衛隊がつながってきた。オペレーション・オペラ(1981年イスラエルがイラクの核施設を爆撃した作戦)以来の厄災になるかも知れない。何かわかったら知らせあおう)



 ギブ・アンド・テイク。これで十分だとスルムスは一瞬思考し受話器を置くと通話ランプが点滅していることを確認してからムーアに声をかけた。



אם שני ראשי נפץ גרעיניים יגיעו לעיראק, זה יהיה אסון. באיזו שעה הקשר הקבוע עם פיראס עבד?

(:核弾頭が2基もイラクへ渡ったとなると大変なことになるぞ。フィラス・アブゥドとの定時連絡は何時だ?)



בדרך כלל, זה צריך להיות פעם ביום.

(:通例通りだと1日1回のはずです)



 ムーアは言うなり電話へ手を伸ばすと外務部の内線呼び出しボタンを押した。呼び出しが鳴ってる間に彼女は上官に尋ねた。



סולמס, מה נתת לאחיינית של קולונל ה-MIT?

(:あぁ、スルムス。MIT大佐の姪子さんに何を贈ったんですか?)



מדובר במכונית ספורט קטנה מתוצרת יפן. זה בחור אדום עם מנוע אמצע, למרות שאין לו מנוע 1 ליטר.

(:日本製の小型スポーツカー、エンジンが.2ガロンもないくせにミッドシップの赤いヤツだ)



להוציא כסף על דברים כאלה──

(:また、工作費をそんな事に────)



 ムーアがしかめっ面するとスルムスは笑顔を浮かべ応酬した。



זה המחיר של אחזקת ערוץ דיפלומטי. אל תספר לאף אחד, מור

「外交チャンネルの維持経費だよ。誰にも言うな、ムーア」


 それを耳にして彼女が小言を言いかけたとき外務部の内線を誰かが受けた。



זה קאסבה ממשרד ניתוח המידע. מתי השיחה הבאה מהסוכן הסמוי העיראקי פיראס עבד?

(:情報分析室のカサスベです。イラクのアセット(/Aseet:資産。この場合潜入諜報員)、フィラス・アブゥド。定時連絡は?)



 わずかな間待たされてムーアはしばらく聞き入るとスルムスへ話しだした。



אני מאחר לשמוע ממנו היום. אבל זה מוזר

(:今日は遅れています。しかし変です)



מה קורה?

「どうした」


נראה שפיראס לא בעיראק. הוא באמריקה

(:フィラスの居場所はイラクじゃないそうです。アメリカへ渡ってます)



 カサスベの説明にスルムスは声のトーンを下げて久しぶりに心をさらけ出した。





לא טוב

(:まずいな)





 スルムスはそう言うなり情報分析室を後にすると廊下を早足で歩いた。イラクが核弾頭を手にするなどイスラエルとしてはもってのほかだったが、関係者がアメリカ国内にいるなど喜べる話ではなかった。その結びつく先には何が待ち構えているのかと考え、彼は思いついた事に眉間にしわを刻んだ。



 スルムスはこの事案のつかみかかった端緒がすでに今関わっている様々な作戦より最優先されるべきだと直感がささやき、得体の知れない危機感にますます重くなる気持ちのまま情報分析室のフロアから3階上がると奥の部屋のドアの外に立った。



 たずねた相手が所用で外出していればなんとしても捜し出して報告と指針を受けなければならない。だが部屋にいれば、間違いなく彼が直接の指揮をとるから残業が深夜にまで延びることが予測された。



 この稼業に配属され関わりだしてから徹夜などざらだったとスルムスはわずかな間意識が逸れた。ドアを叩くと返事が聞こえたので彼は開き入室した。



מר אומס, אירעה תקרית מטרידה

(:ウムズ事務局長、厄介な事案が発生しました)





 サグレ・ウムズ、イスラエル情報局サダト事務局長はペンを机の上に置くと書類から顔を上げ双眼の座ったスルムスの顔を目にした。











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