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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #3
14/155

Part 3-2 Kayla'nın düşünceleri ケイラの思惑

21 Kasım 19:25, Batı Asya, Ankara, Türkiye Milli İstihbarat Teşkilatı Karargahı

11月21日 午後7:25西アジア西部トルコ首都アンカラ・トルコ国家情報機構本部



 アメリカ側の反応は意外と早かった。



 午後7時5分に中央情報局──通称CIAへ、合同特殊部隊が武器商人のアジトを襲撃し射殺した20数人の内、武器商人の手下だと確認出来なかった6人の身元紹介を行った。



 そしてわずか20分余りでその回答が来た事にケイラ・タイス──トルコ陸軍情報局大尉は驚いた。



 その短時間で問い合わせた死体顔写真のデーター・ベースとの照合だけでなく、こちら側へ通達可能か上層部の判断を仰いだはずだった。デルタを出した時点で、軍だけでなく情報局の深い部分まで関わっているとなるとアメリカ政府の身の入れようが彼女には理解できた。身元不明者の4人は該当なしだった。だが残りの2名の紹介回答に彼女は眼を細めた。



・人物紹介A-4、写真紹介P-4、ラングレー答:該当あり。サジダ・エグレル。HIS──ヒズベ・イスラミ・シャリア──イスラム教シャリア派工作員。欧州各地で多数の爆弾テロ及びイランにて米情報局職員殺害に関与した疑い有り。



・人物紹介A-6、写真紹介P-6、ラングレー答:該当あり。アブゼ・カターン・サリブ。HISイスラム教シャリア派工作員。フランス・パリ、ドイツ・ブリュッセルでの爆弾テロに関与した可能性あり。



 タイス大尉は液晶モニターに表示されたそのメールを2度読むと印刷に掛けた。



"2 tanesi doğruydu."

(:2人、該当ありだわ)



 タイス大尉はそう言って隣から手を伸ばしてきたワリフ・デュラン少尉に印刷したメールを渡した。



"Heh, Şeriat İslam fraksiyonundan iki terörist var. Bu bir tesadüf değil, değil mi."

(:へぇ、イスラム教シャーリア派の御仁が2人も。偶然じゃありませんね)



 デュラン少尉は印刷されたラングレーのメールを読みながらそう言った。それを耳にして、核弾頭を取り引きする現場に一人どころか2人もイスラム教の政治集団の1派──それも過激派の教徒がいたのは明確な理由があると大尉は思った。



"──── Şehri bir tencereyle yaktı ────."

(:──壺で街を妬きつくす──)



 武器商人のうわ言の様な言葉が蘇った。本気でヒズベ・イスラミ・シャーリアの連中は──。



"Hayatta kalan bir silah tüccarı yöneticisinin itiraf ettiği gibi, nükleer savaş başlığı almaya gelenlerin kesinlikle Şeriatçı olduğunu varsayıyorum. Yeniden satılacak iki nükleer savaş başlığına sahip olmanın yararları ile rakip ülkeler tarafından hedef alınma riskini tartacak olsalardı, denge dezavantaja karşı değişirdi. Ancak amaç terörizm ise, bence riskten daha önemli bir şey var."

(:生き残った武器商人の幹部が白状したように核弾頭を買取りに来た者達がシャーリア派の者達で間違いないと仮定しましょう。彼らが転売を目的として2発の核弾頭を手にして得られる利益と、当然の様に対立国から狙われるリスクを天秤に掛けるなら、火の粉を負う方に傾くでしょう。だがテロが狙いならリスクよりも大きな意義があるのでは?)



 そう少尉はタイス大尉に意見を求めた。



 タイス大尉はちょっと待てと片手でジェスチャーするとメールを表示させている隣のモニターの前に身を移しキーボードに指を下ろした。そうしてシャーリア派を検索しわずかに間をおいて文章と写真が表示された。



 1998年イラン・ターランのモスクを襲撃し23人のHIK─ヒズベ・イスラミ・クールアン─イスラム教・クールアン派信者を殺害。2000年イラン・ワズリで結婚式披露宴の為に集まったHIAイスラム教・アサム派信者を爆発物により多数殺傷──。



 読み出したら残虐な事件の短い記録が続いていた。近年、今年に近付くにつれその矛先が欧州数ヶ国に切り替わり爆弾テロに終始していた。2009年HIKイスラム教政治集団最大派クールアンにより、シャーリア派指導者、マハラート・カビール他配下の者数名を国外退去──となっていた。爆弾テロに終始、大尉はその1文を反芻はんすうした。



"Yerleşik teori, İslam'ın Kuran mezhebinin Amerikan yanlısı olduğu yönündedir. Ya sınır dışı edilen Şeriat lideri Maharaat, anavatanında Kuran'ı ortadan kaldırmak isteseydi? ABD'nin yardımını zorla kesmek için bir plan hazırlamış olabilirler."

(:イスラム教クールアン派は親米で知られているわ。もしも国外退去となったシャーリア派の指導者マハラートが祖国でのクールアン派の失墜を狙っているとしたら。アメリカという後ろ楯を力で剥ぎ取る為の画策を企てたのかも知れないわ)



 モニターを見つめながら指摘する上官の意見にデュラン少尉は興味を抱いた。



"Görüyorum ki, onları kovanlar, halifenin muzaffer bir şekilde memleketine dönüşünün yolunu kesiyor. ABD'ye İran adı altında saldırmak, Kur'an hizbinin uluslararası yüzünü bozabilir."

(:そうか、カリフが祖国に凱旋する為には自分等を追い立てた連中が邪魔ですからね。イランの名をかたりアメリカを攻撃することでクールアン派の国際的な面子を潰しにかかる)



 ワリフ・デュラン少尉は頭の後ろに両手を組み身体を椅子の背もたれを沈み込ませ続けた。



"Kaptan──"

(:大尉どの)



"Naber?"

(:なんだ?)



"Maharat'ın kartında hala var."

(:マハラートは手持ちのカードにまだそれを持っているんですよね)



 そう言いながら少尉はデスクに手を伸ばし数枚の書類を比べだした。



"Evet Durand. Acaba yeni kartını kullanmak istiyor mu?"

(:そうよデュラン。奴は新しく手にしたカードを使う気かしら)



 大尉はモニターに映ったカルブイの写真にボールペンを突き付けて部下に尋ねた。



"Bunu kullanacağını sanmıyorum."

(:使わないと思います)



"Neden böyle düşünüyorsunuz?"

(:どうしてそう思うの?)



"Nükleer silahlarla hedef alınan kesinlikle ABD'dir. Avrupa hedef alınırsa komşu ülkeler bile düşmana çevrilir. Peki Amerika kendi haline mi bırakacak?"

(:だって核で狙うのは間違いなくアメリカでしょうし。欧州だと隣接する国まで敵にまわすことになります。ならアメリカはされるがままになってるでしょうか?)



 少尉は言葉を区切り手にした書類を再びデスクに戻した。そうしてタイス大尉の方へ顔を向け語り続けた。



"Hayır, olmamalı. Amerika onları öldürmesi için mutlaka Delta veya Devgül'ü gönderecek. Çünkü Karbui artık İran'ın zırhını giymiyor. o neredeyse çıplak Saldırıya uğrarsanız, tamamen öldürülürsünüz. Bu nedenle intihardan kaçınılmalıdır."

(:いいえ、そんなはずはありません。必ず抹殺の為にデルタかデヴグルを送り込んで来るでしょう。だってカルブイはイランという鎧を今や着ていないどころか、裸同然なんですから。襲撃されたらひとたまりも無いでしょう。ですから自ら首を絞める様な事は避けるはずです)p


 そう。普通の者ならそう考えるだろうと大尉は思った。だがシャーリア派のカリフ()だ。まともな価値判断は持ち合わせていまい。きっとアメリカ人は自国のどの都市かが焼きつくされると知れば怒り狂うだろう。だがその時に拳を振り上げても遅いかもしれないと彼女は考えた。



"Maharat yakalanırsa işler alt üst olur mu? Amerikalılar Müslüman bir lideri yakalarlarsa ona her şeyi itiraf ettirirler."

(:マハラートが捕まれば事は破綻するかしら? アメリカ人はイスラム教徒の指導者を捕らえたら、どんな事をしても口を割らせるはずだけど)



 タイス大尉はホロゥイ大佐が外交大使を通じて既にアメリカへ何かしらの警告を出しているかもしれないと思った。



"Kaptan."

(:大尉)



 ケイラは声を掛けられ思索から引きずり戻された。彼女が振り向くと椅子の後ろに一人の男性事務官が立っていた。



"Naber?"

(:何?)



"Esmeralda'nın uğrak limanları ve varış noktaları açıklandı."

(:エスメラルダの寄港先と目的地が分かりました)



"Kargo gemisinin varış yeri neresidir?"

(:目的地は何処なの?)



"Brezilya."

(:ブラジルです)



"Gemi nereye uğrar?"

(:寄港先は?)



"İlki Taipei, Tayvan. İkinci uğrak limanı Amerika Birleşik Devletleri'ndeki New York'tur. Gemi üç gün önce Taipei'ye ulaştı. Geminin bu sabah yerel saatle 10:00'da New York'a varması planlanıyor."

(:1つ目が台湾の台北です。2つ目がアメリカのニューヨークです。台北は3日前に入港してます。ニューヨークは現地時間で今朝十時に入港する予定です)



 タイス大尉は事務官からその船舶に関する書類を受け取り、台湾が対中国への抑止力で核弾頭を欲したのかと考えた。いいやあの小国はそんな事をしない。核弾頭を大国に撃ち込む手段を持たない。



 やはりシャーリア派の狙いはアメリカなのかとケイラ・タイス大尉は自分の脈が跳ね上がったのを感じ、死亡者二名の身元と貨物船の寄港地をホロゥイ大佐に今すぐ知らせるべきか思案した。



"Silah satıcısının hesabının analizi?"

(:武器商人の口座の解析は?,


 大尉に問われてワリフ・デュラン少尉はモニターを指で示した。



"İki taksitte çok fazla altın alıyorlar. Birincisi 10 gün önceydi, ikincisi baskından bir gün önceydi."

(:ものすごい金額の入金が2度に分けて最近ありました。1つが十10日前、もう1つは我々が襲撃したその前日です)



"Gönderenin kim olduğunu öğrenebilir miyim"

(:相手をたどれそう?)



"Bu aktarım kaynağını daha önce görmüştüm."

(:それが──この振り込み元なら以前にも見た事が──)



"Gönderen kimdir?"

(:誰なの?)



"Her ne kadar Amerikan ordusunun sahip olduğu hayalet şirketlerden biri olsa da."

(:アメリカさんの軍が牛耳っている幽霊カンパニーの1つのはずなんですが)



 おかしな話だとケイラは思った。米軍が世界各地で自ら厄介事を引き起こすことは承知の事実で、それは世界的な見地や戦略が複雑に絡み合った結果でもあったが、理解に苦しむ事が幾度とあった。



 それでも米本土に核テロを仕掛けかねない連中の後ろ楯をしているとはにわかに信じがたかった。



"Warif, bunu benden başka kimseye söyleme."

(:ワリフ、このことは私以外に口外しないこと)



"Ne? Neden?"

(:え? どうしてですか?)



"Çünkü ülkemizin zor durumda kalacağı varsayılıyor."

(:我が国が微妙な立場に立たされる事が危惧されるからよ)



 タイス大尉は部下に口止めしながら、この事をホロゥイ大佐へ報告すべきなのか逡巡しゅんじゅんした。大佐はアメリカ軍の何かしらの機関が関与しているとなると情報を差し押さえる可能性があった。



 我が国の軍とアメリカ軍情報部は過去にないほどその親交を深めている。蜜月を破綻させる口実を大佐は良しとしないだろう。だが航路を渡る2基の核弾頭を押収する切っかけをないがしろにしたなら──いずれその事が明るみに出て我が国は対外的に歴史に汚点を残すか、無能の烙印を捺されてしまうだろう。その為にはアメリカ側の権力に屈せず毅然と捜査を行える誰かに引き継ぐべきなのかもしれない。ケイラ・タイス大尉は早急に誰へ警告すべきなのか記憶の糸を手繰り始めた。











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