Part 34-4 Baptism 洗礼
Trinity Church 75th Broadway Lower Manhattan, NYC 20:25
午後8:25 ニューヨーク市 ロウアー・マンハッタン ブロードウェイ75丁目 トリニティ教会
角のコンクリートが幾つものミリタリーボールに抉られ、ベルトで肩にした予備弾倉ボックス二つも使いきり片手に握りしめたSAWを抱きかかえ転がり込む様にビルの合間に戻ってきたアンは眉間に青筋を浮かび上がらせ顔を紅くし怒っていた。
五分の間に倒せたシールズ兵はたったの六人だった。
「ちきしょう! 海兵隊リーコンズの連中がアヒルなら、あいつら甘噛みしねェケルベロス並じゃねェか! うぜェ!」
毒づいて今さらながらに少佐のハンドガン捌きが本物だったのだとアンは納得し、あの女にマシンピストルやバトルライフル使わせて屠殺場を駆け回りたいとアンは不謹慎な想像に一瞬ニヤつき、アリスパックのフリップを跳ね上げ、中から新しい弾倉ボックスを一つ取りだし手早くマシンガンに装填しボックスを取り付けた。
そうしてさらにパックに手を突っ込みベルトに通した最後の弾倉ボックス二つを引き抜きベルトを左肩に掛け身体の前後にそのベルトリンク・カートン・ボックスをぶら下げた。しこたまのアモだけでなく交換バレルも用意するんだったと彼女は苛ついた。
「くそうォ! こんなカーニバルになるならもっと用意しとくんだったァ!」
巻き舌で後悔を吐き捨てながらアンは自分のアリスパックを覗き込んだ。
「確かァ、少佐は派手に足止めしろとォ──」
そう呟き一旦はへの字に曲げた唇の口角をゆっくりと吊り上げて目尻を下げた彼女は左手をアリスパックの奥へ差し込んだ。
「赦されるよなァ」
誰へともなくそう言うなり青い瞳をギラつかせながら彼女はデトネーター・コード(:導爆線)を巻きつけた二つの塊を鷲づかみにして引き抜いた。
「しかたねェ! 貴様らァに、俺がァ、洗礼をしてやらァ!」
そう言い放ち仁王立ちになると空になったアリスパックを右足で蹴り飛ばしブロンドのロングヘアーを振り回して通りへ振り向いたアン・プリストリは、左手にクレイモア対人地雷を二個握りしめたままバトル・ストリート・フィールドへ嬉々として三度駆け出すと幾つもの重なった連続する銃声が盛大に出迎えた。