表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #33
130/155

Part 33-1The best Night 今宵は最高

Trinity Church 75th Broadway Manhattan, NYC 20:15


午後8:15 ニューヨーク市 マンハッタン ブロードウェイ75丁目 トリニティ教会



 トリニティ教会の細い斜塔を空中でかわし通りに達するとアン・プリストリは歩道を小走りに駆ける男を眼にした。



 濃紺のスタジアム・ジャンパーに青いベースボール・キャップを被ったその男が少佐の言っていたテロリストの一人だと彼女の直感が告げた。



 だがそれだけではなかった。



 反対側の歩道にスーツ姿の女とロングコートを着た男がテロリストの男に歩調を合わせており、アンの見つめるフェイス・ガードの液晶画面にスーツ姿の女の右手に握る短機関銃に赤いリングが立ち上がりコーション・マークが点滅し、MP5SD6を手にしている事を理解した。



 車道をかなりの勢いで走って来た四台のSUVの二台がテロリストの男を追い抜き歩道を塞ぐ様に停車した。



 ドアが開きデジタル迷彩のM4A1カービンで武装した男らが降りるとモニターに“!”が乱立し、駆けていたテロリストの男が急に立ち止まった。



 アンは急激にPFUのファンネルの回転を落としながら、テロリストの男がいる反対側の歩道の建物の間に飛び込み、胸に提げていたアリスパックを地面に放り出すなり着地直前に個別飛翔装備から腕を引き抜き飛び降りた。



 PFUが地面に激突し派手なクラッシュ音を立てた時に彼女は両手に左右の太股ふともものホルスターからブローニング・ハイパワーを引き抜きデジタル迷彩の男らに向け凄まじい勢いで駆け出していた。









 青いベースボール・キャプを被っている駆けている男を抜くなり真っ先に車から降りた海兵隊リーコンズのカッシーニ軍曹はテロリストの男に三発撃ち込むつもりでいた。



 一発はハンセル少尉のために、一撃はラワン特務上等兵に報いるために、一弾はコルテス1等兵の無念に。



 M4A1カービンのバッドストックを肩付けしながらバレルを振り上げMRSドット・サイトの視界の中心に点った3MOAの赤い光点をテロリストの胸に捉え掛かった刹那、開いたままの左目が見てる斜めに吹き荒ぶ雪が歪み揺らめいた様に感じた。



 直後、目の前の至近距離に自分のものでないマズルブラストの白に近いオレンジの火球が膨れ上がり右足の甲に堪えきれない激痛が走った。



 テロリストが火器を持たなかったのは下車した際に見極めていた。



 スナイピングでもないすぐ近くで撃たれた。



 しかも確かにハンドガンの激発音だったが、なぜエコーがかっているのかと条件反射のように不信感を抱き、音が消え去る前に空カートリッジ独特のブラスの甲高いわずかな音を耳にした。



 とっさに彼はカービンをスリング任せに前へ放り出し、両手で激痛の金切り声を上げる右足の甲をブーツ越しに押さえつけながら目の前のアスファルトに転がったはずの空薬莢からやっきょうを探したが、その前にまたあのエコー・ブラストを耳にし、その音が収束仕掛かった寸前その音に重なりまた真鍮しんちゅうのぶつかる音を確かに耳にし地面に絡まるように二つの空カートリッジが転がり眼を大きく見開いた。



 射撃の残響を耳に曳きながら、仲間に気をつけろと怒鳴ろうと顔を振った先に同じごとく激痛に顔を歪め右足の甲を押さえ込む仲間三人がいた。



 そんな馬鹿な!



 銃声は二度しか、と口を開いた彼の視界の端三ヤードのアスファルトにさらに二個の空薬莢が転がった。



 カッシーニ軍曹は理解出来ぬまま左手で足を押さえ歯を喰いしばり右手にカービンのグリップをつかみ振り上げようとした瞬間、今度は十ヤード先に火球が膨れ上がると振り回された小銃に眼にしたものを信じられない面持ちで見つめた。自分の弾かれた銃に下から差し込まれているマガジンの前面が大きく変形し抜け掛かっていた。









 アンはにらみつけながら、瞬時に右手のブローニングHPで二人の足を撃ち抜くと、エキストラクターが弾き出した二発目のカートリッジが一発目の落ち掛かったそれにぶつかりブラスの甲高い金属音が響いた瞬間には横へ二歩跳び移り軸足が確実に地面を捉えた刹那、三と四人目の兵士の足の甲を左手のハンドガンを使いWTS(:二発の速射撃)で撃ち抜いた。



 さらに遠くに下車した兵士二人がカービンの射撃スタンスに入ったのでその向こうずねを撃ち抜いた。



 六発を撃ち今夜は二匹の獲物の調子がすこぶる良く。



 レールにテフロン加工を施した超軽量スライドと二重にしているリコイルスプリングがサージング(:本来はエンジン用語。高回転のエンジンでバルブスプリングがバルブリフト機動に追従出来ずバルブが暴れる状態)も起こさずにP90以上のサイクル・レートの指の動きに付いてきている事に彼女は片側の口角をつり上げていた。



 だから愉快で、テロリスト後方の車から下車しカービンを構え上げ掛かっている他の兵士らの方へ駆け出して十ヤードの間際に最初に右足の甲を撃ち抜いた兵士が再び銃を手にしているのを大目にみて「おらァ!」と巻き舌で怒鳴りながらそいつの弾倉を狙い撃った。



 少佐からは撹乱かくらんせよと許可されていた。



 それも“出来るだけ派手に”とも。



 足の甲はすねを撃たれるよりも強烈に痛い。ましてやただの9ミリパラではない。特注のバレルが五百発でガタガタになるハンドロードした+P+(:プラス・ピー・プラ。強装薬の実砲)のHS(:ハイドラショック。人体の破壊力を増した弾頭の一種)だ。





 あのガランド小銃女との出逢いといい、特殊部隊とバトれる──今宵は最高だ!





 アン・プリストリは舌舐めずりしながら八人目の迷彩服を着たアヒルへ駆けた。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ