Part 32-7 Request for Assistance 援護要請
Tribeca Manhattan, NYC 20:20
午後8:20 ニューヨーク市 マンハッタン トライベッカ
カーゴトラックから下ろされた先でSEALsの2ユニットにCIA・NY支局長マーク・アランが指示したテロリストのネスト(:隠れ家)を監視させ始め数分でその建家が無人である事に気がついたマイク・ガーランドは情報局員を問いつめた。
「本当にここがテロリストらのアジトだと言い切れる理由はなんだ!?」
「それはNMCCの情報将校が報せてきたから、我々は監視し続けてきたんだ」
「その将校の名は!?」
もはやマイクの口調は怒気を含み掛かっていた。
「ジョゼフ・キンバリー情報局陸軍中佐──」
情報局員が名を口にしたその将校はローラ・ステージがDoDから報せてきた男だった。彼女は作戦自体がジョゼフ・キンバリーのホフマン海軍大将に対する怨恨から立てられものであり、デルタの代わりとして捨て石の様にあなた達がニューヨークへ出されたとカーゴトラックに乗り込んだ時に知ったばかりだった。
彼はローラの言ってきた事がにわかに信じられず移動中にリッケン・ホフマン海軍大将に確認の無線を入れたばかりだった。
マイクがCIAの責任者を詰問している最中に彼の携帯電話が着信し振動し始めた。マイクは携帯電話を取り出した番号を見ると知らない番号だった。
「はい、ガーランドだ」
『私は国家安全保障局長官代理のサンドラ・クレンシーだ。今、話せるか? 』
マイクが短時間ならと了承するとクレンシーという男が説明した。
『用件を簡素に言う。ホフマン海軍大将がホワイトハウスへ連絡してきてキンバリー中佐の件を知った。私は大統領権限でNYの核テロの捜査を指揮している。NMCCが指令した作戦はフェイクだ。作戦立案者のジョゼフ・キンバリー情報局陸軍中佐は射殺された』
マイクは今しがたCIA職員から耳にした男が射殺されたと知りわずかに驚いた。やはり作戦に間違いなくなにがしかの問題があったのだ。
「テロリストらはどこにいるんだ?」
『四人のうち一人は死亡が確認されている。一人は謎の武装集団に拉致されたのが分かっている。一人は行方不明だが、最後の一人を追っていまリーコンズ一小隊が謎の集団と交戦中だ』
海兵隊武装偵察中隊までもが来ているのかとマイクはさらに驚き尋ねた。
「援護しろと言うのか?」
『そうだ。君たちSEALsのこちらに来ている要員は何小隊だ?』
何人だと聞かず小隊数を尋ねられた事でマイクはNSA長官代理の男が少なくとも軍に関して知識を持つと気がついた。
「三小隊だ。脅威となっている敵規模は?」
『明確でないがリーコンズと私の部下達が圧倒されている。場所はブロードウェイ南端のトリニティ教会前の通りだ。至急、増援を要請する』
マイクはまるで長官代理がその前線にいる様な気がして最後に一つ尋ねた。
「クレンシー長官代理、まさか貴方が撃ち合いをしてるのか?」
『そうだ。こちらの負傷者多数。到着次第救護も願う。敵は手練れだ。用心してくれ。君に何かあったらFBIのローラ・ステージ警部に申し訳ない』
その切羽つまった状況でありながら、長官代理の男の落ち着き払った言い方とマイクは少ない身内の名を言われいくらか話が見えてきて本意から彼を励ました。
「至急、駆けつける。持ちこたえてくれ」
電話を切るなりマイクは傍らで様子を見守っていたドール・ジョージア中佐に命じた。
「全員に移動を周知、降車次第戦闘になると説明しろ。敵はリーコンズとNSA職員と交戦中だ。先に降ろした2分隊も回収に向かう」
彼はドールが即座に部下達の元へ駆けるとその背から中央情報局職員へ顔を向け押し殺した声で命じた。
「君、我々をブロードウェイ南端のトリニティ教会の前まで案内してもらおう。そこが我々の本物のFEだ」
「分かりました──大佐、FEとはなんですか?」
「鉄火場(/Front of Enemy:敵前線)だよ」
説明してマイクは顔をひきつらせたCIA職員へ片側の口角を持ち上げてみせた。