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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #30
116/155

Part 30-1 Investigation 取調

DoD-Pentagon Arlington County, Va. 20:15


午後8:15 バージニア州 アーリントン ペンタゴン 国防総省



 ジョゼフ・キンバリー中佐を射殺したクリストファー・ブリガム元大将と現場に居合わせたソニー・カーチス上院議員とローラ・ステージはMPにより中佐の部屋から別な部屋へ移され急遽きゅうきょ駆けつけたCID(:陸軍犯罪捜査司令部)のバンデンバーグ中佐に仮の事情聴取を受けていた。



「──で、ニューヨークで起きている核テロの主犯の一人としてキンバリー中佐の尋問中に彼が錯乱してブリガム元大将へ銃を向け撃とうとして逆に彼が撃たれた──と言うんですね」



「ああ、そうだ。事態は急を要しわしが調査におもむいた」



 バンデンバーグ中佐は一度ブリガム元大将を見つめその視線をカーチス上院議員とローラというFBI捜査官へ向けわずかに間をおいてブリガム元大将に再び質問した。



「で、キンバリー中佐の嫌疑たる確な証拠はなく、そちらの軍装のローラさんの義弟がシールのガーランド大佐で大佐が作戦の初動が早すぎると貴女に尋問を依頼されたと」



「ええ、ファーガシー国防長官に直接伺いキンバリー中佐が作戦立案担当将校だと知りましたからDoDにやって来ました。FBI捜査官だと名乗っても中佐が正直に話して下さるとは考えられなかったのでブリガムさんに奥さんのサービスドレスを──」



 説明している最中にあの眼底から差し込んでくるような感覚にローラはわずかに身構えた。



────マリーのおば様、核爆弾二発を見つけたわ。テロの首謀者の一人はCIAが拘束、一人は爆死。とんでもない金額の資金が陸軍のダミー貿易会社からテロリストへ振り込まれた記録をCIAの情報統括官のパメラ・ランディが持ってるの。そこからキンバリーにつながると思うわ。それとアネット・フラナガンを見つけたの。危険な状況だから至急救出して。誘拐犯人の名前と場所は──。



「有り難う、パトリシア」



 ローラはパティが伝えた名称と住所を一度意識で繰り返すと小声で礼をつぶやき少女が離れて行ったのを感じた。



「パトリシア──? どうされました、ステージ捜査官? パトリシアとは? 何かおかしな事を私が言いましたか?」



 バンデンバーグ中佐に言われローラは自分がにやついていた事を理解して慌てて顔を引き締めた。



「中佐、電話を掛けてもよろしいかしら?」



 ローラに言われバンデンバーグ中佐が怪訝な面持ちになった。



「警部、あなたは今、取り調べを受けているとの認識がおありなのですか?」



 わずかな間をおいて彼女が切り返した。



「分かってます。ですが貴方がたった一度の私の申し出を断った為に、一人のうら若き女性が“皮膚を剥がれ”殺されてしまったと後で知る事に一生後悔し続けるとしても別件での電話を禁じますか?」



“皮膚を剥がれる”という言葉に中佐が明らかに動揺したとローラは彼の表情の変化をつぶさに見つめ“しめた”と思った。



「いいでしょう。ただし、携帯電話は駄目です。備え付けのこの電話で、相手先の会話も私が確認します」



 そう言って中佐は机の端に置かれたビジネスフォンを彼女の正面にずらすと外線ボタンを押し続けざまにハンズフリーをセットした。



「構いません。有り難う中佐」



 言うなりローラは素早くサブリナ・ディーン警部補の携帯電話の番号を打ち込んだ。スピーカーから呼び出し音が流れコール四回で部下が出た。



「私よ、サブリナ」



『警部、連絡したのにつながらなくて──皮膚を剥がされる理由が分かりました。目的は分かりませんが、地図を作っているのだと。クレジットカードから容疑者と思われる男を特定し地元のシェリフに確認へ向かわせたところで──』



 話だしサブリナは捲し立てる様に説明してきた。



「いいから聞きなさい! 犯人はヘーバーリル・ウインチタ2308のカエデス・コーニング。彼の敷地隅にある小屋にアネット・フラナガンは拘束されて危険な状況よ! ASAP(:至急)でHRT(:FBI人質救出部隊)を向かわせなさい!」



『ええ!? そいつです! どうして容疑者の氏名や住所を!? わっ、分かりました! HRTを向かわせます!』



 慌ててサブリナの方から通話が切れた。ローラは電話機をバンデンバーグ中佐に押し返し彼が外線を切ると教え聞かす様に説明した。



「有り難う、中佐。お礼として貴殿方陸軍がとんでもない失態を仕出かした事実をお教えするわ。ジョゼフ・キンバリー中佐がホフマン海軍大将への私怨を晴らす為に陸軍情報局が持つダミー会社からテロリストへの資金操作が行われた事実を──CIA情報統括官のパメラ・ランディがその記録を持ってるわ」



 言いながらローラはバンデンバーグ中佐だけでなくブリガムとソニーも息を呑んだのを耳にし、中佐が強張った視線で彼女を見つめている事実に、よもやCIDが揉み消しに走れはしないと確信した。そうしてマイク・ガーランドにこれらの事をどうやって報せ彼ら特殊部隊を真の敵に向かわせるかと一瞬思案し中佐に提案した。



「バンデンバーグ中佐、もう一度電話させて。ネイヴィ・シールズが対処すべきテロリストら敵を火急に報せなくてはならないから」



 そう言って彼へ微笑んでみせたローラへ眼を丸くした中佐は今度はどうぞと言っただけで電話を差し出した。ローラ・ステージは即座にFBI長官へ電話し始めた。












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