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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #29
115/155

Part 29-5 Gunfight 銃撃戦

E.47th ST.-5th AV. Midtown Manhattan, NYC 20:10


午後8:10 ニューヨーク市 マンハッタン ミッドタウン 5番街47丁目



 窓から身を乗りだしAK-47を射撃しながらアハメド・バーハム少佐は敵が増えた事に警戒心を募らせた。



 今や追いすがる車が五台以上いた。新たに増えた敵はなぜか追跡してくるパトロールカー四台のタイアを撃ち抜くと最初に銃撃を仕掛けてきたSUVを追い抜き集団で攻撃してきている。それも十分に訓練された軍の兵士の様に統制のとれた無駄のない攻撃だった。



 バーハム少佐は空になったマガジンを替える為に車内に上半身を引き戻そうとした。その刹那、左上腕を撃ち抜かれ歯を喰い縛り身体を車内に逃がした。



「少佐、大丈夫ですか!」



 弾倉を交換していたハサム・サイド中尉が後ろの席から声を掛けた。



「これくらいなんともない! なんなんだあいつら!? 警察やFBIではない! パトロールカーを撃ちやがった!」



 バーハム少佐は最初の連中の増援なのかと思ったが、火力が半端でなく、街中で戦場とかわらない銃撃を繰り返していた。



 その瞬間、ピラーに弾痕が二つ穿うがたれ火花が飛び散った。まるでヘビー・マシンガンで撃たれている様な有り様に、少佐はこのままでは全員が殺られると予感した。その時、前方を走る路線バスが見えてきて彼は一瞬で判断した。



「このままでは我々は壊滅する。別れよう。いいか、これから先、個々の判断により別れて高そうなビルを選び最上階に上がり起爆携帯電話を操作し核爆弾を起爆させる。いいな、躊躇ちゅうちょするな。敵の弾で死ぬ前に核爆弾を爆発させるんだ!」



「大佐へは何と? 意見を伺わないと!」


 運転するフィラス・アブゥド少尉が異をとなえた。



「かまわん! 猶予がないんだ! サローム大佐へは私が連絡する。激しい襲撃を受け、核爆弾爆破の時間を前倒しすると!」


 言いながら少佐はバスに並んだのを見ていた。



「フィラス! バスに被せ急ブレーキを掛けろ」


 そう命じ少佐は彼のシートを叩いた。大きくピックアップトラックがかしいでバスの前に踊り出ると陰に入り銃撃が一瞬止んだ。その寸秒タイアが悲鳴を上げ急激に速度が落ちた。



「成功を祈る! 聖戦の為に死すぞ!」



 バーハム少佐はそう二人の部下に告げるなり助手席のドアを押し開け銃を手にしたまま路面に飛び降りた。









 モサド工作員ベニー・コーヘンはハンドルを握りながらルームミラーでパトロールカーが次々にタイアを撃ち抜かれ下がっていったのを見ていた。



 追い上げてきた五台あまりのレジャービークルやセダンが敵か味方か分からずアサルトライフルを手にしたカエキリアに射撃を止めろと怒鳴った。車内に身を退いた彼女が顔を巡らせ追い抜いていく一団の車輌を見ているとそれらの車輌の助手席や後席の窓から身を乗り出した男らがピックアップトラックに向かい射撃を始めた。



「あいつら何者でしょうか!?」



 カエキリアがそう尋ねながら他にもそいつらの車輌がいないか辺りを見回した。



「分からん! FBIではない。見ろ連中を、あんな撃ち方をするのは軍事訓練を受けた連中だ!」



 二人はフロントガラス越しにピックアップトラックに群がる四台のレジャービークルとセダンを見つめていた。



 どれもがトラックから撃ちにくい位置から銃撃を仕掛けており、複数の男らが乗っているのか同じ者が連続して射撃せず交代しながら身を乗りだしトラックへ撃ち続けていた。



 トラックに乗る連中がえられないと判断したのか、バスの前に割り込む様に被せると急ブレーキを掛けた。バスの運転手も慌てて止まろうとして後部が隣の車線に流れ、車内で乗客らが運転席側へ飛ばされるのが見えた。



 襲撃を仕掛けていた車輌らはバスから離れ減速した。その隙をつき一度スピードの落ちたピックアップトラックはまた異様な加速で速度を上げ始めた。追い掛けていた車らも一斉にまた追走に移ったが、最後尾になってそれらを見ていたモサドの二人のアセットはアサルトライフルを手にした歩行者が一つのビルに駆け込むのを見ていた。



「どうしますか、ベニー!?」



 カエキリアが尋ねるとトラックを追い掛け出した車群の中から二台が歩道に車を寄せ止めると六人の男らが飛び出しアサルトライフルを手に、男を追ってビルへ入って行った。



「ビルに逃げ込んだ男はフィラス・アブゥドに似てなかった。もっと歳が上だった。降りた奴はあの連中に捕まるか殺されるだろう。ピックアップトラックにはまだ二人乗っている。そっちを追うぞ」



 そう言ってベニー・コーヘンはアクセルを踏み込みシボレー・タホを加速させ始めた。









 警察無線が言っていた市街で銃撃戦を繰り広げ走行していた車輌を駆けつけたパメラ達CIAはすぐに判別出来た。



 だがすぐに彼女は手を出さずに疾走する二台を追走した。



 煉瓦色のピックアップトラックと黒いシボレー・タホとが撃ち合っておりそれに市警車輌五台が追いすがっている状況だった。



 タホの方は女がアサルトライフルを散発的に撃っており、ピックアップトラックから撃ってる連中を殺すよりも車輌を停めようと狙っているようだった。ならテロリストらはピックアップトラックの可能性が高く、まずその確認が必要だとパメラは思った。



「シボレーの連中何者でしょう?」


 運転するルイスに尋ねられパメラはわずかに考えて答えた。



「FBIやNSAの連中じゃないわね。あの身を乗り出して射撃をしている女、軍上がりだわ」



 言いながら黒のSUVをどうするかパメラは考えて邪魔立てするなら容赦なく排除する事にした。そうして彼女は六台に分乗するSADに無線で命じた。



「先にPC(:警察車輌)を排除! 一台はシボレーSUVを追い抜き先頭のダッジ・ラムから身を乗り出している者の面を取れ(確認)! 状況開始!」



 軍隊特殊部隊上がりの部下達の仕事は手早かった。



 即座に五台のパトロールカーに接近し車輌片側の前後輪を撃ち抜き走行不能にした。そうして撃ち合っているピックアップトラックとシボレー・タホの二台に準軍事工作班の一台は歩道よりの車道を猛然と加速し、シボレーを追い抜くと出来うる限りトラックに迫った。



 そうしてフロントガラス越しにトラックから身を乗り出して射撃している男を確認すると作戦責任者のパメラに間違いないと報せた。彼女はいったん先行した一台を下がらせると五台の内、四台でピックアップトラックへ向け射撃を命じ一台には邪魔が入った場合の足止めを任せた。



 もたもたしている時間はなかったが拉致が狙いの為、制圧射殺の様な訳にはいかずトラックを止めさせようとしてもたついた。いつまたPCが群がって来るか分かったものではなかった。



 トラックへ打撃を与え始めて数分、蛇行を繰り返していたトラックはいきなり追い抜いた路線バスの前に割り込むと急制動を掛けた。



 追突し掛かったバスが無理なブレーキを掛けた事により大きな車体が雪の積もった路面にグリップを失い横滑りを始めると二車線を跨ぎ、トラックを追い上げて射撃を繰り返していた四台の乗用車も弾かれた様に急制動を掛け車体がスピンしかかり大きく乱れた。



 その刹那、離れた車で状況を見ていたパメラは、歩行者の流れが乱れアサルトライフルを手にした男が歩道を横切りビルの一つに駆け込んだのを眼にしてヘッドセットのマイクに怒鳴った。



「三、四号車、車線を塞いで止まったバスの頭側の歩道に面した煉瓦張りのビルにターゲットの一人が逃げ込んだ! 下車後六人で追跡、出来うる限りスナッチ! 逐次状況を報告! 五号車、前に出てトラックへ攻撃!」







 バスの陰から飛び出す様に再び速度を上げ始めたダッジ・ラムを三台が追いまた銃撃を開始するとパメラもアサルトライフルを手に撃ち殺してはいけないと自らに言い聞かせ打撃に加わった。












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