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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #27
104/155

Part 27-8 Attack Command 邀撃指令

Broadway Uptown Manhattan, NYC 19:50


午後7:50 ニューヨーク市 マンハッタン アップタウン ブロードウェイ



 エンジンを掛けたままエアコンを強めにしガラス窓のくもりを取り除いている車の傍らに立ちベニー・コーヘンとカエキリア・ドリヤース二人は通りを走って来る車を見続けていた。



 イスラエルから緊急の連絡が入ったのはわずか半時間前だった。ベニーはもう半時間余裕があれば工作員でなくとも人の手配が出来、十分な火器を用意出来たのにと思いながら短くなった煙草を投げ捨てた。



 ニューヨークに核テロが仕掛けられているなど耳にしたのもその時だった。モサドの工作員フィラス・アブゥドが運転する車に乗る二人のイラク人を抹殺しテロを阻止せよと指令があったものの、街灯りの中に浮かぶ車内が確認し辛く、しかも西の内陸部ニュー・ジャージーからハドソン川を越えマンハッタン島に入ってくる車は多く流れは速かった。



「ベニー、今、ターゲットが川を渡っている」



 カエキリアに言われベニーはしっかり確認しようと眼を凝らした。彼女はかれこれ十五分以上モサド本部から携帯電話で三人の乗る車輌の位置を聞き続けていた。車を確認したら要撃はこちらのものだとベニーは考えていた。



 橋からの車の一群が途切れ、遅れて数台の車が足早に橋を抜けて来た。セダンが二台。そのどちらも車内には人が一人だけだった。三台目は大型のピックアップトラックだった。



 トラックなのに手のひらより広いオーバーフェンダーからさらに広いワイドタイアを唸らせ暴力的な排気音をとどろかせながら走るその車が、一瞬水銀灯に照らし出され車内が見えた。



 ベニーは三人の男が乗っているのを眼にした。前に二人、後ろに一人。



「あのイカれた煉瓦色のピックアップだ!」



 言いながらベニーは歩道から運転席へ回り込むとドアを開き飛び乗った。彼よりもカエキリアの方がわずかに早く助手席に乗り込みドアを閉じた。直後、乱暴にシボレー・タホは走り出すと猛然とピックアップトラックを追い始めた。



「あいつらが車を捨て人混みに紛れたらどうすることも出来ない。車を止めさせて襲撃する」



 ベニー言われカエキリアは座席の間に身をのり出し後ろの席の足下に隠していたHK237カスタム・カービンを二挺つかみ身体を座席に戻すと次々にストックを開き伸ばしチャージングハンドルを引き離し初弾を装填した。



 そうして彼女は一挺を太ももの上に置いたまま、背をドアと座席の角に向け一挺の銃口をダッシュボードより下げグリップを握りしめストックを肩付けした。



 モサド工作員のフィラス・アブゥドとテロリスト二名の顔は本部からのメールで確認していた。



 だがいきなり暗がりで顔を合わせ三人を判断出来るかは運任せだった。



 テロリストらも十分に武装している事が予想出来た。困難な状況で短時間に二人を射殺し警察が集まる前にアブゥドを連れ逃げる必要があった。公機関に捕らえられれば外交問題になりかねなかった。



 ピックアップトラックはハドソン川とセントラルパークの中間に位置するブロードウェイをどんどん南下し始めた。セントラルパークを越え南に出ると一気に車も通行人も増え対応が難しくなる。



 数分で決着をつけないといけないとベニーは考え、アクセルを深く踏み込んだ。







 他の車よりかなり速いペースで街中を走るラム・トラックスのダッジ・ラム6.7Lに二人の乗るフルサイズのシボレー・タホは噛みつかんばかりの勢いで迫っていた。












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