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衝動の天使達 1 ─容赦なく─  作者: 水色奈月
Chapter #27
100/155

Part 27-4 Emergency Response 緊急対処

MetLife Bld. Midtown Manhattan, NYC 20:00


午後8:00 ニューヨーク市 マンハッタン ミッドタウン メットライフ・ビル



 急に受信がホワイトノイズに切り替わりルナは眉根を寄せた。



 いったい何が起きているのか気になり、再びチーフへと呼び出しを入れようとした刹那、本社の作戦指揮室から無線が入ったのでボイスコマンドで受信を許可した。



『サブチーフ、ニコルだ。核爆弾の場所が分かった。“i-temp”ビルのエレベーター機械室だ。キュービクルの裏に隠されてる』



「分かりました。対処します」



 重大な報告に冷静にそう返し通信を切るなりルナは背にした個人飛翔装置のコントロールスティックを左手で腰からつかみ取り、パワーサプライに火を入れると緊急ウォームアップモードに切り替え親指をノブに乗せスロットルレバーを中指と薬指でわずかに握りしめた。



 意識には自分がガンルームのホワイトボードに張り出したマンハッタンのビル全配置図が浮かび上がっていた。



 さらに集中するなり、知らされた同じ名前のビルを直ぐに見つけ出した。



 自分達のメットライフビルから斜めに三ブロックしか離れていない縦長の細いビルだと上面積と階数から判断しながら、距離は三百ヤード(:約274m)ほどだと瞬時に暗算し自分が先んじるしかないとあごを引きボイスコマンドで近接総通信を命じた。



 その瞬間ダイアナ・イラスコ・ロリンズはノブを前に押し込みスロットルレバーを半位置まで握りしめビルの縁から跳び出すなり他の四人に命じた。



「皆、核爆弾の場所が分かりました。クライスラービルの北東にあるアイ・テンプ・ビルです。エレベーター機械室。ついて来なさい!」







 風の音の中にいきなり甲高い音が混じりだしロバートと他三名が顔を振り向けた。その直後四人はサブチーフがビルの縁から跳び降りた様に見えた。



『皆、核爆弾の場所が分かりました。クライスラービルの北東にあるアイ・テンプ・ビルです。エレベーター機械室。ついて来なさい!』



 無線を聞いてロバートは顔を強ばらせた。



 ルナはリモートコントローラーをテロリストから奪うより核爆弾自体をファクターから排除する気だと知り、解除中の彼女を守らなくては! と追い込まれた。



 そう彼は考えながら駆け出しPFUのコントローラーを左手につかみスターターを作動させた。そうして屋上の縁の腰ほどの高さの段に跳び上がるなり下を見下ろした。



 その明かりの洪水の中をすでにダイアナが百ヤードも先行して飛んでいく後ろ姿が見えた。見失うわけにはいかないと彼は一瞬の躊躇ちゅうちょもなく屋上を蹴り出した。







 不意に作動したフェイスガードのサイドファンが、吐き出した息を液晶モニターから取り除いた。



 ジェシカ・ミラーは今日はイレギュラー続きだとため息をついてしまった。対テロリスト部隊のガンファイターとして二年の間にすら驚く様な事が山ほどあった。



 ガンファイター・テクニシャンとして三つの大会に二年間君臨していながら、アン・プリストリと出逢い出鼻を挫かれた。そして彼女と共に現れたダイアナ・E・ロリンズが告げたテロリストの惨状。二つ返事で受けたが最後、狂ったみたいにしごかれ一つのセルの攻め手の要を任されながら──今夜は!


 冷徹でありながら、執拗に敵を追いつめていたフローラがあれほど激昂し、あんなに沈着冷静なサブチーフまでが前後を棄ておいてまで先走っている。



 あの突撃銃のような名の新任チーフが現れただけで、近辺すべてが波打っていた。まさかあのアンがグレー・ヘッドにくみする事はあるまいと唇を一瞬歪ませ、ヘッドギアで押さえつけた赤毛が気になりはしたが、まだ不快というにはほど遠い今夜がどこに行き着くのかとジェシカは楽しんでいた。



 迫ってくるビルの境界へとリズミカルにステップ踏みながら、飛翔装備のエンジンを起動し緊急ヒートアップボタンを押しファンネルを回し始めると浮力もないうちに三番手として屋上を跳び出した。



「今夜は人差し指がうずいてしかたないわ!」



 一人叫び十ヤードと落下せずに彼女はチャコールブラウンの瞳を細めると最大速力で第2セル・リーダーを追い始めた。











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