表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/72

66 探知アビリティ

 "精霊の樹海"の攻略をどうにか終え、街に戻って来た俺達を待っていたのはあまり良くない報せであった。


「なんや、またPK騒ぎがあったみたいやで。〈幸せの国ネズミーランド〉っちゅうギルドが、全滅したらしいわ」


 ブリギッドの言葉に、思わず眉間にしわを寄せてしまう。

 直接本人達と顔を合わせた事は無いが、確かギルマスのイカスケを中心に上位ランカーが複数所属する精鋭ギルドだったと記憶している。

 

「……犯人はやはり奴らなのか?」


「……ハッキリした事は分からへんけど、多分そうやないかって噂になっとるな」


 文字通り全滅らしく、ギルドメンバー全員が封印宮送りになっており、誰とも連絡が取れない状態なのだそうだ。

 たまたま彼らの知人の一人が連絡を取ろうとして事態が発覚したらしい。


「奴ら一体何を考えているんだか……」


 ラキシス達が何を思って、ゲーム攻略の妨害をしているのか俺にはさっぱり理解出来ない。

 死にたいだけならば、"生存の書"を手に入れなければいいだけの話だ。

 態々、生きたい奴らの足を引っ張って何になるというのだろうか。


「ほんまやなぁ……」


「ところで、頼んでいた件はどうなった?」


「ああ、やっぱ無理やったわ。大方の予想通り、何人も仲介を挟んどったみたいで、誰が購入したのか追えんかったわ」


 やはりか。

 結構な人数で動いている筈なのに、全然尻尾を出さない辺りからも、ラキシスの統率力の高さが窺える。

 

「やっぱ、白の剣士はんが殺したっちゅう奴を捕えそこなったんが痛いなぁ」


 奴らの正体を暴く最大のチャンスは、実は俺のデスペナ解除直後、カズヒトのデスペナ解除直前にあった。

 というのも、カズヒトが死ぬ間際に2人程殺していたので、封印宮の前で待っていれば必ずそいつらは姿を現した筈なのだ。

 だが、当時の俺達はその事に気付かず――カズヒトが封印宮に居た以上、知らないのは当たり前であるが――そいつらの復活の前に封印宮前から去ってしまっていたのだ。


「ごめんなさい……」


 ナツメが当時の失態を悔やんでか、そう頭を下げる。


「……あーえっと、別にナツメはんを責めたいわけや無かったんやけど……」


「そうだ。どっちかというと、カズヒトの事をすっかり忘れてた俺が一番悪いさ」


 カズヒトが殺した奴らについてはともかくとして、カズヒトが死んだ可能性は高かったのだから、彼の復活を待つくらいはしても良かったのだ。


「まあ、誰が悪かったかよりも、これからどうするかじゃないかな!」


「そうだな。ハルカの言う通りだ」


 今更悔やんでも、時間は戻らないのだ。

 ならば次善の策を講じる他無い。


「ブリギッド、そのネズミなんたらって連中が復活したら事情を聴いてきてくれないか?」


 もしかしたら顔や、名前を見た可能性もある。

 でなくとも、何か気付いたことがあれば、そこから犯人特定に繋がるかもしれない。


「りょーかいや。……そういやカイトはんらの首尾はどうやったん?」


「ああ。エリアボスは無事倒したぞ。ほらこれ」


 そう言って、ボスドロップ素材と精霊モンスターを狩りまくった事で得た素材を、彼女達に提示する。


「ちょっ、なんやこの量……。えらい数を狩ったんちゃう?」


「そうだな……。丸1日以上、ひたすら狩りを続けてたからな」


 あんだけ長時間ぶっ続けで狩りをしたのはこのゲームでは初めての事だったと思う。

 まあ、あれだけ効率のいい狩場があれば、そうしたくなるのも已む無しだろうが。


「ふぁー。ほんまかいな? 良くそんな真似できるわ……」


 VRゲームでの活動は、実際に肉体を動かさない分、余計に脳への負担が大きいと言われている。

 多分、肉体の疲労によるストップが掛からず常に全力で動けてしまうから、逆に無理をしてしまうんだと思われる。

 そんな訳でいつもは、定期的に睡眠を取るようにしていたが、あの時はあまりの効率の良さについついハッスルしてしまったのだ。

 正直ちょっと反省はしてはいる。


「流石というかなんというか……。やっぱカイトはんらを選んだうちらの眼は正しかったわ」


「まっ、損な選択だったとは言わせないように努力はするさ」


 それは最高のVRプレイヤーを自認する俺にとっては当然の事だ。


「ほな、こっちも今ある分の装備を渡すわ。あと約束の品や」


 そう言っていくつかの装備と共に、〈天使の首飾り〉を4つ渡してくる。


「おお、早かったな。大丈夫か? 無理はしてないか?」


「いやー。あんだけの品物もろてしもうたら、こっちも頑張らなあかんわな」


「そうか……」


「あと、こっちはどうするん?」


 続いて4人分の〈闇夜のローブ〉が提示される。


「ああ、助かる。このまま俺達で使わせてもらうよ」


 〈闇夜のローブ〉が持つ高い隠蔽能力。これを破る方策を練る必要があるのだ。

 出来ればカズヒトに教えてもらった探知系のアビリティも、この機会に習得したいところだ。

 

「うちらも他に基礎レシピに無いアイテムが生産出来ないか、色々研究してみるわ」


 〈闇夜のローブ〉や〈天使の首飾り〉などといったレアアイテムが市場にほとんど出回っていない理由は、単に素材が手に入りにくいだけでなく、その作成レシピの入手が非常に難しいのも原因である。

 通常の生産系アビリティは、そのレベルを上げていくと共に、自動的に基礎レシピと呼ばれるアイテムの作成方法を覚える事が出来る。

 だが、そういった基礎レシピ以外にも、作成可能なアイテムは存在する。

 では、どうやってそれらのアイテムの作成方法を知るかというと、いくつか方法はあるのだが、もっともメジャーな手段は、やはり単純な試行錯誤によって見つける事だ。

 色々な素材の組み合わせを試し、それが上手く合致すれば作成に成功する。

 それだけだと完全にノーヒントの当てずっぽうしか手段が無いようにも思えるが、実際は失敗であっても、成功に近いレシピだったならばなんらかの兆候が見られるらしい。

 それら僅かな兆候から、正解への道を絞り出す研究をブリギッド達はするという訳だ。

 どのような隠されたレシピが存在するのかは謎だが、素材が多ければ多いほどその幅は広がるだろう。

 なので、俺達に最前線で手に入れた素材の提供を受けている彼女達は、かなり有利な立場であると言える。


「近いうちに朗報を届ける事を、約束させて貰うわ」


「ああ、期待しているぞ」


 隠しレシピで作れる装備は、傾向としては有用な品が多いようなので、上手く発見出来れば他のプレイヤー達に対し、優位に立てるかもしれない。

 そういった意味では、既にラキシス達に出回ってしまったとはいえ、そのレシピを提供してくれたガミガミ達は太っ腹だったとも言える。

 まあ、彼らがその辺の知識を利用してぼろ儲け、なんて事をやるイメージはあまり湧かないが。


「ほな、うちらはこれで」


 新たな素材が手に入った事で、ウキウキしながらブリギッド達は去っていく。

 まあ、楽しそうで何よりだ。

 彼女達を見送った後、俺達も一旦、睡眠を取るべく各々の個室へと散っていった。



「さてと、〈闇夜のローブ〉の実物が手に入った事だし、ここらで俺達も〈足音探知〉と〈気配探知〉のアビリティ取得に励むとするか」


 ガミガミ達からの報告で、それらのアビリティを取得すれば、〈闇夜のローブ〉の隠形能力に対抗できることは既に判明している。

 ただ、彼らの話では、思った以上にその習得は大変だったとのこと。

 確か、カズヒトがどうしてそれらを入手出来たのかが不思議だったとも話していたな。


「えっと、たしかパーティを解散して、互いにそのローブを着た状態で意識を向け続けるんだよね」

 

 カズヒトから得た情報を元に、ガミガミ達が試行錯誤の上で生み出した、簡単習得法だそうだ。

 彼らは〈闇夜のローブ〉の作成法を既に提供しているので、本来なら俺達にそこまで教える必要は無いのだが、快く情報を流してくれたのだ。

 まあ、心の中で借りの一つとしてメモしておく。

 彼らがピンチの時にでも、格好良く倍返ししてやるとしよう。


「ハルカ、全員に〈フェイド〉の魔法を頼む」


「オッケー」


 〈フェイド〉の魔法で互いの隠形能力を更に高める事で、より効率的に習得できるらしい。


「(……そこにいるのは分かっているのに、少しでも気を抜くと見失ってしまいそうですね……)」


 現在は、互いに姿を隠した状態である程度距離を取っている。

 とはいえ、物理的に身を隠した訳では無いので、目を凝らせば視認出来はするのだが……。


「(本当だな。集中していてもこれなんだ。少しでも気が抜けている瞬間を狙われたら、今の俺達じゃ奇襲を避けるのは難しいだろうな)」


 現状を鑑みるに、ラキシスにあっさりと奇襲を決められてしまったのは、やむを得なかった事なのかもしれない。

 まあ、例えそうであったとしても、悔しい思いをしたという事実になんら揺らぎは無いのだが。


「(……ねぇ、この状態をあとどれくらい続ければいいの?)」


「(確か、ガミガミ達の話だと1時間くらいらしいぞ?)」


「(ええぇ……)」


 これ程の脅威に対抗できるアビリティを僅か1時間で獲得できるのだから安いモノだと思うのだが、ハルカの声はなんだかゲッソリしている。


「(ちゃんと集中しろよ。出ないと折角の頑張りが無駄になるかもしれないからな)」


 そうハルカに注意しつつ、ナツメやユキハの方へと意識を向けると、なんとなくだが彼女達もこちらに意識を向けているのを感じる。

 なんだか妙に気恥ずかしいな。


 そんな思いを抱きつつ、時間が過ぎていく。


「(おっ、習得したみたいだな)」


「(あっ、ボクもだ)」


 ナツメやユキハもどうやら無事アビリティを習得出来たらしい。


「(おおっ、凄いなこれ)」


 習得後に、ハルカへと意識を向けてみると、彼女の存在をキチンと把握できるようになった。


「(ハルカ、足音を消しながら歩いてみてくれ)」


「(うん、こうかな……)」


 彼女の〈忍び足〉はかなり高いレベルなのだが、ある程度集中すれば聞き取れるくらいにこちらの感度は高まっていた。

 これならば、普段通りの警戒度を保っていれば、〈闇夜のローブ〉と〈フェイド〉、それに〈忍び足〉を併用されても、接近される前に探知する事は十分に可能そうだ。


「とりあえず、これでもう無防備なまま奇襲を受けるのは避けれそうだな」


「そうね。〈天使の首飾り〉もあるし、次はそう簡単にはやらせないわ」


 ナツメがかなり意気込んでいる様子が見て取れる。

 ある意味では俺以上に悔しい思いをしたのが彼女だ。

 なのでやる気も一入(ひとしお)なのだろう。


「あとは、奴のユニークアビリティへの対策だな」


 奇襲は封じたとはいえ、やはりあのこちらの動きを止めるアビリティの存在は厄介だ。

 なんとしても弱点を暴いて、対抗策を講じる必要がある――のだが、これ以上については現状では手の打ちようがない。

 それに、そればかりに時間を費やす訳にもいかないしな。


「対策を考えつつ、今はゲーム攻略を進めるとしようか」


 ラキシス達への応急処置が済んだ事で、俺達は思考を次のエリアの攻略へと向けるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ