表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/72

63 分裂の条件

 現在、俺達は"精霊の樹海"の探索に3度目の挑戦中だ。

 1度目の挑戦においては、〈ファイアエレメンタル〉の奇襲によって周囲の草木ごと焼かれて撤退、2度目の挑戦では〈アイスエレメンタル〉に先手を打たれ足元の地面を凍らされて戦闘続行不能となり撤退という有様だった。

 なので次こそはこちらから先に仕掛けるぞ、と意気込んでいたのだが……。


「何よこれっ!? 分裂!?」


 俺達の前に立ち塞がった〈アースエレメンタル〉に対し、ナツメが先制攻撃を仕掛けた瞬間、なんと敵が4つに分裂したのだ。

 そいつらは〈ファイアエレメンタル〉、〈ウインドエレメンタル〉、〈ウォーターエレメンタル〉、〈サンダーエレメンタル〉と種類の異なる精霊に分裂しており、元からいた2体の〈アースエレメンタル〉と合わせて敵の数は現在6体。

 事態はかなり混迷を極めていた。


 ただ唯一こちらに幸いだったのが、分裂によって誕生した精霊らは、すぐには動く素振りを見せなかった事だ。


「くそっ、ともかく動いてる2体から先に仕留めるぞ!」


 さっきのようにまた分裂される危険性はあったが、であるとしても、どういう条件で分裂するのかは今後の為にも確認は必須だ。

 いくらなんでも、分裂した個体が、再度分裂を繰り返し無限増殖するなんて事は、ゲームバランス的に考えてまず有り得ないしな。


 動揺する心を抑えて魔法の矢で〈アースエレメンタル〉を射貫く。

 幸いにして今回は分裂現象は起こらず、その一撃で敵のHPは0になりあっさりと粒子化した。

 

「成程。どうやらHP自体は大したことないみたいだな」


 隣では、ハルカがもう1体の〈アースエレメンタル〉を炎の魔法で倒していた。


 どうやら一撃で軽く屠れる程に奴らのHPは少ないらしい。

 先手さえ上手く確保できればどうにでもなる事が分かり、少しだけホッとする。

 とは、そう安心してばかりも居られる状況では無い。


「分裂した奴らが動き出したわ!」


「各自、近くの個体に攻撃!」


 ナツメが〈ファイアエレメンタル〉、俺が〈ウインドエレメンタル〉、ハルカが〈ウォーターエレメンタル〉、ユキハが〈サンダーエレメンタル〉へと攻撃を仕掛ける。

 たったこれだけの指示で、各自が目標が被らないように攻撃出来る辺り、俺達の連携も大分習熟してきたと言えるだろう。

 だが、それを喜んでいる余裕は残念ながら無いらしい。


「くそっ、今度は〈ファイアエレメンタル〉以外が分裂かっ」


 (6-2-1)×4で敵の数は現在12体まで増えてしまっている。

 敵の数がこちらを上回ってしまった以上、敵の攻撃を一息で潰すのは難しくなった。


「くそっ、これ以上は危険だな。撤退するぞ!」


 出来れば炎・氷以外の精霊がどのような攻撃を行うかを確認したかったが、こうも数が多いと命の危険が大きい。

 分裂直後で奴らがまだ動きだしていない今しか、逃げる暇は無い。


 こうして3度目の挑戦は辛くも失敗に終わった。



「まさか殴ったら分裂するなんてね……」


「全くだな。一撃であっさり死んだ個体もいれば分裂する個体もいる。その差は一体なんだろうな?」


 最初、分裂は〈アースエレメンタル〉固有の能力かと思ったが、それはすぐに違うと判明した。

 4種類の精霊がそれぞれ分裂するのを見てしまった以上、分裂はその属性に関係なく精霊モンスター全てが持つ能力だと判断するしかない。

 だが、その分裂がどういった条件で起きるのかが分からないのだ。

 

「一度分裂すれば、それで御仕舞という訳でも無さそうですしね……」


 ユキハの言う通り、〈アースエレメンタル〉から分裂した個体が更に分裂をしている。

 である以上、分裂が起こる条件が不明なまま戦えば、悪戯に敵の数を増やす結果になってもおかしくないのだ。

 

「流石にランダムって事は無いわよね?」


「ああ、ランダムだったら、いくらなんでも分裂率が高すぎる。あの調子だと、倒しても数は減るどころか増える一方だぞ」


 分裂を繰り返すうちに、分裂率が下がるなんて可能性も考えられるが、今持っている情報ではそれは検証しようが無い。


「でもさ。経験値やドロップは結構おいしかったよね?」


 確かにそのHPの低さにしては破格の経験値量だったし、ドロップ素材は最前線のエリアだけあって、他では見かけないアイテムばかりだった。

 流石に一体辺りの経験値量は〈リトルワイバーン〉や〈エアロタイガー〉程では無いが、それでも倒すのに掛かる時間を勘案すれば確実にこちらの方が美味しい。

 問題は、ただ分裂させるだけでは倒した扱いにはならず、安定して狩る事が出来ない点か。


「……そうだな。分裂の条件を突き止めて、分裂頻度の調整なんかが出来ればいいんだがな……」


 もしそれが可能なら、色々と夢は広がる。

 一箇所で敵を適度に増やしながら狩り続ける、なんて真似も可能になるかもしれない。

 そうすれば敵を探しながら狩るよりも遥かに効率の良い狩りが実現するだろう。

 まあ、現状ではそれは所詮夢物語に過ぎないがな。

 まずはどうにか勝利を得る事から始めなければならないだろう。


「とりあえず、挑戦を繰り返して、何が分裂の条件なのかを突き止めるしかないな」


 情報が足りない以上、それしか手が思い付かない。

 基本はやはり試行錯誤なのだ。


「そうね。面倒でもそれがきっと近道でしょうね」


 そんな訳で、俺達はめげる事無く何度も何度も精霊達に挑戦を繰り返したのだった。

 その結果、各精霊モンスターの攻撃方法の確認は一通り完了し、分裂は精霊モンスター全てが持つ能力である事が確定した。

 そして、その分裂の傾向についてもだんだんと見えて来た。


「ふむ。分裂をする種類が明らかに偏ってるな」


 これまで戦った結果、〈ウォーターエレメンタル〉〈アイスエレメンタル〉〈アースエレメンタル〉は余り分裂せずに倒せている事が多い。

 対して、〈ファイアエレメンタル〉〈ウインドエレメンタル〉〈サンダーエレメンタル〉は分裂ばかりで中々倒せていない。


「そうね。もしかして――」


「ああ、俺もそんな気がしているな」


「ふふん。ボクも今度はちゃんと分かってるよ!」


 そう主張するハルカ。その隣のユキハも同じらしい。

 どうやら全員の意見が一致を見たようだ。これは決まりかな?


「良し、この仮説が正しいか実際に確かめてみるとするか」


 もう何度目かも分からない挑戦へと俺達は向かう。


「〈ファイアエレメンタル〉が4体か。丁度いいな。ハルカ、ユキハ」


「任せてよ」「大丈夫です」


 そう言って彼女達は杖を構え、俺とナツメの隣に並ぶ。


「行くぞ!」


 合図と共に、ナツメは双剣で敵へと斬りかかる。

 その隣では、ハルカとユキハが魔法では無く、杖で直接殴りかかっている姿が見える。


「やったわ!」「ボクもだよ!」「こちらもです」

 

 3人がそれぞれ敵を撃破するのを確認し、残り1体へと俺は魔法(・・)の矢を放つ。

 すると、残った〈ファイアエレメンタル〉は消滅する事なく、4体の精霊へと分裂する。


「……やはりそうか」


 その事態に俺は確信を得る。

 分裂した敵を始末し、その後も念のため何度も検証を繰り返す。


「決まりだな。分裂の鍵は、物理攻撃か魔法攻撃かだ。そして、精霊の持つ属性の種類によってどちらで分裂するかが変わる」


 〈ウォーターエレメンタル〉〈アイスエレメンタル〉〈アースエレメンタル〉は、物理攻撃を受けると分裂する。

 逆に、〈ファイアエレメンタル〉〈ウインドエレメンタル〉〈サンダーエレメンタル〉は、魔法攻撃を受けると分裂するのだ。


 分裂する種類に偏りが出たのは、うちのパーティの攻撃手段が魔法寄りだったからだ。

 これがもし均等だったり、どちらかのみだったら、きっと気付くのはもっと遅くなっていただろう。


「奇襲の警戒は必要だけれど、これで安定した狩りが出来そうね」


「だな。分裂の条件にランダム性が無いから、数の調整もそう難しくは無いだろう。しばらくはコイツラを狩りまくって、レベル上げに勤しむとするか」


「……ねぇ、その前にそろそろ一度帰らない? ボク、流石にちょっと眠たいよ」


「わ、わたしも……」


 そう言えば、ここに来てからもう丸1日が経とうとしていた。

 俺は寝溜めをしていたのでまだいけそうだが、彼女達はそうでは無いのだ。


「そうだな。一度寝に帰るとするか」


 一度睡眠を取って、集中力を回復させた方がより効率的に狩りが出来るだろう。

 そんな訳で、俺達は"始まりの街"へと帰還するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ