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61 アイテム作成依頼

 フルレイド参加メンバーとの話し合いを終えた俺達は、ギルドハウスへと帰還する。

 するとそこには、ブリギッド達が待ち受けていた。


「おっ、カイトはんやないか。なんや色々大変やったみたいやけど、なんや元気そうみたいやな」


「ああ、お蔭さまでな」


 実際、彼女に貰った"天使の首飾り"は非常に役に立ってくれた。

 最終的には死という結果までは変えられなかったものの、あれのお蔭で得られた情報もかなり多い。


「……それで出来たら詳しい状況をうちらにも教えて欲しいんやけど。昨日のナツメはんらは、とても訊けるような状況やなかったし……」


 それ程に、特にナツメの取り乱し具合は酷かったらしい。

 確かに封印宮前で再会した時にはいつもと違う感じを受けたが、どうやらその比では無かったらしいのだ。

 うーむ、いまいち想像出来ないな。


「そうだな。ちょっと頼みたい事もあったし、情報共有といこうか」


「りょーかいや」


 そんな訳で、我がギルド〈シーズナルドミネイター〉の面々は会議用の部屋へと集まる事になった。


「早速やけど、一体全体、何があったかまずは教えてくれへんか?」


「ああ、実はな――」


 苦戦しつつもどうにか2体のエリアボスを倒した事。その直後にラキシスという男が率いる〈全民公敵〉と名の集団に襲われた事。その結果として、俺と"白の剣士"カズヒトが死んだ事、などについて語った。


「成程なぁ。街で流れてたPK集団の噂の正体がそいつらやったって訳やな。うちらがあの時もっとハッキリした情報をカイトはんに渡せとったら良かったんやけど……」


 ちょっとばつの悪そうにそう呟くブリギッド。


「いや、折角貰った情報を活かせなかった俺が悪いさ」


 実際、ブリギッドに貰った情報だけでなく、ガミガミ達が隠形効果を持つ黒ローブを持っている事、姿を消す〈フェイド〉のスキルの存在。

 個々の情報の断片を俺達は事前に得ていたのだ。

 問題は、それらを上手く繋ぎ合わせて、あの事態を防ぐ事が出来なかった事だ。

 確かに、あんな事態が起こるなんて想定するのは難しかったと思う。

 だが、いかに難しいかろうとも出来なければ、今回のようにあっさりと他人に出し抜かれる、何て事態にもなってしまうのだ。

 である以上、もうこんな失態は起こさないようにしなければならない。


「それで、何か奴らについて知っている情報はあるか?」


「そやなぁ……。なんでも〈蒼翼騎士団〉のギルマスが殺されたって、大騒ぎになっとったで?」


 その事は既にシン達から聞いている。

 驚くべき事態ではあるものの、これまで得られた情報から判断すれば十分あり得る話であるのだ。


「そんでな。なんでもメンバーの中にスパイがいるんじゃないかって、揉めだしてあのギルドは今、めっちゃ大変な事になっとるみたいやで」


 それは初耳だ。

 とはいえ、あのギルドはブルーロビンの類まれなカリスマ性で成り立っていたギルドだ。

 それが一時的とはいえデスペナルティによって不在になったのだ。

 一気に不安定になってもそれは別におかしい話では無いだろう。


「強さの象徴やったギルマスがあっさり殺されてギルド自体を見限った連中、スパイの追及で喚き散らす連中、ブルーロビンの帰還を静かに心待ちにしとる連中、みたいな感じでいくつもの派閥に分かれて、そりゃもうカオスな事になっとるみたいやな」


 もう既に何人かギルドから脱退者が出ているらしい。

 その流れでうちに移籍したいという連中もいたらしいが、それはブリギッドが独断で適当に流して断ったそうだ。

 

「まあ、流石にあんな日和見な連中、カイトはんは絶対すかんやろと思ってな。勝手な事やってしもうたんは謝るわ。でもうちのこの判断は間違って無いと思っとる」


 俺が不在の時点の話のようだし、ナツメ達はそれどころでは無かった。ならば彼女が独自で判断したのもやむを得ない事だろう。

 それに話を聞く限り、その判断自体に俺も特に異論は無い。


「まあ、今回は事情も事情だし、仕方ないさ。ただ、今後はそういうのがいたら一応俺の判断を仰ぐように頼むな」


「そりゃ勿論や。次からは、あんな連中の相手なんかカイトはんにすぐに丸投げさせて貰うわ」


 どうやら顔も知らぬ彼らは、ブリギッドの心象をかなり悪くしたようだ。


「そういえば、うちらに何か頼みたい事があるとか言ってへんかった?」


「ああ、そうだ。とあるアイテムをブリギッド達に作って欲しいんだ」


 俺はガミガミ達から教えて貰った、隠密能力を持った装備である〈闇夜のローブ〉の作成をお願いする。


「カナやん、いけるかいな?」


 ブリギッドが後ろに控えていた金屋子へと話を振る。


「カナやん、じゃなくてカナちゃんって呼んでっていつも言ってるでしょ? うーん、アビリティレベル的には問題なさそうだけど、素材の在庫があったかなー?」


「……取引所じゃ手に入らないのか?」


「ないことも無いんだけどね。最近その辺の素材がちょっと高騰しててね。結構高くつくよ?」


 〈闇夜のローブ〉の素材が高騰か。

 タイミング的にも、奴らが量産する為に買い占めたんだろうな。


「ふむ。無理を言ってるんだし、この際、金について細かい事は言わないつもりだ。どうしても高すぎるような、俺達が直接素材を集めに行く手段もある訳だしな」


 ガミガミ達は3rdエリアの時点でこの装備を作っていたのだ。

 である以上、俺達にだって素材を集める事が出来ない道理は無いのだ。


「分かった。なら頑張るよ~」


「ついでにもう一つ頼みたい。素材の値段が高騰したって事は、多分素材を買い集めた連中がいる訳だ。どんな奴らか探ってくれないか?」


 取引所を介した取引の場合、売った者は買った相手のプレイヤーネームを知ることが出来る。

 そこから、正体を探れないかと思ったのだ。


「うーん。仲介役のプレイヤーを間に何人も噛ませとったら、多分そこから先は追えんけど、それでもええならこっちは構へんよ」


 それで十分だ。

 たとえ成功率が低くとも、色々なルートから探りを入れるべきだからな。

 

「それと、以前に貰った〈天使の首飾り〉だが、あれを全員分用意する事は可能か?」


「うーん。あれは結構貴重な素材を使うとるからなぁ。ちょっと難しいかもしれへん」


 かなり強力な効果を持つ以上、それは仕方ないのだろう。

 そんなレアアイテムを俺との決闘で使ったカズヒトは、ある意味大物なのかもしれない。


「これらを自由に使っていいと言っても?」


 そう言って、"竜虎の平原"のエリアボス戦でゲットした種々の素材アイテムを提示する。


「ちょっ。これがそうなんか……。これ全部売り捌けば、それだけで一財産やで」


 だろうな。

 ただゲーム内で資産を溜め込んでも、俺的には大して意味は無い。

 それよりも装備の更新や、消費アイテム類の補充に充てた方がよっぽどマシだ。


 これは多くのライトプレイヤーが勘違いして事なのだが、装備品の更新は相場がある程度下がるまで控えて方がいいという考え、あれは間違っていると俺は思っている。

 確かに装備の入手費用だけを考えてれば、それが一見正しく思えるが、その入手を待つ時間で、最新の装備で最前線で狩りをしまくった方が、実は効率的だと俺は思っている。

 特に、このゲームのように攻略速度が速い場合、最前線に食らいつくにはそれ相応の装備が必要だ。

 そこをケチれば、いくら優秀なプレイヤーでも競争から振り落とされるに違いない。


「それで、いけそうか?」


「まあ、こんだけ取引材料があれば、なんとでもなるな。……余ったのはうちらが好きに使ってもええんやろか?」


「ああ。好きにしてくれ」


 装備の更新や消費アイテムの補充を彼女達に任せている以上、俺達には大して資金は必要では無い。

 といいつつも、倉庫の資産は増える一方なのが現状だが。

 現在は頑張れば頑張る程、資産が増える正のスパイラルだが、攻略の足を止めればその限りでは無い。

 なのでそういった意味でも、攻略の不安要素となるラキシス達は確実に排除しなければならない。


「頼み事はこれで仕舞いか?」


「あとはそうだな……。ラキシス達について何か分かったら、すぐに連絡してくれ。それと、"竜虎の平原"以外のエリアについての情報は無いか?」


 ラキシス達への対応も大事だが、俺達の本来の目的は攻略を進める事だ。

 だが、残念な事にシン達やガミガミ達から聞いた以上の情報は無いようだ。

 まあ、上位プレイヤーの多くがゴタゴタに巻き込まれている現状ではそれも已む無しか。

 折角ここまで順調だったのに、まさかプレイヤー同士で足の引っ張り合いになるとはな……。

 確かラキシスの奴は、それ自体が目的みたいな事を言っていた訳だし、そうなると今の状況は奴の思い通りって事になるな。

 まったく、イラつく現実だ。


「一応これで話は終わりだな」


「ほな、うちらは失礼させて貰うとするわ。さあて腕がなるわー!」


「ふふっ。何から作ろうかしらね」


 俺に大量のレア素材を手に入れた事でほくほく顔でブリギッド達が去っていく。


「さてと、俺達は次に攻略するエリアの選定をしないとな」


 情報は全く持って足りない状況だが、それでも動かない訳にはいかない。

 だが、色々と意見が出はするものの、これといった決め手となる情報が存在しない。


「ならいっそのこと、一番情報が少ない"精霊の樹海"に向かうのはどうかしら?」


 フルレイドのメンバーが誰も行った事が無かったこともあり、他と比べても圧倒的に情報が少ない。

 得られた情報としては、「あそこはヤバい」という漠然とした言葉だけであり具体的なモノは無かった。

 だがそれは裏を返せば、ライバルがかなり少ない事を意味する。


「そうだな。決め手がない以上、そんな決め方もありっちゃありか」


 †ラーハルト†達やガミガミ達と攻略エリアが被るのを出来れば避けたいという思惑も重なり、こうして次の目的地は"精霊の樹海"へと決まったのだった。


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