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50 ボス釣り出し作戦

 倒しても倒しても湧いて来る雑魚Mob達をなぎ倒しながら、俺達急造フルレイドパーティは"竜虎の平原"の奥へと進んでいく。

 目指すは勿論、エリアボスがいる場所だ。


「しかし、奥に進めば進むほどに出会う敵の数が増えていますね。良くカイト達は1パーティだけでエリアボスまで辿り着けましたね」


 シンが感心したような口調でそう言う。


「まあ、確かにかなり苦労したな」


 思い返せば、あの時は全員のMP残量がかなり少なくなっていたし、結構ギリギリだったような気がする。

 対して今回は3パーティで交代で敵の相手をしているので、MPの消費がかなり抑えられている。

 なので前回のように遠目で見ただけで逃げ帰る事なく、色々と情報収集が出来そうだ。


「さて、そろそろだぞ」


 もうすぐで2体のエリアボスとその御付きの大群がいる辺りだ。

 ここまでは前回よりも大分ハイペースかつ、低消耗で来る事が出来た。

 あとは、どれだけエリアボスの情報を得られるかだな。

 無論、理想はこのまま倒したい所だが、正直それは難しいだろう。

 〈マザーワイバーン〉と〈ストームタイガー〉、2体のエリアボスの能力は全くの未知数な上、敵の数が多すぎる。

 今回は、ある程度の情報が得られたら一時撤退するのが無難だろう。

 というか、そういう方針に事前の打ち合わせで決めてある。


「はー。なんだこりゃ。すげえ数だな……」


 100を超えるモンスターの大群を目にして、†ラーハルト†が感嘆とも呆れともつかない声をあげる。


「本当じゃのう……。この守りを掻い潜りボスの首を取るのは至難の業じゃな」


「全くですね。ボスまでは楽にこれたので、この勢いでそのまま、と行きたかったのですが、流石に難しいようですね」


「事前に言っておいたように、エリアボス2体の能力は不明だ。なんで、とりあえず、どうにかあいつらをこっちに引っ張り出したい所だが……」


 その周囲に大量の雑魚Mobが屯しているせいで、それを為すのはかなりの難事だ。


「ふむ。では我の出番じゃな。どれ、ちょっと(つつ)いてみようかの」


 ガミガミが一歩前に出て、エリアボスを釣り出す役目を買って出る。


「大丈夫なのか?」


「何、我に任せておれ」


 そう言ってガミガミは、アイテムボックスから小瓶を取り出し自分にその中身を振り掛ける。


「何のアイテムを使ったんだ?」


「何、ただの匂い消しじゃよ。〈フェイド〉」


 そう答えながら黒ローブのフードを被ったガミガミは姿を消す〈光魔法〉スキルを使用する。

 途端、急激にガミガミの姿が消える。

 一応、同じフルレイドに所属するメンバー同士なので、頭上のプレイヤーネームが見える為どうにか位置は分かるが、でなければ間違いなく見失っていただろう。

 それ程に見事な隠形技術だった。


「ではちょっと行ってくるのじゃ」


 ガミガミがモンスターの大群の元へと、ゆっくりと歩いていく。

 もう普通ならモンスターどもの探知圏内の筈だが、動きに変化は無い。

 その間にもガミガミは更に進み、ついには群れの中へと入っていく。


 〈フェイド〉の隠形効果は決して完璧では無く、特に動物型のモンスター相手では、消しきれなかった足音のせいで、近づけば察知されてしまう。

 だが、ガミガミは複数の敵の真っただ中にあって、未だ見つかってはいない。

 黒ローブの助けもあるだろうが、余程上手く足音を消しているのだろう。

 俺も隠密行動は割と得意な方ではあるが、それでもあれはちょっと真似できなさそうだ。

 

 動物型モンスターには、嗅覚で探知しているタイプも存在するが、そちらは先程使った匂い消しのアイテムで対処しているのだろう。

 まあ、匂い消しのアイテムなんて、俺達には作れないし、それどころか市場にも出回ってないので、かなり特殊な品だ。

 ガミガミ教ってもしかして、ただの宗教組織なんかじゃなくて、実は隠密集団かなんかじゃないのか?


 そんな疑問を俺が耽っているのを余所に、ガミガミは〈マザーワイバーン〉の傍までやって来た。

 

「(さて我はこれより攻撃を仕掛けた後、即座にそちらへと退避する故、後は頼んだのじゃ)」


 フルレイド専用の通話で、そんな連絡が飛んで来る。


「シッ!」


 俺が了解の返事を返してからおよそ10秒後、ガミガミが〈マザーワイバーン〉へと攻撃を仕掛ける。

 今回は飽くまでエリアボスを釣り出すのが目的なので、硬直があるスキルではなく、ただの通常攻撃だ。

 威力が大してないので、〈マザーワイバーン〉は怯みもしなかったが、視線をガミガミの方へと向ける。

 同時に攻撃行動を取った事で〈フェイド〉と黒ローブの隠形効果が切れた為、周囲の〈リトルワイバーン〉の視線が一斉にガミガミへと向く。


 だが、その時には既に彼は一目散にこちらへと走り出していた。

 そしてその速度はかなり早い。

 だが、〈リトルワイバーン〉らは空を飛んでいる為、早さはそれ以上だ。


 存在に気付くまでの一瞬と空へと飛び立つのに掛かる時間、その僅かの隙にそこそこ距離は稼いだものの、あっという間に追いつかれそうになる。

 

「ギャルルッ!」「ギャァ!!」「グギャァ!!」


 何体もの〈リトルワイバーン〉に加え、〈マザーワイバーン〉がガミガミへと攻撃を仕掛けて来る。


「甘いのじゃ」


 ガミガミは背中に目が付いているかのように、ジグザグに走りながらも、的確に敵の襲撃を回避していく。


「やるじゃねぇか! 俺らも負けてらんねぇな!」


 †ラーハルト†がガミガミへと称賛の声を贈る。

 それには俺も同意見だ。

 これだけの妙技を見せられれば俺達も奮起しない訳にはいかない。


「そろそろこっちにやってくる。絶対にガミガミを助けるぞ!」


 危地で見事に仕事をやり遂げた彼をこのまま死なせる訳にはいかない。

 幸いにして、彼を追ってきているのは、大群の中のほんの一部だ。

 他の個体も動く素振りは見せているので、決して油断は出来ないが、それでも全部同時に来られるよりはマシだろう。


 ただ、一つ不安なのが、〈ストームタイガー〉と〈エアロタイガー〉達の動きだ。

 その視線は一見ガミガミの方へと向けられているように見えるが果たして……。


 警戒対象が多い為、ゆっくりと考える余裕が無いのが辛い所だ。

 そしてついにガミガミがこちらへと戻って来た。

 もちろん、後ろには飛竜どもがくっついている。


「ウォークライ!」


 逃げてきたガミガミを庇うように†ラーハルト†が前へと躍り出て、敵のターゲットをスキルで強引に奪い取る。

 

「お疲れさん。あとは後ろでゆっくり休んでな」


「いや、回復さえ貰えれば我はまだまだ戦えるのじゃ」


 見ればガミガミのHPゲージは残り4分の1以下まで減っていた。

 直撃は避けていたようだが、度重なる強襲を前にじわじわと削られていたのだろう。

 黒ローブで覆われているせいでハッキリとは分からないが、多分ガミガミは俺以上に素早さ重視の軽量装備みたいだしな。


「分かった。じゃあもう少し頑張って貰おうか」


 そう言っている一瞬に、こちらのヒーラーから一斉に回復魔法が飛んできて、ガミガミのHPがあっという間に回復していく。


「うむ、任せるのじゃ!」


 こちらは13人、対する相手は〈マザーワイバーン〉に〈リトルワイバーン〉が20体近く。

 まあこれくらいの戦力差なら、勝算は十分あるだろう。

 まったく、ガミガミ様々だな。こんな御利益があるなら、俺もガミガミ教とやらに入信してもいい気分だ。


「グギャァァ!!」


 本格的な戦闘開始を告げるように〈マザーワイバーン〉が咆哮を上げる。

 それは一見ただデカいだけの声のように思えたが――


「不味いです! 敵にバフが掛かっています!」


 どうやら、強化バフを掛けるスキルだったらしい。

 ただでさえ厄介な〈リトルワイバーン〉が更に強化とか悪夢だな。


「†ラーハルト†! タゲいけるか?」


「ああっ! 攻撃がちょっと重くなっただけで、特に問題は無いぜ!」


 攻撃が重くなったのが、問題が無い訳ないのだが、奴が大丈夫だと言っているのだし、信頼するとしよう。

 一応、シンにも確認の視線を送るが、彼は頷きで返してくれた。


「遠距離アタッカーで、まずは〈リトルワイバーン〉共を一体ずつ地面へと叩き落とすぞ!」


 そうした所を、近距離アタッカーの連中がトドメを刺すという寸法な訳だ。

 

 まずは基本戦術"敵の数を減らす"によって、こちらに優位な状況を作り出す。

 〈マザーワイバーン〉を倒すのは最後でいい。


 矢や魔法が空を飛ぶ〈リトルワイバーン〉に次々と突き刺さり、地面に撃ち落としていく。

 どうやら事前練習の成果が出ているようだ。

 落ちた傍から、ナツメやガミガミなどの近接の連中がトドメを刺しにいく。


 〈リトルワイバーン〉共が何体も倒された事で、〈マザーワイバーン〉は後方の俺達に憎悪の視線を一瞬向けるが、前に立ちふさがる†ラーハルト†を無視できずにいる。

 対する†ラーハルト†も、大分奴らにボコボコにされたようだが、シンの支援によってどうにか持ち堪えている。


「これでラストよ!」


 バフでは耐久力が強化されていなかったこともあり、20体いた〈リトルワイバーン〉共は、俺達の猛攻の前に次々にその数を減らし、遂には0になった。


「よし、次はマザーだ!」


 1体となって尚威圧感のある姿を見せるが、それでも数ではこちらが圧倒的優位だ。

 そしてこれまでの感じから決して倒せない相手では無い。

 そう思っていたのだが――


「グギャグギャァァ!!」


 先程とは違った響きの叫びを上げる〈マザーワイバーン〉。

 すると、遥か後方の初期位置で待機していた〈リトルワイバーン〉達が動き出す。

 と、同時に、これまで静観を決めていた〈ストームタイガー〉と〈エアロタイガー〉共が一斉に動き出す。


「ちょっ、これは不味くないか?」


 明らかに奴らの探知圏外にも関わらず、こちらへと脇目も振らず向かってくる。

 どうやら、エリアボス戦はまだまだここからが本番のようだ。


気が付けば50話ですね。ついでに20万字突破ですかね。

結構遠くまで来た気分です。


まだまだ続く予定ですので、引き続き応援の程、どうぞ宜しくお願い致します。

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