47 フルレイド準備(中編)
"竜虎の平原"のエリアボスに挑むべく、†ラーハルト†達とガミガミ達をフルレイドに誘う事にした俺達は早速、彼らに連絡を取ることにした。
「よっ、†ラーハルト†」
「おっ、廃人か。珍しいな。何か用か?」
「率直に言おう。お前らの力を借りたい」
「……エリアボス絡みの話か?」
「ああ。詳しい話は、直接会ってしたい。どうだ?」
フレンド通話はあくまで個人間でしかやり取りが出来ない。
だが、今回の案件はパーティ全員が関わる話だ。
面と顔を合わせて話をするべきだろう。
「そうだな……。今のエリアの攻略にも行き詰っていた所だ。構わないぜ」
†ラーハルト†達の了承を取り付けた事で、次はガミガミ達だ。
"水霊の三日月島"の1件以降、何度か連絡を取ったりはしていたものの、それ程ツッコんだ話をした事は無い。
果たしてどんな反応が返って来るか……。
「ガミガミ。今、大丈夫か?」
「おお。カイト殿か。突然どうかしたのじゃ?」
「急な話で悪いが、エリアボス攻略の為に、お前らの力が必要なんだ」
「ふむ……。詳細を伺わねば何とも言えぬが……。まあ良かろう。どうせ攻略に行き詰まっていた所じゃ。まずは話だけでも聞かせて貰うとするかの」
どうやらガミガミ達も攻略に行き詰っているようだ。
4thエリアになってから、一気に難易度が上がったのを感じるな。
攻略ペースが一向に落ちないのに運営が業を煮やしたって所か?
だとすれば、その立役者の一人を自認する俺としては少々気分が良くなる話だ。
その後、"竜虎の平原"に関する情報の整理を行っているうちに、ガミガミ達がやってきた。
「お待たせしたのじゃ」
「大して待っていないさ」
「それで、どういった事なのか、早速話を聞かせて貰えるかの?」
「ああ。それについては少し待って欲しい。奴らももうすぐ来る筈だからな」
「ふむ……。我ら以外にも、援軍を求めているという訳かの。相当大事のようじゃな」
「まあ、そんなとこだ」
そんな他愛も無い会話を交わしているうちに†ラーハルト†達がやって来た。
「すいません。遅くなりました。……こちらの方々は?」
少し遅くなった事を詫びつつも、ガミガミ達へと視線を向ける。
「こいつらも俺が呼んだ」
「……成程。顔を合わせるのは初めてですが、ランキングでは良く名前を見かける方々ですね」
「そういうお主らこそ、良く見かけるぞ?」
シンとガミガミが、なんか互いに牽制し合っている。
「なぁ、廃人、こいつら信用出来るのか?」
そんな2人を気にした様子もなく†ラーハルト†がそう尋ねて来る。
本人達の目の前で良くもまあ堂々と言ってくれる。
「ああ。まあ、俺の勘が正しければな」
「ふーん。なら大丈夫かね? 廃人は普段は抜けてる癖に、その手の勘は無駄にすげーからな」
「抜けてねぇし、無駄じゃねーよ。てか大体、お前が騙され過ぎなんだよ。シンが居ないとすぐに詐欺に引っ掛かりやがって」
ASO時代にコイツが詐欺に引っ掛かった回数は、俺が知っているだけでも数多い。
一度なんて、俺が貸した装備を詐欺られやがったからな。勿論、その補填はさせたがな。
「カイト、なんだか話が脱線してるわよ?」
やれやれと言った表情でナツメが突っ込んで来たのに、ハッとして、俺は姿勢を正す。
「ゴホン。お前たちを呼んだのは、他でもない。"竜虎の平原"のエリアボス攻略にお前たちの力を貸して欲しい」
「わざわざ、私達以外のパーティまで招集したと言う事は、もしかして?」
「そうだ。お察しの通り、あそこのエリアボスは、フルレイド戦だ。なので俺としては両方共に参加して欲しいと考えている。どうだろうか?」
俺のその言葉に、俄かに場が騒然となる。
まあ、それも当然の反応だろう。
「しかし、フルレイドとなると、1パーティ足りないのでは? まだ他に来るのですか?」
「シンの疑問はもっともだが、残念な事に他のパーティは呼んではいない」
「……ははん。もしかして廃人。友達少ねぇな?」
†ラーハルト†がここぞとばかりに、したり顔でそう言う。
「……別に知り合いが少ない訳じゃない。ただ、今回のエリアボス戦に参加できるだけの腕を持った連中に、これ以上伝手が無かったんだよ」
これは事実だ。
ゲーム序盤から、情報収集は積極的に行ってきたので、フレンドの数はかなり多い方だと自認している。
それでも、単パーティで活動していて、かつそれなりの腕を持った奴は少ない。
「でだ、参加の意思を確認する前に、一つ尋ねたいことがある。なあ、誰か使える奴らに心当たりは無いか?」
俺の質問に対し、†ラーハルト†達もガミガミ達も無言だ。
やはり、条件に該当する人間は少ないのだろう。
「どちらも心当たりは無しって事でいいのか?」
彼らそれぞれを代表して、シンとガミガミが頷く。
そうか……。結構当てにしていただけに、俺の落胆はそれなりに大きい。
「分かった。じゃあ、最初の質問に戻ろう。フルレイドに参加してくれるか?」
「……即答は出来かねますね。せめてエリアボスの情報をある程度開示して貰わないと……」
「そうじゃのう。勝算があるかどうかにもよるしの」
まあ、当然の答えだろう。
「それは勿論だが、情報を開示する以上、こちらもタダでとはいかない。そこで提案だ。この3パーティが持っている4thエリアに関する情報を、それぞれ共有しないか?」
実力にそう差がない者同士だ。
そう極端に不公平な事態にはならないだろう。
「……考える時間を頂けますか?」
「我らもじゃ」
「ああ、勿論だ。両隣りの部屋を借りてあるから、そっちを使ってくれ」
この展開は予想していたので、予め余分に2部屋借りていたのだ。
そう高いモノでも無いしな。時間の節約の方がよっぽど大事だ。
彼らが退室したのを確認してから、再び打ち合わせを再開する。
それから30分程経った頃だろうか。
2パーティがほぼ同時に戻って来る。
「結論は出たか?」
「ええ、情報の共有をしましょう。参加の是非はそれからという事で」
「こちらも同じじゃな」
「分かった。では、提案者の俺から話すとしようか」
"竜虎の平原"に関して知り得た情報を一通り開示する。
もっとも、その時に出会った"白の剣士"ことカズヒトと、彼が持つ武器については伏せてある。
攻略には直接関係無いしな。
「成程。現時点では勝算も何もあったものじゃありませんね……」
まあ正直、シンの言う通りだ。
現時点の情報だけでは、人数を集めたとしても勝ち筋は見えてはこない。
「では次はこちらの番ですね」
4thエリア開始からずっと"不毛の荒野"の攻略をしていたらしいが、雑魚Mobの強さに手こずって思うように攻略が進んでいないらしい。
彼ら程の腕の持ち主でもそれなのだから、相当に厄介なようだ。
実際、エリアボスにすらまだ到達出来ておらず、進捗としてはこちらよりも悪い。
それでも、街で得たモノよりはかなり確度の高い情報が得られたので、別に損をした感じではない。
「次は我らの番じゃな」
ガミガミ達は"牛馬の高原"の攻略に掛かり切りだったようだ。
こちらも種類は違えど雑魚Mobの対処に苦戦しているようだ。
彼らもエリアボスまでは到達していなかったが、それでも色々と耳よりな情報が手に入ったので、一応満足といった所だ。
「情報の共有が済んだ訳だが、フルレイドへの参加の意思を確認してもいいか? それともまた時間が必要かな?」
「いえ、大丈夫です。こちらは既に結論が出ております」
「それは我らも同じじゃ」
先程の時間で、ある程度の方針は決めていたらしく、彼らの瞳の迷いの色は見られない。
「じゃあ、答えを聞かせて貰おうか」
そう言いながら、まずはシンへと視線を向ける。
「私達のパーティはフルレイドパーティへの参加させて頂きます。唯一エリアボスまでの道筋が付いているのですから、参加しない手は無いでしょう」
「そうか、なら助かるよ」
正直、彼らの参加はかなり宛てにしていたので、その答えが聞けて一安心だ。
「ただし、一つ懸念があります」
「ああ、報酬の事か?」
「その通りです。これまで通り、MVPの報酬が"生存の書"と"封印の書"がそれぞれ1つだけの場合、どうやって配分するのか問題になりませんか?」
そうなのだ。俺も正直、その点で頭を悩ませていたのだ。
「そうだな……。その場合は、MVPを獲得したパーティが"生存の書"を、2番目に貢献度が高いと思われるパーティに"封印の書"をという事にしたいと思っている」
「残り2パーティには、何もなしと?」
「勿論、それ以外のドロップアイテムの配分などで極力不公平感を無くすように努力するつもりだ」
とはいえ"生存の書"や"封印の書"は非常に貴重なアイテムだ。その調整はかなり難しくなるだろう。
入手出来なかったパーティも納得がいくような何かを考えておく必要があるだろうな。
「貢献度の決定方法はどうするのですか?」
「4パーティの合議で決めるしかないだろうな」
そうする以上、参加者が皆、高い理性を持って行動する事が求められる。
そういう理由もあって、誘う人間の選定に苦労していた訳だ。
「ふむ。詳細を詰める必要はありそうですが、ちゃんと考えているのでしたら、問題ありません」
一応、シンは納得してくれたようだ。
「それで、ガミガミ達はどうだろうか?」
「うむ。先程のシン殿確認した内容が真なれば、こちらに特に異存は無い。参加させて貰うとしようかの」
「そうか、ありがとう」
「なぁに、このゲーム初のフルレイド戦に参加出来るのだから、感謝しているのはこちらの方よ」
「そう言ってくれると助かる」
2パーティの参加が決まった事で、次の議題は残る1パーティをどうするかへとシフトする。
まだまだ、攻略への道のりは険しそうだった。




