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45 ユニーク武器

 俺の放ったスキルがトドメとなり、カズヒトの残りHPが1割を下回る。

 思った以上に苦戦はしたが、無事勝利をもぎ取る事に成功したようだ。


「ああ、ちくしょう。やっぱ勝てなかったかぁ……」


 意外な事にカズヒトは悔しそう態度を示しつつも、どこかすっきりとした表情をしていた。

 どうも事前の不遜な振舞いは、俺を挑発する為のただのポーズだったようだ。


「やっぱ実物のカイトさんは凄いな。傍から見ている以上だったぜ」


「ん? 俺を知ってるのか?」


「ああ、勿論さ。ASOでカイトさんの戦いぶりは何度も見てたんだ。正直、憧れてたよ」


 確かにASOをプレイしていた当時は、しょっちゅう決闘をやっていたような気がする。


「そうか。……しかし、悪いが俺はそっちの事は覚えてないな」


 こんな目立つ格好をしていた奴に出会っていたならば、間違いなく覚えていると思うのだが……。


「そりゃ仕方がないさ。当時の俺はVRMMO初プレイの初心者だったからな。恰好も普通だったし……」


 恰好が普通じゃない自覚があるようで何よりだ。


「だったら、まだVR歴はそんなに長くないんだな。動きは良いのに、どこかぎこちなさを感じたのはそれが原因か」


 ぎこちなさと言うか、より正確に言えば、対人戦に慣れてない感じを節々で感じたのだ。

 勝負を分けたのも、結局はそれだったしな。


「ははっ。お察しの通り、まだあんまり対人戦は経験した事がないんだ。だから、俺としてはカイトさんに弓を使わせただけでも、十分満足かな」


 それはそうかもしれないな。

 対人戦における俺の得意戦法は、まずは短剣などの近接武器を使って戦い、相手がその動きに慣れてきたところを弓に持ち替えて倒すというものだ。

 だが、大抵の相手は、俺が弓に持ち替えるまでもなく、近接戦だけで決着がついてしまう。

 実際、タイマンで俺に弓を使わせた相手など、ここ最近の記憶の中では両手の指で数えられる程しか思い付かない。


「ずっとソロやってるだけあって、反応速度はかなりのものだ。ただ、やはり通常の狩りと対人戦は別物だから、その辺の切り替えがまだまだだな」


「そっか。ははっ、手厳しいな。でも一応褒めて貰えてるようだし、素直に喜ぶとするかな」


 ああ、そうしておけ。

 俺が本心から褒めるのは、あんまり無い事だぞ。


「で、結果は俺の勝ちだった訳だが、約束通り色々教えて貰うとしようか」


 カズヒトが使っていた専用アビリティは一体何という名前で、どういった性能を有しているのか。

 そして、そんなレアなアビリティが付いた武器は、どこでどうやって入手したのかについてをだ。


「ああ、約束だったからな。まずアビリティの名前は〈双月剣〉。俺が持つ双剣〈ムーンライトブリンガー〉の専用アビリティだ」


 そう言って、月光を帯びた2本の片手剣を掲げるカズヒト。


「アビリティの性能的には、そうだなぁ。魔法剣と呼ぶのが、一番近いのかな」


 なんでもスキルの一つに、繰り出す攻撃の全てを魔法攻撃力依存に変えるスキルがあるらしい。

 それのお蔭で、魔法攻撃力に特化したステータスのままで、近接戦もこなせるのだ。

 何それ、超卑怯なんですけど……。


「それで、この武器を入手した場所だけど、"月光の森"だよ。あそこのエリアボスを倒した時に、偶々これをドロップしたんだ」


 "月光の森"のエリアボスと言えば、俺とナツメの2人で初めて倒した〈タイラントムーンウルフ〉だな。

 その後もなんどか倒した筈だが、残念ながら俺達は入手していない。

 単純にドロップ率が低いのか、あるいは入手するのに何かしら条件が存在するのか……。

 カズヒトはずっとソロのようだし、ソロ撃破が一つの鍵の可能性もあるか?


「ドロップ条件までは俺も良く分からない。ただ、あそこ以外のエリアボスも何体かソロで倒した事はあるけど、そっちでは特別何も落とさなかったから、ただソロで倒せばいいってもんじゃないみたいだよ」


 そうなるとソロ撃破は条件の一つに過ぎないのか、あるいは全く関係ないのか。

 何にせよ情報が全然足りないな。


「あとはそうだな……。この〈ムーンライトブリンガー〉は専用アビリティ以外にもちょっと特殊な性質があってね。実は装備者の成長に応じて強くなるんだよ」


 なん、だと……?

 言われて気付いたが、良く考えれば1stエリアでドロップした武器にしては、ちょっと強すぎたのだ。

 4thエリア相当の性能を持った武器を、仮に1stエリア攻略時に持てたならば、武器の性能だけで無双する事も可能なほどに差がある。

 逆に言えば、1stエリア産のドロップ武器など、現時点では本来ならば産廃の筈なのだ。


「つっても、性能は特に飛び抜けたものでは無いけどな。それに通常攻撃だけでなく〈剣術〉や〈二刀流〉スキルまで全部魔法攻撃力依存になるから、魔法防御が高い相手にはどうしても苦戦してしまうという欠点もあるね」


 装備の持ち替えが出来ないのは確かにデメリットだが、逆を言えば替えの装備を複数揃える必要も無くなるので、お財布にはとても優しい。

 なんだかんだで、一番金が掛かるのは装備の更新だからな。


「想定以上にデカい情報を教えて貰った訳だが、良かったのか?」


「まあ、負けちゃったしな。構わないさ。ただ、あんまり他所に広めるのは勘弁してくれな」


「ああ、勿論だ」


 てか、こんな重要情報、わざわざ広める理由が無い。

 なるべく俺達の間だけで独占しておくべきだ。


 しかしこうなると、俺達も専用アビリティ付きの装備が欲しくなるな。

 エリアボスを倒しまくれば、そのうち落としてくれるのだろうか?


「なあ、カズヒト。なんだったら俺達のギルドに入らないか?」


 ソロに拘りがあるのかもしれないが、こんな逸材を放置しておくのもなんだ。

 ダメ元でとりあえず声だけは掛けておく。


「……ありがとう。だけど、遠慮しとくよ」


「そうか、何かソロに拘る理由があるのか?」


「あー。いやね、実は俺、別に大してソロに拘ってる訳じゃないんだ……」


 カズヒトの口から意外な事実が語られる。


「ゲーム開始直後は俺もパーティを組んでたんだよ。別にそいつらは以前からの知り合いとかでは無くて、偶々近くに転送された連中だったんだけど、なんか気が合ってパーティを組む事になったんだ。で、その日はウキウキ気分で皆で街を巡ったりした後、明日からの攻略に備えて宿で休んだんだよ。そしたら、俺以外の3人が寝ている間にPKに遭って、封印宮送りになったんだ」


 カズヒトの語る話の内容に、思わず冷や汗がだらりと流れたのを感じる。

 VRなのでそんな事は有り得ない筈だが、そう感じてしまったのだ。


「で、その3人からPKをやった犯人は俺だろ? って疑いを掛けられて、その後なんやかんやで結局1度も戦う事無くパーティは解散。で俺はというと、あらぬ疑いの目を向けられたせいで、他のプレイヤーとパーティを組む気が失せてしまって、以来ずっとソロさ」


 ヤバい。

 時期的に多分、そいつらをPKしたのは、多分俺かナツメのどちらかだ。

 

「そ、そうか。なんか大変だったんだな……」


「全くだよ。まあやけくそでソロしてたお蔭か、こんな良い武器をゲット出来たから訳だから、塞翁が馬って奴なのかもしれないな」


 良し。

 本人は大して気にしていないようだ。

 うん、俺も気にするのはやめよう。精神衛生上きっとそれがいい。


「しかし、だったらどうしてギルドの誘いを断るんだ?」


「あー、まあ、そのな。やっぱカイトさんとは、競い合いたいじゃないか」


 仲間になるよりも、ライバルで居たいって事か。

 いいじゃないか。そういうのは嫌いじゃないぞ、俺。


「……そうか。それもそうだな。ならせめて、フレンド登録だけでもどうだ?」


「それならこっちこそ是非かな」


 という訳で、俺とカズヒトはフレンドとなった。


「よろしくな。カイトさん」


「カイトでいいぞ」


「うーん。いや、勝負で勝てるようになるまでは、このままでいいや」


「そうか」


 少し照れ臭いやり取りを済ませ、ちょっとカズヒトと仲良くなれた気がする。


「フレンドに成った訳だし、このまま軽く情報交換といかないか?」


「こっちは構わないよ、カイトさん」


 そんな訳で、俺達はカズヒトとこれまで得た情報の交換会を行う。

 その際、こちらが若干だが多めに情報を提供しておいた。

 それは表向きは武器の情報に対する謝礼としていたが、実際は彼の仲間をPKした事に対する謝罪の意味を含んでいたのは内緒の話だ。

 

 ――良し! これで謝罪も済んだし、もう罪悪感を覚える必要は無いな!


 気にするのはやめようと決めた傍から気にしている俺なのであった。


「さてと、俺達はこのまま先に進むつもりだが、そっちはどうするんだ?」


「俺は一旦、街に戻るとするよ。……〈天使の首飾り〉の補充もしないといけないしな」


 そう言う彼の背中は少し寂しそうだった。

 熱くなって貴重品を無駄遣いするからだ、まったく。


「じゃあまたね、カイトさん」


「ああ、またな、カズヒト」


 別れの挨拶を終えて、カズヒトが〈帰還の魔石〉で街へと帰るのを見送る。


「じゃあ、俺達は攻略の続きを頑張るとしますか!」


 気分的には色々やった感があるが、"竜虎の平原"の攻略はまだ精々中盤に入った所だ。

 俺は緩んだ気を引き締めて、一歩前へと足を進めるのだった。


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