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17 地道な強化

 "邪妖精の住処"の攻略を断念した俺達が次に向かったのは"渇水の砂丘"だ。

 単純なレベル上げ効率の観点から見れば、1エリアでひたすら狩りをした方がいいのだろうが、そうするとどうしても手に入る素材アイテムに偏りが出来てしまう。

 なので、出来ればなるべく複数のエリアを周回して多くの素材アイテムを手に入れたいのだ。


 "渇水の砂丘"の情報は、事前に†ラーハルト†達から得ていた為、エリアボスである〈デススコーピオン〉の撃破はそう苦労はしなかった。


 俺達の前に挑戦していたパーティがいたのも、その要因の一つかもしれない。

 話に聞いていた〈デススコーピオン〉がHPゲージ残り1本を切ると使用するという謎の攻撃の正体も、彼らにおかげで判明した。

 彼らはパーティ全員が装備もレベルも中々の高水準であり、戦闘も安定しているように見えた。

 このままの調子でボスを倒しきるかに見えたのだが、〈デススコーピオン〉が放った光を宿した尻尾の一撃でタンク役のプレイヤーが即死した事で、状況は一変する。

 タンク役のプレイヤーへの依存率が高いパーティだったらしく、彼の死を皮切りに、残りのメンバーも次々とその攻撃によって殺され、あっという間にパーティは全滅してしまったのだった。

 

 彼らが死ぬ直前、頭上にドクロマークが浮かび上がり、直後にHPゲージが一瞬で消し飛ぶ光景を、俺はこの目で何度も確認した。

 このゲームの仕様上、一撃で死ぬようなダメージの攻撃を仮に受けても、十分に目視できる速さでHPゲージは減少し、やがて0になるというのが普通だ。

 となれば、あれは恐らく即死効果を持った攻撃だったのだろう。

 †ラーハルト†が盾で捌いていたという話から、直撃を貰わなければ即死効果は発動しないようだが、それでも1撃で即死の危険があるというのはかなり厄介だ。

 特に俺達のパーティは、盾持ちが存在しないので、実質回避以外に選択肢は無いのだ。


 そんな訳で、彼らの戦いを事前に見ていたお蔭もあり、タゲ役のナツメはどうにか無事に即死攻撃を全て回避する事に成功し、俺達は〈デススコーピオン〉の撃破を成し遂げる事が出来たのだった。

 

「全然クリアログ流れないねー」


 その後も俺達は、"邪妖精の住処"以外の各エリアを回り、アイテム収集やレベル上げに勤しむが、一向に"邪妖精の住処"のエリアボスを倒した事を知らせるログが流れる気配は無い。


「カイトの判断は正しかったって事なんでしょうね」


 自身の選択が間違ってなそうだという事に、俺は少々ホッとする。

 今回の判断は、俺としても苦渋の選択であったのは間違いないからだ。



 そんな感じで、街と各エリアの往復を続け、収集したアイテムを使い装備を新調したり、レベル上げの成果なのか新アビリティを取得したりと、俺達は地道な強化を続けていく。


「へぇ、やっぱりそのアビリティ存在したんだな」


「そうね。VRMMOなら割とありがちのアビリティだしね」


 ナツメが習得したのは、このゲームおいてまだ存在こそ未確認だったが、彼女がずっと待望していたアビリティだ。

 正直俺としても、やっとで覚えたのか、という印象しかない。


「カイトはまた、妙なアビリティを覚えたわね」


 ナツメの言う通り、他のゲームでは耳にした覚えが無い名前だ。

 そしてナツメのと同様、まだそのアビリティの情報は街では流れていない模様だ。


 とはいえ、アビリティの名前や、俺がそれを覚えた時の状況から察するに、習得はそう難しくも無い気もする。

 まあ何にせよ、かなり便利なアビリティなのは間違いないので、今後はこちらも鍛えていく事にしよう。


「で今度はハルカとユキハは、新しい魔法アビリティを覚えたのか」


 2人もそれぞれ別の種類だが、街で売っているスクロールでは習得不可能な魔法アビリティを覚えていた。

 こちらについては、既にその存在の情報は、街でも噂が流れていたのでそれほど驚きは無い。

 不明だった習得条件も、ハルカとユキハの持つアビリティを見れば、割と分かりやすい感じだ。


「習得タイミングから察するに、本人のレベルも条件の一つなんだろうな」


 それぞれが新アビリティを習得したのは、レベルが21に上がったタイミングだったので、まず間違いないと思われる。

  

「前提スキルなんかの条件を満たしてても、本人のレベルが足りないと習得出来ないのなら、詳細な条件を確定するのは難しいわね」


「情報の共有が難しいからなぁ。せめてネットに繋げれば全然違うんだが……」


 ネットに繋がらない以上、当然攻略サイトなども見れない訳だ。

 まあゲームの参加プレイヤー全員がネット出来ない訳だから、そもそも攻略サイト自体が作られて無いだろうけど。


 一応、各自が情報を保管する為のメモ機能を持ったアイテムをゲーム開始時から所持しており、そこにこれまでに得た情報などは随時メモしているのだが、それだけでは攻略サイトの代わりには到底なれないのだ。


「条件は他のプレイヤーも同じだから、嘆いても仕方ないわよ」


 確かにナツメの言う通りだ。

 気持ちを切り替え、新アビリティの育成などを頑張る事にする。



 そうして過ごしているうちに、気が付けば2度目の活躍ポイントランキングの日を再び迎えていた。


「今回もカイトが一位だね! そしてナツメっちが2位かー。2人とも凄いねっ」


「御二人共、おめでとうございます」


 そんな祝福の言葉をハルカとユキハの2人から贈られる。

 一方でナツメはというと、少し思案気な表情を浮かべている。


「エリアボスの討伐数で勝ってる筈の2人よりも、†ラーハルト†の方が順位は上なのね……」


 俺もそれは確かに気になっていた。

 てっきり俺達のパーティで、1位から4位までを独占だと思っていたのだが……。

 だが現実は、†ラーハルト†が3位、シンが4位で、ハルカとユキハは5位と6位だ。


「ボスの討伐数以外にどんな要素が絡んでるのか、早めに調査した方が良さそうだな」


「そうね。それ次第では、今後の行動方針に変更が必要かもしれないわね」


 一応暫定1位ではあるが、あまり喜んでもいられない結果であった。



 そして更に2日後。

 久しぶりに6時間という長い睡眠時間を取り、再び集まったばかりの出来事である。


『"邪妖精の住処"のエリアボスが初討伐されました』


『開放済みの全てのエリアにおいて、ボスの討伐が確認されました。よって、これより新エリアを開放致します』


 左下にこのようなログが表示される。


「やっとか。どこのパーティがクリアしたんだろうな?」


「やっぱり†ラーハルト†達のパーティじゃないかしら?」


 別段、根拠がある訳じゃないが、多分そうなんじゃないかと俺も思っている。

 

「それよりも、新エリアには行かないの? それとも、また様子見?」


「今回は休息を取ったばかりだしな。……よし。新エリア探索に出掛けてみるか!」


「おー!」


 ハルカは新エリアの興味津々らしく、俺の宣言に勇んで返す。

 だが――


「ねぇ、やる気があるのはいいのだけれど、新エリアの場所、知っているの?」


 ナツメから至極もっともなツッコミが入り、俺達の行動はいきなり頓挫する。

 前回は、最前線のプレイヤーからやや遅れて新エリア探索を始めた為、その辺の情報は一通り出回っていたのだ。

 だが、今回は違う。

 どのエリアのどの地点から、新エリアに続く道が出来ているのか、全く分からないのだ。

 その上、前回よりもエリアの数自体は増えているので、捜索範囲もより広くなる。


「ねっねっ、もしかしてさ。新エリアへの行き方を見つけた人に、活躍ポイントが入るんじゃない?」


 ハルカのその意見は一理ある。

 新エリアへ続くルートの発見は、確かにゲーム攻略に寄与する案件だ。


「そうね。その辺を確認する意味でも、新エリア発見に挑戦するのはいいんじゃない?」


「だな。てな訳で次の目標は、新エリアの発見だ」


 こうして俺達は、新たな目標へと向けて動き始めたのだった。


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