損害賠償700億円?!
「それを悪いことっていうんだよ! 罪の意識がないのかよ?」
「いやいやいや、ソレ言うなら、魔法の許可をだしたアンタだって悪いんだからね!?」
「なんでオレが?! 破壊したのはオマエなんだから、誰がどう考えたって悪いのはオマエだろ!!!」
「あのね、次元管理法では、異世界での魔法使用は、現地人の許可が必要なのよ? つまり魔法発動の最終判断は現地人に委ねられるわけで、9:1の割合でアンタも罪に問われるの」
「1って、どのくらいの罪?」
「単純に物質的損害だけなら、だいたい弁償が一般的だから、あの規模の塔なら総工費が700億円くらいとして、その1割の70億円?」
「70億?! っていうか、円? 異世界なのに『円』を使ってるのか?」
「慌ててる割には、変なところでツッコミが冷静ねぇ」
思わず苦笑してしまった。
あまりにも衝撃が大きすぎて現実逃避はじめたかな?
「いや、魔法で翻訳されてんのよ。あたしは普段使ってる単位で言ってるし、ちゃんとレートとかも計算されて変換してるはずよ?
まあ、多少の違いはあるとは思うけど──」
そう言っておいてから、
「あたし達の年代で一般的に食べられているファーストフードとかだと、だいたい単品で300円くらいが相場」
翻訳の精度を上げるため、あえてイメージしやすい説明を付けて金額を言ってみた。
「どう? そこそこの値段に翻訳された? もしかなりズレてるなら修正するけど」
「まあ、だいたい……っていうか、70億かぁ……」
急に現実に戻り、肩を落とす彼──っていうか、ちょっと待った!
「なに言ってるかなぁ、70億はあたし、アンタは残りの630億よ」
「はいぃっ?! なんでぇっ?!」
「なんでもなにも、もし異世界からドラゴンを召喚して、町を破壊したら、ドラゴンの罪になると思う? 召喚者の罪でしょう?
今回はアンタに召喚されたワケじゃないから、1割はあたしが負担するけど、もしアンタの魔法でこっちに来てたら、100%アンタよ」
言葉を失う彼。
「ちなみに、700億っていっても、あくまであたしの世界の魔法建築技術でそれくらいであって、こっちの建築技術がそれに匹敵しないくらいのローテクなら、もっと膨らむ可能性大よ。
しかも、物損だけの話であって、運悪く塔の近くに誰かいて、魔法に巻き込まれてたりしたら、下手すればあたしたちお尋ね者よ」
後半は冗談で言ったつもりだったんだけど、気がつくと彼の顔が真っ青になっていた。
さっき以上の、いや~な汗が全身から噴き出す。
「ま、まさかとは思うけど、あの塔に人が近づいたりは、しないよわよね?」