超長距離大規模破壊魔法発動! いやぁ、スッキリした☆
「うっしゃっ!」
気合いを入れて──っと。
んじゃ、超長距離大規模破壊魔法──いっきまーすっ!
──天空に座せし、戒めを司る万能なる王の子──
あたしは呪文の詠唱を始めた。
濃縮された魔力が、大気に影響を及ぼし、室内でありながら、空気の流れができる。
──高らかに轟かせよ滅びの歌声──
風が渦巻き、あたしの髪やマント、スカートなんかをなびかせる。
──美しき娘はハープを奏でよ──
おっと、いま一瞬、スカートをまくり上がり、大サービスしてしまった。
でもまあ、こればっかりは仕方ない。
こんな程度のことで呪文の集中を乱すあたしではない。
──気高き娘は軍馬を駆れ──
空気中に漂う物質が、魔力崩壊を起こし、小さなスパークが走る。
──彼の地に注ぎし命の欠片、いにしえの鎖を打ち砕け──
遠くにある塔の上空は、集まった魔力により光の進行が歪められ、まるでそこに巨大なガラスの玉があるように見える。
──我ここに、ともに歌おう──
呪文は完成した。
「天王の鉄槌っ!」
次の瞬間、巨大な塔は、それよりも巨大な光の柱に呑み込まれた。
昼間だというのに、もの凄い明るさ。
細長い太陽がそこにできたようで、なんともいえない壮大な光景だ。
「ふぅ」
小さく息を吐く。
全身が火照り、うっすらと汗。
軽く運動をしたような爽快感。
そして、なんともいえない心地よい脱力感。
いやぁ、すっとした。
やっぱストレス解消は、破壊魔法に限るよね。うん。
彼はぽかーんと口を開け、光の柱を呆然と見つめている。
かなり高濃度の魔力による光の爆発なので、しばらくはこの光景が見られるはずだ。
ちなみに距離があるので、音と衝撃波は遅れてくる。
窓ガラスがかなり薄いようだけど、衝撃波くらいは耐えられるよね?
まあ、これだけ建築技術が発達している世界だし、耐衝撃魔法素材くらい使っているだろう。
「どう? すぐには光が消えないから、まだ完全に破壊できたかどうかはわかんないけど、魔法が使えるってことはわかったでしょう?」
ギギギギと、音がしそうな動きで、彼があたしを見る。
どうやら、かなり度肝を抜かれたようだ。
「しっかし、こっちの世界の人って気前いいわねぇ。あたしの世界じゃ、建築物を破壊したら犯罪よ?」
「こっちでも犯罪だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「へ?」
全身が凍り付き、頬を冷たいモノが伝った。