大魔導師をなめんなよぉっ!
「あ、あのね、あたしは本物の大魔導師なのよ」
「ああ、そうかい」
うっわ、疑ってるしぃ。
「いいわよ、じゃあ、証拠みせてあげるから」
「証拠? ふーん、ドラゴンでも倒してみせるのか?」
「なに? ドラゴンを倒せばいいの?」
「倒せるモノなら倒してもらいたいね」
馬鹿にしたように鼻で笑う彼。
ドラゴンのほとんどの種族は巨体で抗魔力が高い。知能も高く、中には魔法を扱える個体もいる。
本物の魔術職でも、高い攻撃力のある魔法が使えないと、かなり苦戦する相手だ。
大魔導師だというなら、そのくらいしてみせろ──とでも言いたいらしい。
「わかった。で? ドラゴンはどこにいるの?」
「はっ、なるほどね、つまりアレだ、『絵の虎を捕まえるから、絵から出せ』ってヤツだ」
なぜドラゴンが虎になったかは知らないけど、こちらの世界の寓話かなにかだと思う。
「出せ」ということだから召喚だろう。絵とか図は魔法陣の言い回しとして使うこともあるし。
あたしの世界でも、未熟な召喚師がドラゴンを召喚し、制御できずに大けがをするという寓話がある。
ああ、そっか、つまり、「見栄を張ると怪我をする」って言いたいんだ、ふーん……。
──って、なめんなよぉっ!
「そ、そう……」
それでも、なんとか怒鳴り散らしたいのをぐっと堪えたあたし、エライ!
「そ、そこまで言われちゃ、黙っていられないわね」
冷静さを装って言う。
「ドラゴン一匹とかケチ臭いコトは言わないで、なんなら山一個まるごと消し飛ばしてみせましょうか?」
「山なんてどこにあるんだよ?」
「うっ」
確かに、窓から見えるのは建物ばかりだ。
しかし、言ってしまったからには、それに匹敵するのを見せないと収まりがつかない。
「じゃ、じゃあ……あれ、あの塔」
あたしは遠くに見える、ひときわ高い塔を指さす。
この距離であの大きさだ、600から700メートルくらいはあるだろう。
「あれを魔法一発で、破壊するってのは?」
それだけの威力がある魔法なら、ドラゴン数匹を瞬殺できる証明になるはずだ。
「へえ、いいね、やってもらおうか」
「え? マジで?」
思わず聞いてしまった。
「マジで」
うなずく彼。
「本当にいいの?」
一応、念を押す。
「ああ、いいよ」
正直びっくり。
かーっとした勢いで言っちゃったけど、さすがに建造物の破壊はダメだろうなぁ──とか思い始めてた。
まさか許可が下りるとは。
だったら遠慮なくいかせてもらいましょう。