なんか、とんでもなくカオスな部活に入っちゃった……
「僕が部長の五十里シンジだ」
そう自己紹介をするヤツ。
「「なんでやねん!」」
すかさず奏と三木がツッコミを入れる。
なぜそこでツッコミ?
意味がわからず首をかしげていると、
「テュマは異世界の人だから、そのボケはわからないの!」
あたしの本名と素性を堂々と言った奏は、あたしが渡した入部届をヤツに突きつけた。
それを受け取り、ちらりと目を通した彼は、「うむ」と頷くと、
「いやぁ、失敬失敬、本名は五十里真一、空想文化研究部の部長だ。よろしく」
「ちなみに今の名前は正真正銘の本物よ。なんだか余計にパチモンみたいだけど」
そう言ってクスリと笑う三木。
「それは僕が悪いわけではない! くそぉ、どうして僕は次男じゃないんだ! しかぁし、この呪われた宿命を受け入れるしかないんだぁ!」
全身を使って大げさに嘆いてみせる真一。
「次男だからって真二になるとは限らないけどね」
ボソリとツッコミを入れる奏。
どうやら、名前が笑うところらしいが、いまいちわからない。
「こういう部長で、こういう部活だから、まあ、適当にやってよ」
疲れた口調で言う拓斗に頷くあたし。
「こんなカオスな場所にいて、よく今まで染まらなかったわね。っていうか、アンタはどうしてこんな部に入ったのよ?」
「入ったんじゃなくて、ムリヤリ入部させられたんだ。まあ、半分は幼なじみのよしみというのもあったけど……」
「だからって、よほど人がいいというか、なにか弱みでも握られてるとか?」
「いろいろとあるんだよ」
遠くを見る目で語る拓斗。
あまり触れないでおいてあげた方がよさそうだ。
「そんなわけだから、僕のことはシンジと呼びたまえ」
よほどヤツはシンジという名前に憧れているらしい。
「わかったわよ。で? シンジ、この空想文化研究部とやらで、あたしはなにをすればいいわけ?」
「いきなり呼び捨てか。しかもそのツンデレぶり、なかなか筋がいい。よし、今日から君はアスカと呼ぼう」
「呼ぶなっ!」
思わず叫ぶあたし。
これ以上名前を増やされたらたまったもんじゃない。
──っていうか、どっから出てきたんだ、その名前は?
「違う違う、ツッコミを入れるときは『あんたバカァ?』だ」
もう訳がわからない。
「よし、これを着てもう一度だ」
そう言いながらシンジは、薄っぺらい赤い衣装を取り出すと、性懲りも無くあたしに迫ってきた。
「だからするかぁっ!」
「ぐげえぇっ!」
あたしのアッパーカットがシンジのあごに直撃した。
「うをぉ、ギャグアニメみたいな見事なアッパーカットぉ!」
奏が歓声を上げた。
「ホントね、部長がきりもみをしながら吹き飛んで天井に突き刺さったわ」
三木が同調する。
ちなみに、実際はそこまでおもしろいことにはなっていない。
「彼女達には何が見えているんだろう?」
あたしがぼそりと呟くと、
「ああ、気にしなくていいから、ああいう病気なんだ」
拓斗が涼しい顔で切り捨てた。




