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あれ? もしかしてはやまった?

 いきなり周りが騒がしくなったと思ったら、井出教諭が教室から出るところだった。

 拓斗が男子生徒に呼ばれ席を立つ。

「やっほーい、テュマ」

 奏があたしの席に来て、近くにあった拓斗の机にお尻を付けた。

「その『テュマ』って、遠間さんのこと?」

 奏についてきた知らない女子生徒が、そんな問いかけをしている。

「そそ、テュマだから遠間」

 自慢げに説明する。

「逆でしょう?」

 苦笑する女子生徒。

「遠間さんだから、テュマなのね」

「違うよぉ、テュマが本当の名前。遠間はアタシが考えたの」

「そうなのね」

 相槌はうったが、信じたというよりは、単に奏の調子に合わせただけのようだ。

「あ、えっと、三木(みつき)真奈美(まなみ)です、よろしくね」

「よろしく」

 三木と名乗った女子生徒は、清楚で落ち着いた感じの、なかなかの美人だった。

 奏とは対照的で、いかにもまともそうな人だ。

「遠間さんもコスプレするんですって?」

 コスプレ言うな──と、のど元まで出かかった。

 さては奏のヤツ、変なこと吹き込んだな。

 あたしはこの学校の生徒になったのだ。つまり、いま着ているこの制服は、もうコスプレではない。

 ──って、ちょっと待って、いま、「も」って言った?

「あ、ちょっと待って──」

 そう言いながら三木はポケットから、手のひらサイズの携帯端末を取り出し、なにやら操作を始める。

 拓斗が持っているモノと同じタイプの、スマホとかいう電子端末だ。

 夕べいじらせてもらったが、一昔前の携帯魔法端末に似ていた。

 かなり機能が限定的で、緊急時の低エーテルモードみたいな感じがしたけど……。

 周りにもちらほら持っている人を見かけるので、これがこの世界の主流のようだ。

「はい」

 三木がスマホの画面をあたしに見せた。

 そこには、赤と白のゆったりとした衣装を身にまとった三木が、ちょっと変わった短杖を両手で持っている姿で表示されていた。

「私は巫女なの」

 もちろん、実際の職業や称号ではなく、衣装だけの「設定」というヤツだろう。

 つまり、三木も奏と同類ということらしい。

「神道系魔術の使い手よ。食らえ、魂振!」

 そうポーズをとる三木に、思わず頬が引きつるのを感じた。

 なるほど、自己紹介で「大魔導師」と言ったあたしを、みんなはこういう目で見ていたワケか……。

「あ、そうそう、ところで、遠間さんは、部活はもう決めているの?」

「部活?」

 あたしは首をかしげた。

「テュマの世界では部活ってなかったりして」

「あたしの世界でもそういうのはあるけど、中学から高校の期間だけ盛んで、大学になるとそれどころじゃなくなっちゃうのよね」

 異空間跳躍をにおわせる発言なのは気づいていたけど、奏が堂々と言ってきたので、あたしも堂々と返してみた。

 三木が一瞬、戸惑いの表情を浮かべたけど、

「あ、えっと、じゃあ、こっちの世界に転校する前はどんな部活をしていたの?」

 何事もなかったように、話を合わせてきた。

 そんなあたし達の会話が聞こえたはずの周りの反応を、さりげなく観察してみたけど、とりわけて驚く様子はなかった。

 他人のことに関心がないというよりは、特に珍しいことでもないとでもいうような雰囲気に感じられたのは、気のせいだろうか?

「いや、だからね、あたし、中学も高校も通ってないのよ」

「なになに? テュマって不登校生?」

「違うわっ!」

 思わず叫ぶあたし。

 さすがにこれには視線が集まる。

 頬が火照るのを感じながら、気持ち肩をすぼめると、

「あたし小学校に入ってしばらくして、飛び級で大学生になったから、中、高はすっ飛ばしちゃったのよ。だから部活をやったことがないわけ」

「うをぉ、なんと、飛び級高校生を通り越して大学生だったかぁ!」

「どちらかというと飛び級先生の方が近いんじゃない? 小学校のうちに大学生ってことは、今はもう卒業してるでしょう?」

「いやいや真奈美さん、このクラスに転校してきた時点で、クラスメイト属性が優先されるのだよ」

「なるほど、まだまだ私も勉強不足だわ」

 なんかワケのわからない話で盛り上がる2人。

「そんなわけで──」

 「どんなわけだ」とツッコミを入れるより先に、

「空想文化研究部に入らない?」

 三木が一枚の紙をあたしの前に置いた。

 「入部届」と読める。

「空想文化? なにそれ?」

「アニメとか漫画とかゲームとか、そういう空想の産物を研究する部活だよ」

 奏がそう説明する。

「ふーん」

 意味はよくわからないけど、部活には興味があるので、

「いいわよ」

 途端に周りがざわめいた。

「とうとう完全に、中二病患者の仲間入りか」

「かわいいのに、もったいない」

「いやいや、元々でしょう」

 そんな会話が聞こえてきた。

 なんだろう、この、もの凄くはやまったコトをしたような気分は?

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