奏と同類なんていや過ぎるうぅ!!!
こりゃもう、偶然なんかじゃ済まされない。
「それでは転校生を紹介します」
さらに別の部屋に連行されると、生徒達がこちらに向けて机を並べて座っていた。
その中に奏を見つけた。
拓斗は──あ、いたいた。奥の端っこの方だ。顔が引きつっているように見えるのは気のせいではないだろう。
それにしても、なんだか、あたしの世界の学校風景と似ている。
しかも黒板とチョークまである。
あたしの世界でも、学校などの固定した教室では、メインは魔法端末ボードだが、万が一の事態でも使用できるようにと、黒板とチョークが備え付けられている。
井出教諭が黒板に文字を書いた。
遠間うえる──奏が、テキトーに付けてくれた、あたしの名前だ。
ちなみに、ここに来る間に、こっそり翻訳の魔法(文字用)を使っておいた。
ただし、この魔法、あくまで読めるというだけなので、書くことには対応していない。
対応させることも可能ではあるが、許可無く使用して良い翻訳魔法の域を超えてしまう。
だから、名前を書けと言われたら、ちょっとピンチだった。
「遠間さん、自己紹介お願いね」
そう言われ、仕方なく自己紹介をする。
「テュ──とおま……うえる──です」
なんか自分の名前を、あえておかしな発音で言わなければならないというのは、変な気分だ。
しかも、苗字と名前、実際は逆だし。
「それだけ? もっとみんな、遠間さんのことを知りたいと思っているわよ?」
井出教諭に言われ、面倒くさいのをガマンして、投げやり気味に付け足す。
「えっと、大魔導師です」
次の瞬間、時間が止まったように、静まりかえった。
拓斗が頭を抱えている。
あ、やばっ! この世界に魔術職はなかったんだ。
いつものクセでつい……。
「と、遠間さんて、そっちの世界の住人なんだ」
そう言った男子生徒は、なんだかイタい人を見るような目をこっちに向けていた。
この世界の住民が言う「そっちの世界」というのは、そのまま異世界という意味ではないというコトを、あたしは既に学習している。
「かわいいのにショックだぁ!」
別の男子生徒がおどけたように言って、どぉっと笑い声が上がった。
違う──と大声で否定したいのを、涙をのんで堪えた。
面倒ごとを避けるためにも、このまま誤解しておいてもらったほうがいいだろう。
「ダメだよテュマ、そういう秘密は隠しておかないと、謎の転校生の意味ないよ」
だーっ! 奏のヤツが、あたしの涙ぐましい辛抱を、あっけなく無残に打ち砕いてくれたぁ。
しかも、自分で付けた名前なのに、使わないしっ!
「よかったな五十里、仲間が増えたぞ」
再び笑いに包まれる教室。
あれ?
もしかして、ここに居る全員、誰1人として、奏の言葉を真実と思う人はいない?
普段どういう行動しているんだぁ!
そして──
あたしも、その同類として認識されたらしい。
いや過ぎるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!




