新たな謎。どういうこと?!
「確か1年B組だったな?」
拓斗の顔を見たが、一緒に驚いていたのだから、知らないだろう。
「なんだ、まだ聞いてなかったか? とりあえず職員室に案内してやれ」
奏では心許ないのか、拓斗に言う男性教師。
「は、はあ」
戸惑いながらも、とりあえず返事をする拓斗。
かくして、無事通過できたのはいいけど──
「魔法……使ったのか?」
拓斗の問いにあたしは頭を振った。
「じゃあ、本当に転校生が来る予定だったってことか……」
「その人が来たら、あたしがニセモノだってバレるわね」
「しかし、奏が適当に言った名前が、その転校生の名前なんて、そんな偶然あるか?」
「おお、ついにアタシ、予知能力に目覚めちゃったかぁ」
嬉しそうにいう奏に、
「転校生が来るって情報だけで、名前は聞いてなかったんじゃない?」
あたしは水を差してやる。
「そうかなぁ……」
イマイチ納得いかない様子の拓斗。
「名前も知っていたような雰囲気に感じたけど……」
「そんなことより、職員室とやらはどうすればいい?」
「いや、本物が別にいるなら、行ったら逆にマズいんじゃないか?」
「わかった。じゃあ、あたしは見つからないように適当に姿をかくしておくわ」
そう言った直後だった。
「成宮さん、五十里さん」
背後から女性の声。
拓斗と奏に習うような形で、あたしも振り返ると、20代そこそこの、あまりメガネが似合っていないロングヘアの女性が、親しみやすい笑顔を浮かべてそこにいた。
「あ、おはようございます」
拓斗の挨拶に、
「──ざいます」
奏が便乗省略する。
「はい、おはようございます」
そう挨拶をする女性の胸元に、つい目線が行ってしまった。
これみよがしに、見せつけている。
少し気になるお年頃のあたしが内心舌打ちしてしまうくらいのボリュームだ。
「あなたが、遠間さんね?」
まずった。言ったそばから見つかってしまった。
人違いのフリをして誤魔化そうかと考えていたら、
「そうでーす」
奏のヤツが代わりに返事をしてくれた。
まったくぅ、余計なことをしてくれるぅっ!
「あなたの担任になる、井出梨花です」
「あれあれぇ? センセが担任てことは、もしかして同じクラス?」
奏が妙にうれしそうに言う。
「さっき校門で『1年B組』って言われてただろ」
ボソリとツッコミを入れる拓斗。
「なんか、本当にアニメの転校生みたいだね」
「なにを呑気な……」
そんな2人のやりとりを小耳に挟みながら、あたしは井出と名乗った女性に「ついてきて」と促されていた。
さすがに逃げ出したら余計に面倒になりそうなので、もうどうにでもなれ──とばかりに、彼女のあとについて行く。
気分は警察に捕まって連行される、違法魔術使用者だ。
取り調べよろしく小さな部屋に連れて行かれ、そこで生徒証明も兼ねていると紙ベースの手帳を渡された。
制服や教科書は後ほどになるらしい。
手帳をパラパラとめくってみるが、翻訳の魔法は文字までは翻訳されないので、何が書いてあるのかサッパリだった。
文字用の翻訳魔法を使えばいいのだが、騒ぎになる可能性があるので、人前ではなるべく魔法は使わない方が無難だと拓斗に言われている。
面倒ごとは避けたいので、あとでこっそり使うことにして──なにこれっ!?
そのページには、写真が貼ってあった。
──胸から上の顔写真。
どう見てもそれは、あたしだった。