表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

スリッパは叩くモノではありません!

「学校? そういえば『高校生』って言ってたよね? 奏もそうなんだ?」

「同じクラスなんだよ。昔は家族でこの近くに住んでたし、母親が友達同士だから、コイツとは物心ついたときから一緒に遊んでたけど、小学校からはクラスまで一緒で、それからずっと。腐れ縁てヤツだな」

「ふーん、こっちの学校って、どんなこと教えているの? もしかして、科学とか教えてたりするの? ファンタジー小説にでてくるような?」

 興味津々に訊ねると、拓斗は苦笑して、

「そっか、そっちの世界じゃ、科学がオカルトなんだよな。ファンタジー小説のネタなんだ? こっちの世界での魔法みたいな感覚なんだろうな」

 そう言っておいてから、「うん」と頷き、

「そういう授業もあるよ」

「なんか、おもしろそう」

「だったら、一緒に行ってみる? アタシの制服の替え、貸してあげるよ?」

「ホントぉ!? 行く行くぅっ!」

 奏の申し出に、あたしは即答した。

「おいおい大丈夫かよ、部外者は立ち入り禁止だぞ」

「へーきへーき、生徒だってイッパイいるし、どうせバレっこないって。アニメじゃみんなやってるコトだよ」

「それはアニメだからだよっ!」

「イザとなれば魔法だってあるしね☆」

 拓斗の奏へのツッコミに口を挟んだら、

「便利だな魔法っ!」

 こっちにも自棄気味のツッコミが飛んできた。

「そーよ、便利よぉ、だからしっかり魔法を覚えましょうねぇ」

 すかさずあたしはそれを逆利用する。

「うっ」

 一瞬、動きが止まる拓斗。

「と、ところで、いつまで持っているんだ、そのスリッパ?」

「いや、なんか便利そうだから」

「何にだよっ!? それは履く物であって、決して叩く物じゃないからなっ!」

「ちぇっ」

「『ちぇ』じゃねぇよ、『ちぇ』じゃっ!」

 仕方なくあたしは、スリッパを元の位置に戻すのであった。

 それから数時間、ひたすら魔力集中をやり、奏がアニメを観る時間だから帰るとごねだしたので、そこでお開きとなった。

 結局、今日はふたりとも魔力の「ま」の字すら制御できる気配はなかった。

 あたしの世界でも、最初なんてだいたいこんなもんではあるのだけど、魔法を信じていない世界ということで、ついつい不安に感じてしまう。

 このまま同じ教え方でいいのだろうか?

 お風呂に浸かってリラックスしたあたしの脳裏に、ふとそんな疑問が浮かび上がる。

 長期休暇なので時間は充分あるけど、もし、あたしの世界の教え方がこの世界の住人には合わないのであれば、そんなのをダラダラやっていてもお互いに苦痛なだけだ。

 そんなの魔法の良さを伝えるどころか、魔法は大変だという悪い印象を与えかねない。

 やっぱ誰でも目に見えた成果が出ると、楽しく感じるモノなのだ。

 だから良い印象を与えるためには、できるだけ早く成果が出るに越したことはない。

 明日は学校体験もできるし、効率良く魔法を教えるヒントが得られるかもしれない。

 ああ、あと、あたしの魔法を打ち消したヤツも探さないといけなかった。

 はあ、やることはイッパイだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ