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コスプレっていうなぁっ!!!

「おまたせ!」

 帰ってきた奏を見て、あたしは言葉を失った。

 そこには、どピンクの物体が立っていた。

 短いフレアスカートのワンピース。

 手には実用性のなさそうな杖。

「やっぱ魔法っていったら、魔法少女だよねっ☆」

 そう言ってポーズを決める奏。

 えっとぉ……。

 どう反応していいのか迷って、拓斗を見ると、顔を引きつらせてたたずんでいた。

 その様子から察するに、これがこの世界の一般的な服装だということは決してあり得ない。

 そういえば、あたしを最初に見たときも、彼はこんな目をしていたような……。

 いやいや、気のせいだよね。うん。

「ほらほら、こうして並んでみると、なんかテュマも同じアニメのコスプレしてるみたい」

「コスプレいうなぁーーーーーーーーっ!!!」

 あたしは全力で否定した。

 拓斗を見ると、吹き出しそうになるのを必死に堪えた様子で視線を逸らした。

 なんか納得いかなーーーーーーーーいっ!

 べしっ!

「いったぁい、なんでアタシを叩くんだよっ!」

「アンタがこんな格好してくるのが悪いっ!」

「ぶーぶーぶーっ!」

 頭をおさえ唇を尖らせる奏を無視し、

「じゃあ、魔法の講習を始めるわよっ!」

 そう言い放つあたし。

 気持ちを切り替えるため、いちど大きく深呼吸し──

 いよいよ魔法の基本中の基本、魔力集中のやり方のレクチャーに入る。

 次元を問わず、世界はエーテルで満たされていて、ありとあらゆる物質はエーテルで構成されている。

 人も、空気も、大地も、光も、雷も、魂さえもエーテルの集合体であり、魔力もまたその例外ではない。

 つまり、魔力はどこにでも存在し、生命体なら、ちょっとしたコツさえわかれば、誰でも魔法を使うことは可能なはずなのだ。理論上は。

 しかし、あたしの世界では、魔法を扱える人は、ほんの一握りしかいない。

 魔術学会でもそれが永遠の謎とされている。

 一説によると、大昔の魔術師が地歩を固めるため、魔法はごく一握りの選ばれた支配層の者しか扱えないという認識を世界に広め、それが定着してしまったためといわれている。

 もしその説が正しいのなら、使えないのではなく、使えないと思い込んでいるだけ──と、いうことになる。

 魔法技術を使った製品が身近にあふれかえり、大半の人が魔法を生で見たことがある世界でさえ、そんな状況なのだ。

 これが、魔法は存在しないオカルトというこの世界の住民では、どうなるのか気になるところではある。

 妄想がぶっ飛んでいる奏だったら、意外とすんなり使えちゃったりするかもしれない。

 そう思った矢先だった。

「アタシには無理だ」

「あきらめんの早すぎだぁっ!」

 すぱんっ!

「うぎゃっ!」

 たまたま近くにあったスリッパでひっぱたいたら、なかなか軽快な音がした。

「なにすんだよっ!」

 奏が目尻に涙をためて抗議した。

「やっぱりどこの世界のスリッパも、叩くと良い音がするんだね☆」

「へぇ、テュマの世界にもスリッパってあるんだ?」

「もっちろん。あたしの住んでいるサヴァダ魔法王国は、この国──ニホン……だっけ? と、結構共通しているところも多いわよ。家の中は土足禁止だし、硬い床では基本スリッパだけど、絨毯みたいな柔らかい所では脱ぐっていうのが常識ね」

「へぇ、面白そうだな。一度行ってみたいな」

「いいわよいいわよ。機会があったらつれてってあげる☆」

「アタシを無視して話を進めるなっ!

 ──っていうか、叩くモンじゃないからね、それっ!」

「あたしの世界じゃ叩くモノよ!」

「ウソつけぇっ!」

「あんたが集中力なさすぎるのがいけないんでしょうがっ! あたしが教えた中でも、あきらめ最短記録更新よっ!」

「こんなだから学校の先生にも、よく怒られてるんだよ、コイツ」

 拓斗が苦笑した。

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