しゃーないな、二人そろってあたしの弟子だ。
「異世界からきた大……まどうし?」
あたしに確認しながら、そう答える彼。
「えっ?! 魔導師ぃっ?! 本物ぉ?! すっごぉい!」
「信じるのかよ」
答えた彼のほうが苦笑する。
「だってアタシがいっくらオススメしても全くの無関心だったタッくんが、そういう冗談とか言えるわけないもん」
無関心というか、冷めた目で見てた光景が目に浮かぶんですけど……。
「あっ! じゃあもしかして、さっきのあれも、あなたの魔法なんじゃない?!」
そう言って窓の外を指さす。
そこにはすでに魔法の光が完全に消えた電波塔が、何事もなかったかのようにそびえ立っていた。
「へぇ、良い勘してるじゃない」
関心してみせる。
「すっごぉい! すごいすごいすごい凄すぎるぅっ! 本物の魔法だぁ!」
興奮しまくりの奏。
「ねえねえ、どうやったの?! もう一度やってみせて!」
目なんかキラキラさせてる。
「本当にいいの?」
あたしが目を細め、声のトーンを落として聞き返すと、
「ダメだっ!」
彼が却下した。
「なんでぇっ!」
頬を膨らます奏。
「700億円の借金背負った犯罪人になりたいのかよっ!」
「なにそれ?」
事の成り行きを知らない奏がキョトンとなる。
「あれはもう絶対にダメだからなっ!」
さらに彼はあたしに念をおしてきた。
「わかってるわよ。あたしだって犯罪人なんかにはなりたくないし」
「ぶーぶーぶー、なんかアタシだけ抜けモノぉ」
「だぁーやかましいなぁ、もぉ! ほらぁ──」
あまりにもうるさいので、さっき彼にも見せた魔力の集中をやってみせる。
「うをおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
この程度でこんなにも喜ぶなんて、安上がりでいいわ、この世界の住人。
あたしの世界じゃ子供だましにもならないので、この反応は逆に新鮮でおもしろいかも。
「あ、そうだ、さっきの魔法を教えるって話、コイツにやってやるってのは?」
彼の提案を、
「ダメ」
あたしはきっぱり断った。
「どうして? オレに教えるもコイツに教えるも同じだろ?」
「え? なになに? タッくん魔法を教えてもらうのぉ?!」
興味津々の奏。
「いや、オレ別にそういうの興味ないからさ、どうせ教わるなら、興味あるヤツの方がいいだろう?」
「あのね、魔法に興味がない人がハマっていく課程がおもしろいのであって、最初から興味がある人に教えても、それこそ、いつもと一緒じゃないのよ」
「そんなこと言わないでさ。奏だって魔法教わりたいだろう?」
「うんうん、教えてもらいたいっ!」
「その代わりと言っちゃなんだけど、彼女がしばらくここに泊まること、家の人には黙っててくれ」
「なに? 奏の家の人に知られちゃ何かマズイことでもあるの?」
あたしの問いかけに、彼は苦笑しながら、
「いや、コイツ大家さんの娘なんだよ。しかも母親同士が親友だからさ、知られたらいろいろと面倒っていうか……」
「ふーん、なるほどね、口封じってわけか」
「封じてどうするんだよ! 口止めだよ! く・ち・ど・め」
「似たようなモンじゃない」
「ぜんっっっっぜん違うだろっ!」
「ま、いいわ。その代わり、あたしからも一つ条件」
「なに?」
「アンタも一緒にやること。っていうか、アンタがメインで、奏はそのおまけ」
「え? なんで?」
「だから、さっきから言ってるでしょ、興味ない人が興味を持つのがいいんだって」
「まあ、いいけど……」
彼が渋々了承したその時だった。
「なにそれ……」
奏がぼそりと呟いた。