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コスプレじゃないからね!

「あ、そうだ、タダで泊めてもらうのもなんだし、魔法でも教えてあげようか?」

「いいよ、そんなの」

「遠慮しなくてもいいわよ。あたしに直々に魔法を教わるなんて、お金と運をもの凄く持ってないと、できないんだから」

「なに? そんなにぼったくってんの?」

「失礼な。お金をつぎ込んででもあたしに魔法を教わりたいって人が後を絶たないのよ。なんてったって超有名人だし、数年先までスケジュールでびっしりよ」

「その割には、こんなところでノンビリしてるみたいだけど?」

「あのね、あたしだって休息くらいするわよ。苦労してスケジュール調整して、数ヶ月ぶりにやっと取れたお休みで、趣味の異世界旅行を満喫してんの」

「だったらなおのことノンビリすればいいって。オレに魔法なんか教えてたら普段と同じになっちゃうだろ?」

「それとこれとは違うんだなぁ、これが。なんていうか、魔法を全く知らない人が、その良さに気づいた時のうれしさっていうか──」

「ああ、なるほど、布教活動ってヤツか」

「布教活動? あたし別に信者を増やそうとか考えてないし」

「いや、そうじゃなくて、自分の趣味に共感する人を増やすことっていうか、似たようなことを言ってるヤツがいるっていうか──」

「ま、まさか、奏?」

 うなずく彼。

「やっぱしぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「なんか、露骨に嫌そうだなぁ」

「だってぇ、なんかその人が関わると、あたしを含めたあたしの世界の常識が、ぜーんぶ幻想として片付けられそうな勢いなんだもん」

「おお、なかなかスルドイ」

「関心すなぁっ!」

 あたしがツッコミを入れたのとほぼ同時だった。

「タッくん、あれ見たぁ?!」

 ドアを勢いよく開ける音と一緒に、息せき切らせながらもハイテンションな女の子の声が部屋中に響き渡った。

「オマエなぁ!」

 振り向きざまに、声を張り上げる彼。

「近所迷惑だろうがっ!」

 アンタも人のこと言えないけどね。

 あたしがそうツッコミを入れるより先に、

「なんかスゴイことになってるよっ!」

 言いながら、部屋の中に入ってきた彼女は、あたしを見るなり、ハッと息をのんだ。

「コスプレだぁ!」

「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!!!」

 あたしは力一杯否定した。

「うっわぁスゴイ、なんかリアリティあるぅ」

 どうやら、あたしの叫びは、彼女の耳を素通りしたらしい。

 あたしの周りをゆっくり回りながら、なめ回すように見ると、

「これオリジナルのコスだよね?! すっごいクオリティ高いけど──」

「だから違うってばっ!」

「あ、ごめんっ!」

 やっとあたしの声が聞こえたようだ。

「なんかのアニメのコスだったんだ? なんのアニメだろう? ううんっ、不覚ぅっ! このアタシとしたことが、チェックしていないアニメがあったなんてっ!」

 頭を抱えた彼女は、

「待って、言わないでね、意地でも思い出してみせるから。この雰囲気からして魔法系であることは確実。最新のアニメは──あ、でも、ゲームの可能性もあるわね。美少女系だと数が多いし、いろいろな意味で入手が困難だから──」

「だぁかぁらぁ、コスプレじゃないんだってばっ!」

「え? コスじゃないの?!」

 驚いた顔で言った彼女は、

「コスでもないのにこんな格好って、もしかしてイタい人?」

 ボソリと付け足された一言に、なぜかもの凄い破壊力で、一瞬クラッとなる。

 彼女に言われたらおしまい──みたいな、絶望感。

 薄々は気づいていたけど、それで確信した。

「これが奏でしょう?」

 彼女を指さし、彼に問いかける。

「正解」

「これってなによ、これって!」

 そうわめいた奏は、ふと我に返り、

「ところで──誰?」

 あたしというよりは、彼に問いかけた。

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