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そんなわけで居候。まさか、あたしを襲う気じゃないでしょうねっ?!

「はあぁ? なに言ってるかなぁ。金なんかよりずっと希少で、そうそう見られるようなモノじゃないから、架空だと思われてるだけじゃないのぉ?」

「いや、だって、奏がそういう話してたし──」

「うっ……」

 あたしは思わず言葉に詰まる。

「そ、その奏って人の名前を出されると、この世界では本当に架空なんだって納得できちゃうから不思議だわ」

「会ったことない人に、そこまで言われるアイツっていったい……」

「まあ、それは冗談として、さっきも言ったように金より全然価値が高いし、魔力を含んでいるから、富裕層がほぼ独占しちゃってて、一般には全然出回らない……」

 説明の途中ではたと気づいた。

「そうか、この世界、魔法がなかったんだ……」

 がくんと肩を落とすあたし。

「もしかして、金だったら換金できた?」

 嵩張るから持ってきてはないんだけど、ついつい訊きたくなっちゃうのが人情というヤツだ。

「うん、それならできたと思う」

「うわぁ、しっくたぁ……」

 頭を抱える。

「あたし、本当に無一文だぁ……」

「む、無一文て……ああ、それも翻訳か……」

 なんか、勝手に苦笑して、勝手に納得した彼は、

「いったん自分の世界に戻って、金でも銀でも持ってくればいいだろ?」

「はぁ、これだから素人はぁ……」

「悪かったなぁ!」

「あのねぇ、異空間を移動するのって、天候とか、時空壁の状況とか、いろいろタイミングがあって、そうほいほいできないの。あと結構魔力とかも消費するから、その確保も必要だし、最低でも一週間は滞在しないといけないの。その間あたしは飲まず食わずでホームレス生活……」

「ああ、わかった、わかったよ、泊まりたきゃ泊まるのは構わないけどさ」

「ホントぉっ?!」

「現金なヤツ」

 ぼそりと呟いた彼は、

「言っておくけど、安アパートだからこの一部屋しかないぞ。風呂とトイレだけはあるけど、基本生活はここだぞ」

 そう言って足下を指さし、

「寝る場所だってここしかないけど、いいのかよ?」

「べっつにぃ。このくらいのスペースに10人で雑魚寝したこともあるし、2人で狭い──とか、そんなみみっちいこと言わないから安心して」

「いや、広いとか狭いとかの問題じゃなくてさ、若い男女が同じ部屋って、なんというか……」

 頬を染めながら語尾を濁らせる彼に、ちょっとばかし悪戯心を刺激され、

「え? なに? あんたもしかして、あたしをどうこうしようとか考えてる?」

 大げさに両手で胸を隠して睨み付けてやる。

「ばっ、そ、そんなことあるわけないだろ!」

 慌てる彼に、ペロッと舌を出してみせるあたし。

「冗談よ」

「あ、あのなぁ!」

 口では怒ってみせてはいるが、まんざらでもなさそうだ。

 それから少し真面目な顔をした彼は、

「──っていうかさ、いきなり会ったどこの馬の骨ともわからないヤツを、そんな簡単に信じちゃっていいのかよ?」

「ま、あたしもあちこち異世界旅行してるからね。人を見る目は確かなの。それに──」

 そこまで言ってあたしは目を細めると、

「次元管理法でも、正当防衛でなら無許可で攻撃魔法を使ってもいいことになってるしね」

 手のひらを上に向け、魔力を集中させる。

「咄嗟だと手加減もできないから、無理矢理そういうことをしようとか考えてるなら、命を捨てる覚悟はしておくことね」

 そこに小さな風の渦ができ、魔力崩壊でバチバチっといくつものスパークが走る。

「うわっ、バカっ、こんなところで魔法なんて使うなよっ!」

「なに言ってるかなぁ。こんなの魔法なんていわないわよ。単に魔力を集中させただけ。子供でもできる遊びよ?」

 集中を解いた途端に、魔力は拡散した。

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