第一話:銀の狩人
友人の名前が少しダサいかな?
男は軽い足取りで近畿道を歩いていた。
男の名は月神斬紅朗。斬紅朗も『狩人』の一人だったが斬紅朗は他の『狩人』とは違い妖しであった。
理由は定かではないが斬紅朗は同族の妖しを狩り続けた。
そのあまり強さに妖し達からは『死神斬紅朗』や『紅の狩人』と呼ばれ恐れられた。
この日は九州の旅を終え奥州に帰る所だった。
「この前、狩った妖しの賞金のお陰でしばらく野宿しないですみそうだ」
意気揚揚と歩いていたが、
「きゃぁー!!」林の方から女の悲鳴が聞えてきた。
「何だ?」
声の方に向かって見ると、三〜四人の山賊達が十六、十七歳の娘を囲んでいた。
「何もそんなに恐がる事はないだろ?ちょっとその可愛い手で俺達の酒に酌をしてくれればいいんだよ」
首領格の男が娘の腕を掴んで引き寄せようとした時であった。
男の頭に黒い陣笠が当たった。
「だ、誰だ!?」
山賊達が少女の手を掴んだまま後ろを見ると斬紅朗が立っていた。
「何だ?てめぇは?」
娘の腕を掴んでいた手を離すと斬紅朗に向き直った。
「生憎とお前らのような虫けらに名乗る名はない」
斬紅朗腰から銀の十手を取り出した。
「そ、その、十手は・・・・・・・・か、『狩人』の証?!・・・・・に、逃げろ!!」
首領を除く全員がその場から逃げ出した。
「・・・・・ちっ。臆病者が。てめぇ何か俺一人で十分だぜ!」
男は野太刀を抜いて斬紅朗に斬り掛かって来た。
「・・・・・遅い」
十手で受け止め太刀を払い落とすと顔面を殴った。
「ぶべら!!」
男は鼻血を出して倒れた。
「どうだ?まだ痛い目を見ないと分からんか?」
斬紅朗が詰め寄ると男は立ち上がって茫然とする娘を引き寄せると小刀を娘の喉元に押し付けて叫んだ。
「む、娘の命が欲しいなら武器を捨てろ!」
斬紅朗は無言で大小の刀と十手を地面に置いて数歩下がった。
「そこを動くなよ!」
男は刀を拾おうと身を屈めた瞬間、斬紅朗は隠していた小柄を男の手に投げた。
「ぐわぁ!」
男は痛みの余り娘を掴んでいた腕の力を緩めた。
娘は一瞬の隙をついて男から放れた瞬間に斬紅朗は素早く鞘から刀を抜くと男の右腕を肘から下に掛けて斬った。
「ぎゃあぁぁぁぁあ!お、俺の腕が!?」
血が出る腕を抑えて男はのた打ち回った。
「・・・・・失せろ」
ドスの聞いた声で斬紅朗は言った。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
男は右腕を抑えながら森林の中に消えた。
短い話ですが続けて読んで下さい。